2014年の年末

部屋の1部の改装工事終了。
整理ついでに僅かながら本も処分した。
やや埃っぽい空気を吸いすぎたか、風邪をひいた。インフルエンザじゃなかろうな… ハナがとまらない。喉も違和あり。
体調不良と知りつつ、片付けしたのがイケなかったか、熱で眼元がボ〜ッとしてる。今日は午後から半日寝てみたが症状は同じ。


ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』。
ネモ船長は人との接触を断つべくノウチラス号を造って少数の仲間と海洋に出た。
船内には図書室があって、ヴェルヌは具体的にその一室を描写してる。
ほぼ天井までの紫檀(したん)材で組まれた書棚が部屋全体をぐるりと囲い、その下方にはゆったりした栗色の皮張りのソファが設えられ、移動式の小テーブルが幾つかある…。
シガールームを兼ねていて、例の海藻製の葉巻をここで愉しむことも出来る。
渦巻型の装飾が施された天井にライトが4つ。
冊数は12000冊。
ヴェルヌはネモの口を介して、
「この本たちが私を地上と結びつける唯一の絆です。出航の直前には私は新聞も買い入れました。その時の新刊も買いました。けれどノウチラス号が出航と同時、その時いらい、私は人類はもう本を産むこともモノを書くこともしなくなったと思い込みたいのです」
と告げて、ネモにとっての地上界との決別を記しているけれど、はたして… そこはどうなのだろうか。
"思い込みたい"と記されているトコロに絶妙なふくみと揺らぎがあるよう、ボクには思えるし、またヴェルヌもその旨を記したよう… 思う。
裁ち切りがたい未練が『海底二万里』の大きなテーマと思えば、ノウチラス号内のライブラリーはまさにそれを端的に示す部屋として位置づけられる。
静穏な海底。居心地良いソファ。本の匂い。
実によい環境での読書ということになるけれど、ネモがそうして本に接すれば接するだけ、地上界への思いはいっそう濃くなっていたには違いないのだ。逃れようとすればするだけ海中のネモに地表の光輪が降りかかる。
写真はペーパーモデルによる内部構造再現。


ま〜、こちら、我が室内は、海底を遊覧する機能なしの、ただの土間。だから天井は高いけど、地面にコンクリを張っただけだから、冬場は足元がやや寒くなるという部屋で…、ネモの苦渋とは皆目違うし、12000冊もあるワケでもないので、彼が抱えたパラドックス含みな困難難儀に較べりゃ、
「楽勝じゃ〜ん」
なアンバイもないことはない。
上記の通り、僅かながら本も捨てた。
いささか逡巡しつつも、まずゼッタイに2度と眼を通さないであろう"実用書"の類いを見繕って束ね、ヒモで縛って退治した。

かつて室町の時代、当時描かれた絵巻としての"百鬼夜行"は、ナベやヤカンやクシやホウキやタンスやら、使い古されて捨てられた道具達が人間に復讐せんと一同に集結してゾロゾロ行列するという有り様を克明に描写しているけど、そこに今回、捨てられることとなった本達も、きっと、加わることになろう。
すまんね…。化けて出ないでね。と、そう祈る。
同じ化けるなら、なんか違う本になって出ておいで〜ね。
そうすりゃ、また本棚を住み処に出来るんじゃなかろうか。