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月のひつじ

2010-12-14

金星の雨

6月の都会の梅雨みたいに、昨夜からずっと雨が降り続いてる。

丸々1日、雨が降ってるのは… チョット珍しい感じもするけど、なんだかダラダラ降ってるんで面白くない。まるで降ってる気配を隠して、でもチャンと降ってますという隠密な案配なので… よろしくない。

音のない雨なのだ。

ついこの前、金星探査機が軌道に入れなかった。

250億円が費やされた探査機らしい。

はやぶさの奇跡的生還があったんで、今回もなんだか望みを次の機会につなぐみたいな気分になってるようだけど、どうだろう…。

次の機会は6年先だというから、きながい話だ。

60年代半ばから70年代前半にかけて、当時のソビエトはしきりに金星に探査機を送り込んでた。

米国が月に人を送り込んだ頃だ。

米国ソビエトへの強い対抗意識の元で懸命に月をターゲットにしてた頃、敵さんは、月だけではなくって、金星もターゲットにしてた。

最初の金星行きロケット1961年だから、ずいぶん早い時期から金星を目指してたようだ。

この1961年ロケット(イスポリンという名)は失敗。

でも、同年にヴェネラ1号も打ち上げる。

なんと日本のそれとは違い、ヴェネラ1号は金星の軌道に乗っかった。

なんと49年も前にだよ。

でも、すぐに連絡が途絶えたから… 失敗だ。

ガックリなんだけど、ソビエト、くじけない。

早や、その翌年の1962年には、また金星に向けてロケットを打ち出した。

でも、失敗。

で、またすぐに打ち上げる。

失敗。

この1962年には3つも金星向けロケットを打ち出すんだ。

ぜんぶ、失敗。

だから、チャンと名前もついてない…。

その頃、米国のマリナー2号が金星から3万5千キロという近距離を通過してて、金星の気温やら磁力などを計測してデータを地球に届けてる。

「フン!」

と、ソビエトは鼻息を荒らし、その3年後の1964年に、今度はゾンド1号というのを金星に向けて打ち出した。

「ゾンド1号・金星をめざす!」

と、大きな声で発表したけど… その後、ソビエトは黙った。

また失敗したらしい。

普通なら、そのあたりで止めちゃうのが定理というもんだろうけど、ソビエト、やめない。

1966年に、ヴェネラ2号、ゾンド3号を打ち出し、これは金星のそば2万4千キロまで接近した。ゾンド3号はデータの送信に失敗したけどヴェネラ2号は諸々のデータを送ってきた。

「フフン!」

と、ソビエトはまた鼻息を荒らした。

その鼻息の勢いのまま、66年の7月にヴェネラ3号を打ち上げ。

これが金星に軟着陸だ。

やった!

3号は金星の地表から11秒間、電波を出したのち息絶えた。

ここまでで既に7機、7回も金星に向かってるワケだ。

一回につき250億円では済むまい…。

日本の探査機は予算を削りに削っての250億なんだ。

当時のソビエトは… ちびた鉛筆を懸命に使うような国でない。国民は実際にはちびた鉛筆で文字を書いてたろうけど、国家としてのソビエトは国民から搾ったオツユでまだ濡れていて、ちびてない…。

1967年の半ばにはまた金星に向かう。

ヴェネラ4号。

出向いた事を証明するためにという意義も含めて、イギリスのジョドレンバンク天文台に飛行の追跡を依頼したりもした。

以後、5号、6号、7号と、ソビエトは続々に金星に向けてチャレンジだ。

いずれも金星の大気圏内にパラシュート降下しつつ、データを送ってきた。

1970年の7月に、7号は軟着陸後に35分間、金星の地表のデータを届けてきた。

気温が400度を超え、気圧は90気圧。

そんな環境で35分間踏ん張ったのだから、えらいじゃないか。

世界はその時点でもっとソビエトを褒めてあげりゃ良かったのに… 前年の7月のアポロの月着陸に興味は絞られてたから残念だ。

で。

まだ続く。

1972年にヴェネラ8号。

この72年には、不毛な宇宙競争はもうヤメにしようよと、ニクソン大統領とコスイギン首相が『宇宙開発協定』に署名して、宇宙向け事業は新たな展開となりつつあったのだけど、ソビエト金星フィーバーは続く。

75年にはヴェネラ9号と10号を月に派遣させ、

「まだまだ、やるよ〜ん!」

衰えぬ鼻息で、

1978年9月には一気に2機、打ち上げる。

ヴェネラ11号と12号。

これで終わる?

終わらない。

1981年になると、13号と14号を打ち上げた。

さすがにこの頃になると、意外と知られちゃいないけどNASAも協力してるんだから、面白い。

NASAは13号と14号の軟着陸地点を絞り込んでアドバイスしてるんだ。

その13号がカラー写真を届けたくれたワケだ。

硫酸の凶猛な雨に濡れている気配もなく、信じがたい色彩でもない、

「え? これが金星の地面なの?」

てな感じを受ける写真だ。

おびただしい回数(すごいよ)でチャレンジしてくれたおかげさんで、どうやらかつて云われたがごとくな、硫酸の雨がジャジャ降りな場所ではないようなのだ、金星は。

硫黄の熱くて厚い雲に覆われ、そこから確かに濃い硫酸が雨となって地表に向けて落ちてはいるようなのだけども、温度が400度を超える地表に届くまでにその雨水は蒸発しているようなのだ。だから、地表は乾いた喉の奥を見るようにカラカラしてるように見える。

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このカラー写真を届けるまでに、いったいソビエトは何千億円を費やしたのかしら?

と、ボクは、これを否定として云ってるんじゃない。昨今の経済原理とは違う原理の元で撮られた貴重な写真だ。

金銭としての対価が最優先される時代は、正直なところ、今降ってる雨のように、一向に面白くない。

だからね… 6年先の復活もいいけど、一回の失敗にこりず、あきず、宇宙に向けての予算を膨らませて欲しいな、日本。

経済という"活動"は、新しい体系が必要な時期に来てるような気がするんだ。

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