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月のひつじ

2010-12-24

より遠くへ

ボイジャー1号が太陽風の影響がないという遠い所まで到達したというニュースを先日に聞いて、

「ほほ〜っ」

と、小さく、感嘆したのだった。

あと4年ほどすれば、ボイジャー1号は完全に太陽系から出ることになる。

太陽系外…。

言葉としては簡単ではあるけれど、実感としてのその距離は人間の日常としての営みからは想像のてがかりがない。それくらい遠い。

ボイジャー1号が地球から打ち出されたのは1977年だった。

カーターさんが大統領になり、スペースシャトルがはじめて飛び、ニューヨークでは大停電が発生し、コニカが世界初のオートフォーカスのカメラを発表し、王さんのホームラン国民栄誉賞なるものが登場し、映画「STAR WARS」が登場し、キャンディーズの3人組が解散した年だ。

3月だったか4月だったか、岡山武道館でそのキャンディーズのさよならコンサートがあって、ボクはその会場近くを歩きつつ、

「けっ」

と、つぶやき、

「どこがいいのよキャンディーズ

と、カラカラ笑って辺りを見廻したら、グランドで子供達が天体望遠鏡を眺めてた。

1977年のボクは若いから、

「これこれ子供たち。ちょいと兄ちゃんにも覗かせろや」

横柄に子らの前で振る舞って、一台の白い筒に取り付いた。

けれども、右目を押しあてた途端、清廉な宝石が飛び込んできて、たじろいた。

土星だった。

輪の輪郭も鮮やかに、輝ける清廉として眼に飛び込んだ。

オレンジがかった黄色には品があって、静かで、そのくせ堂々としてた。

眼を望遠鏡から離し、夜空を見上げると、こ〜もり傘にあいた小さな穴みたいな一点があって、ふいに真摯さに打たれてボクは、

「あれがそうなの?」

子らに問うた。

少年達はかすかに微笑みつつ、うんと頷いた。

去年(2009)の今頃、ボクは明石天文科学館に新設展示する模型としてのボイジャー1号のために資料を眺めたりヒックリ返したりしてた。

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ボイジャー1号が土星を観測したのは、1977年の打ち上げから3年が経ってからだ。

王さんが現役を引退し、長島さんは監督を辞任する。

米国大統領レーガンさんが選ばれる。

劇場版「スタートレック」がこの年には日本でも公開される。

恒星間飛行を続けるボイジャー1号が知的生命体と化してカーク船長たちと遭遇するという話。

この映画のインパクトが余韻としてボクの中にあったものだから、明石天文科学館の模型の仕事中は、ずっと、ボイジャーを「ヴィージャー」とこっそり呼んでた。

その本物が今やホントに恒星間飛行に入ろうとしているんだから… すごいじゃないか。

33年飛び続けてる機体がどのような状態になってるかは知らないけれども、すごいじゃないか。

「すごいなぁ」

としか、このさい云いようがないくらいに。

もはや、ボイジャー1号には確たる目的は何一つもっていないのだけども、ただ遠くへ飛んでくというこの一点でもって何物よりも、すごいのだ。

人間が作ったものがこれほどの遠方に存在しているという事が、とにかくすごい。

機体の外壁には、故セーガン博士提唱の、諸々のメッセージが入ったレコード板がくっついてる。

最近の天文学者は、このプランに、

「無防備に我々の事を告知するのは、あんまりヨロシクないのでは… 」

と、クエスチョンを頭の上に浮かせているようだけども、ともあれボイジャー1号はまだまだ遠くへ、向かう。

4年後。太陽系の果ての果てに到達したら、人類としての、人類からの栄誉賞をあたえたいね。

そういう発想がそもそも陳腐とは判ってはいるのだけど、さ。

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