Einzelgängerとの対話―研究の歩みをめぐって

今回このようなかたちでコメントする機会をいただいたことを、日本基督教学会北海道支部の理事幹事の皆様、また、連絡役のみならず諸々の事務仕事、さらには司会まで務められている小柳さま、とりわけ講演者の安酸さまには、心より感謝を申し上げます。さき…

いけにえの羊 

ふと頭を上げると一頭の羊がいた。羊のわりにはからだが大きい。ゆっくりと全体を見回してみると、人間のような顔がその羊にはついていた。羊も気づいたようで、こちらを警戒しながらみている。おたがいに何も言わずに観察をしている。羊の顔はとてもうつく…

挑戦--2017--

重なり合う音が海上から静かに浮かび上がってくる。その音に身を任せながら、精神が物体を伴い動き出すのを感じる。水面上の光は、水の色を幾重にも変え、移ろいながらも、留まり続けるいのちの本質を浮かび上がらせてくれる。その一筋の光が重厚な石の部屋…

日本宗教学会:パネル「20世紀ユダヤ哲学再考:政治と宗教のはざまで

日本宗教学会に参加した。多くの興味深い発表があったが、とりわけ勉強になったのは二日目の午後に行われたユダヤ哲学についてのパネルであった。北九州大の伊原木さんがオーガナイズしたこのパネルは、「20世紀ユダヤ哲学再考:政治と宗教のはざまで」と名…

吉田隆『カルヴァンの終末論』

吉田隆『カルヴァンの終末論』教文館、2017年。 あの大震災を体験したのは、本書の元となる博士論文を指導教官へ送った午後だったという。仙台の牧師であった著者は、震災と被曝による死の恐怖を内側に抱えつつ、ひとつの終末を体験する。しかしそのような苦…

政治神学と新刊

今後刊行されるものもふくめて、政治神学関連でいくつか重要なものがでている。 アバディーン大学のMichael Richard Laffinによる『ルターの政治神学の約束』(T&Tクラーク、2016)。ルターの政治神学、ひいては宗教改革思想の現代的な可能性を模索したもの…

エラスムス大学

年度末の在外研究でロッテルダムに滞在した。ほんの2週間強だが、非常に充実した時間であった。2018年度から一年間、在外研究する予定があり、その渡航先がロッテルダム大学哲学部なのである。今回の滞在はその準備という目的もあった。受け入れてくださるハ…

ルターの『95ヶ条の提題』は実際に打ち付けられたのか!?

来年は宗教改革500周年である。これはルターが1517年10月31日に、『95ヶ条の提題』をヴィッテンベルク城教会の扉に貼り付けたのを記念している。というのも、この『提題』をきっかけに宗教改革はヨーロッパ中に広まっていったからである。そのため、宗教改…

岩井淳『ピューリタン革命の世界史』

岩井淳『ピューリタン革命の世界史』ミネルヴァ書房、2015年 本書は、17世紀中盤にイングランドで展開した革命運動を、国際関係と宗教思想との関係のなかで分析したものである。ピューリタン革命ともよばれるこの運動は、ながく近代社会の嚆矢とみなされてき…

告知:国際シンポジウム@富山大学

最近、休眠ブログと揶揄されがちな本ブログですが、すこし起こしてみましょう。 告知です。 来る2月13日、14日に富山大学にて、国際シンポジウムを開催いたします。カナダ・マックマスター大学のリチャード・アーサー教授とオランダ・ナイメーヘン大学…

初期アメリカ学会、ピューリタン学会でのスピノザとスピノザ主義に関する報告

本日は初期アメリカ学会の増井先生とピューリタン学会の森本先生のお招きで、上智のアメリカ・カナダ研究所で行われる研究会で報告いたしました。タイトルは、「十七世紀後半のオランダにおける神学・政治論--改革派の内部抗争とスピノザ主義--」となってお…

ケネス・アッポルド教授来日

6月5日から21日まで立教大学招聘研究員として指導教官(Doktorvater)のケネス・アッポルド教授が来日した。2013年の5月に学位授与のためにプリンストンを訪れて以来の再会となるので、実に丸2年ぶりであった。今回の滞在は、立教大学文学部長の西原廉太先生…

オランダ黄金時代における「自然の書物」とキリスト教神学の枠組み

Eirc Jorink, Reading the Book of Nature in the Dutch Golden Age, 1575-1715. Brill’s Studies in Intellectual History. Vol. 191. Trans. by Peter Mason. Leiden: Brill, 2010. Reading the Book of Nature in the Dutch Golden Age, 1575-1715 (Brill…

十六世紀後半のルター派医学者による宗派化とルネサンス・プラトン主義

Robin B. Barns, “The Prisca Theologia and Lutheran Confessional Identity c. 1600: Johannes Jessen and his Zoroaster” in Spatrenaissance-Philosophie in Deutschland 1570-1650: Entwürfe zwischen Humanismus und Konfessionalisierung, okkulten T…

マイモニデスとスピノザの神

Carlos Fraenkel, “Maimonides’ God and Spinoza’s Deus sive Natura,” Journal of the History of Philosophy, 44.2 (2006): 169-215. フランケルによると、マイモニデスとスピノザの神の概念には、ウォルフソンが記すほどの差異はないという。ウォルフソン…

