「戦争の100年」から「平和の100年」へ (1)

2014年2月5日(水)更新:3
【生命(いのち)の光 母の歌 第5章 「戦争の100年」から「平和の100年」へ (1)】

《サイフェルト博士 今日のEU(欧州連合)の存在は小さな奇跡。いかなる困難に遭遇してもしっかり支えるべき》
《池田SGI会長 「残虐性の根絶」こそ人類の悲願。世代から世代へ継承すべき最重要のメッセージ》
●池田SGI会長 クーデンホーフ=カレルギー伯爵が「平和はすなわち調和です」と強調されていたことが思い出されます。伯爵は、一つ一つの国や民族同士の不調和、不平等がやがて大破局へとつながった第1次大戦、その戦後処理をめぐる対立が火種となった第2次大戦の教訓を鋭く見つめていました。“政治的現実に盲目な平和主義運動は戦争の危険を増す”と、あくまで現実的な平和構築を追求されたのです。
 欧州の連帯を実現した、第2次大戦後のパン・ヨーロッパ運動にあって、伯爵は当時、軍事・経済的勢力を強めていたソ連アメリカに対し、ヨーロッパが連邦という一大勢力となり、両者を結ぶかけ橋となってこそ、新たな世界大戦を防ぐことができるとの大局観、平和への強い信念に立脚していました。なお、運動に「全て」を意味する「パン(汎)」と冠したのは、中央集権的な連邦ではなく、主権国家同士の共同体を築いていくという意味からでした。「調和による平和」の追求であったといえましょう。
 サイフェルト 何はさておき、全ては平和に尽きます。是が非でも平和を守っていく――これが一番大切です。
 いろいろな政治的状況の中で、私自身、賛同できないことも多々あります。その最たるものが、諸外国で再び右傾化が見られることです。ファナティシズム(狂信)という辺境にあるもの全て、それが右派だろうが左派だろうが、到底、容認できるものではありません。
 だからこそ今日、EUが存続することは本当にありがたいと思いますし、それは私にとって、いまだに“小さな奇跡”としか言いようがありません。
 ここで私は、オーストリアで最も懸命な人物の一人である、エアハルト・ブゼグ元副首相の言葉を紹介したいと思います。“さあ、今こそEUだ! 条件や異論を唱えず、EUを応援しよう!”と。
 たとえ経済的にいかなる困難に遭遇しようとも、私たちはEUをしっかり支えていかなければなりません。もちろん、そこには、構造上の改善や整備をしなければならない問題が山積していることは明白です。なぜなら、まだ端緒(たんしょ)が開かれたばかりなのですから。
 池田 その通りです。大切なのは、EUのような貴重な連帯が築かれてきた原点を忘れないことでありましょう。
 クーデンホーフ=カレルギー伯爵は語っておられました。「戦争というものは、すべて残虐そのものです。この人間の残虐性を根絶するためには、まずなによりも、戦争を防止しなければなりません」と。
 まさにこの「戦争とは残虐そのものである」という痛切な思いこそが、断じて忘れられてはならない原点です。そして、世代から世代へ語り継がれるべき最重要のメッセージでありましょう。(つづく)

   (聖教新聞 2014-02-05)