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月のひつじ

2012-02-17

小鰭はないけども…

またぞろ、ネモ船長のノーチラス号を思い浮かべる。

かの船内の食事は当然に海の幸の豊穣だ。

ヴェルヌが「海底二万里」を書いた頃には寿司はフランスになかったけども、今、ヴェルヌがいたら… きっと、船内の食のシーンではにぎり寿司も描いたろう… 採れたて獲れたてな海の幸の”上”にぎりが船内食堂には登場しただろ〜、と勝手に想像する。

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この勝手な想像が楽しいのだ。

一方で彼は陸上との接触を断っていて、海の幸しか口にはしないといった意味の発言もしているから、

「寿司米はどうするかしら?」

とのクエスチョンもわいてくるのだけど、そこはそれ、完全に交流を断っているワケではない事は本文中にも明らかで、あちゃらやこちゃらの貧しく虐げられた者達に向けてネモは支援活動を行ってもいるから、お米はその時にきっと購入していたに違いない… と、解釈しちゃう。

お米なくして寿司は成立しないんだから、どっかで栽培するか買うかするしかないワケだ。

彼が買うのは雄町米(おまちまい)であって欲しい。

「海底二万里」が出版されたのは1870年。

明治の3年だ。

実はこの明治の3年までは、全国にあるのは藩であって、県じゃなかった。

江戸は明治元年に東京の名がつけられたけども当初は混乱があって、「とうけい」とも「とうきやう」とも呼ばれていたようだ。

この頃の江戸前寿司の8割は岡山の雄町米だったと、昭和35年に書かれた宮尾しげお著「すし物語」という本には書かれてる。

もっとも、ある本によれば、江戸前は庄内米だったと記されていたりもして、この辺り、信憑性が頼りない。

けれどま〜、推測するに、当時、1つのブランドとして雄町米は江戸に運ばれていたのであろうな… とは云えるんじゃないかしら。

それで、地元を応援するというワケではないけれども、馴染みあるお米ゆえ、ヴェルヌさんに、

「どうぞ、お使いください」

と、推薦してるワケだ。

ボクは三代目桂三木助のCD「白浜」を持っていて、昭和の30年代だか40年代頃の粋で肌に優しげな東京弁が聴けて惚れ惚れするのだけども、巻頭で寿司の話がチラッとでてくる。

隅田川で白魚が獲れた頃、人形町界隈の冬場にはコハダ(小鰭)の寿司を売りに来ていたもんだというようなコトを申されていて、このくだりをiTunesで聴くたびに、ボクはにぎりを食べたいモードのスイッチを入れられる。

月に1〜2回利用している近所の回転寿司にはピカリと光るコハダはないけれども、出向いちゃえば、それはもうどうでもよくって、脂ののったトロ三昧でお気軽に満足しちゃうのだった。

今日のお昼ごはん。

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10年前のボクは34皿くらいは乗せあげて、シメにソフトクリームもペロリというようなアンバイを愉しんでたけど、いけませんな〜、今は10数皿でフィニッシュだ。

淡泊やら淡麗なものではなくって、ひたすらに脂っぽいのをボクは好むから、だから数がこなせなくなっているワケだとも判っているけど、好きなものは仕方ない。

サーモンをにぎるというのはお江戸の時代にはなくって、実はこれ、回転寿司が全国で繁盛してからのものらしい。

関西でも関東でも、老舗の風格をもった寿司屋はどこも、

「そんなもの、にぎれないよ」

だったそうな。

マグロのトロもそうで、マグロは赤身部分のみ。トロな部位はネコも食べないと思われていたそうだから面白いや。

むろん、今は違う。

1962年に開発されたけどパッとしなかった回転寿司という仕掛けは、1970年の大阪万国博覧会に出店されて全国に知られるようになる。庶民的で価格の安さと明朗な会計で、時価が当たり前で敷居がどんどん高くなっていた巷の寿司屋とはまったく形態が違っていて鮮烈だったワケだ。

時期同じくしてノルウエーが自国のサーモンを売り込んできて、これが回転寿司のチェーン店メニューに載ったのが大きい。

溶けるサーモンの味覚。

当然にそれはマグロのトロも同じだから、その頃までは捨てられたものだったけど、途端に火がついた。

この人気に押されて老舗の寿司屋さんものっかって、今に至ってるワケだ。

あの溶けてく感触がお江戸時代から昭和40年代の半ばまでは美味と認知されなかったというのも不思議だけど、ともあれボクは、トロとろトロ… マグロのそれにサーモンのそれ、焙ったのやオニオンをのっけたのやらを何皿も重ねてしまうワケだ。

その合間に、アジ、はまち、しめ鯖…。で、また今度はビントロ…。

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カロリー取りすぎゆえ、ボクの今の身体にはふさわしくはないのだけど、寿司屋に座った以上はこうなっちゃうのだ。

なワケで、ネモのノーチラス号では、どのようなにぎりが登場するか… それを想像すると実に楽しいのだった。

むろん船内ゆえ、眼の前でベルトが廻ることはないでしょな。

ネモ本人がにぎる筈もなく、専任がいると思わなくちゃいけない。

無口な元日本人がこの場合、イチバンいい。堅物なれどもネモ同様に芯ある人で、出来たらその短髪には白いものが混ざってるのがいいな。

その彼がにぎるのは… なんとなく、ヘルシーなものが、エビやら貝やらを中心に出てくるようで、場合により、ネギ巻きなんぞも出されそうで、ちょっと不安でもあるんだけど、かの展望窓から海中の景観を眺めつつの寿司三昧は… なんか、途方もなくイイ感じなのだった。

なので、ボクは恐る恐るに、傍らのネモ船長に問うワケだ。

「あのぅ… 日本酒ありませんか?」