スピノザとスコラ学

Massimilano Savini, “L’Horizon Problematique du Concept d’ens reale dans les Pensees metaphysique de Spinoza” in Spinoza et ses scolastiques: Retour aux sources et nouveaux enjeux, Frederic Manzini, ed. (Paris: PUPS, 2011), 99-113. サヴィ…

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。 昨年は三月に出版された『知のミクロコスモス』(ヒライ・小澤編、中央公論新社)を始めとして、いくつかの出版や発表、講演を行う機会に恵まれました。なかでも十一月に上智大学の中世思想研究所主催のシンポジウム「…

転換:1930年代のレオ・シュトラウス

Reorientation: Leo Strauss in the 1930s (Recovering Political Philosophy) (English Edition)出版社/メーカー: Palgrave Macmillan発売日: 2014/07/09メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る1921年にエルンスト・カッシーラーの下で博士論…

ロジャー・アリュー『デカルトと初期デカルト主義者』

Roger Ariew, Descartes and the First Cartesians (Oxford: Oxford University Press, 2014). 272 pages | 234x156mm 978-0-19-956351-7 | Hardback | November 2014 (estimated) デカルトとスコラ主義の研究で有名な南フロリダ大学のロジャー・アリュー先…

書簡からみるネーデルラント・デカルト主義者たちの関係

Andrea Strazzoni, "On Three Unpublished Letters of Johannes de Raey to Johannes Clauberg" Noctua I.1 (2014): 66-103. ルネ・デカルトは、ヨハンネス・デ・レイ(1620-1702)を自身の優れた理解者として認めていた。フェルビークのユトレヒトとライデ…

ネーデルラント・デカルト主義におけるプラトン哲学の影響

Han van Ruler, “Substituting Aristotle: Platonic Themes in Dutch Cartesianism” in Platonism at the Origins of Modernity: Studies on Platonism and Early Modern Philosophy, eds. Douglas Hedley and Sarah Hutton (Dordtrecht: Springer, 2008), 1…

ヨハンネス・クラウベルクと心身問題

Jean-Christophe Bardout, “Johannes Clauberg,” in A Companion to the Early Modern Philosophy (Blackwell, 2002, 2008), 129-138. Translated by Steven Nadler. 2014年7月発売の『科学史研究』にスティーブン・ナドラーの『スピノザ--ある哲学者の人生…

インテレクチュアル・ヒストリーという方法論

5月24, 25日に、酪農学園で行われた科学史学会年会のシンポジウム「科学史とインテレクチュアル・ヒストリーの挑戦」(代表柴田)で、インテレクチュアル・ヒストリーという方法論についてコメンテーターというかたちで発表させていただいた。その発表をもと…

ジョナサン・イスラエルによるアン・トムソン批判

Jonathan Israel, Review of Ann Thomson, Bodies of Thought. Science, Religion and the Soul in the Early Enlightenment (Oxford: Oxford University Press, 2008), 320 pp. in Intellectual History Review 19(1) 2009: 141-142.Bodies of Thought: Sci…

『知のミクロコスモス』プレビュー: 小澤実「ゴート・ルネサンスとルーン学の成立--デンマークの事例」

小澤実「ゴート・ルネサンスとルーン学の成立--デンマークの事例」ヒロ・ヒライ、小澤実編『知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』中央公論新社、2014年、69-97頁。 声高々に「源流に戻れ ad fontes」と唱えたルネサンス…

『知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』発売!

3月10日に中央公論新社から『知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』という本を出しました!内容は以下の通りです。本日確認しましたが大手の書店には既に並んでおります!皆さん、どうぞ一度手に取ってみてください! …

フランシスコ・スアレスは中世の思想家か近代の思想家か?

Victor Sales, “Francisco Suárez: End of the Scholastic ἐπιστήμη?” in Francisco Suárez and His Legacy: The Impact of Suárezian Metaphysics and Epistemology on Modern Philosophy, ed. by Marco Sgarbi, ed. (Milano: Vita e Pensiero, 2010), 9-28.…

深井智朗監修『ティリッヒとフランクフルト学派—亡命・神学・政治』

深井智朗監修『ティリッヒとフランクフルト学派—亡命・神学・政治』法政大学出版局、2014年2月、p.293+v+(33)、ISBN 978-4588010057、定価3,500円+税。 思想を理解するには、思想家の文章(テクスト)を読むだけでは十分ではなく、文脈(コンテクスト)を理…

宗教と啓蒙思想

Simon Grote "Review-Essay: Religion and Enlightenment," Journal of the History of Ideas 75 (2014): 137–60. https://muse.jhu.edu/login?auth=0&type=summary&url=/journals/journal_of_the_history_of_ideas/v075/75.1.grote.html 宗教と啓蒙思想。一…

スティーヴン・ガウクロガー『科学的文化の台頭--科学と近代の形成、1210-1685年』(2006年)

The Emergence of a Scientific Culture: Science and the Shaping of Modernity 1210-1685作者: Stephen Gaukroger出版社/メーカー: Oxford University Press, U.S.A.発売日: 2009/01/15メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブ…