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2017-01-17

傾聴における「伝え返し」の技法

2016-03-20 「傾聴サポーター」になりました のコメント欄に質問をいただいたので、お答えします。

初めまして。
傾聴に関する情報をインターネットで調べ、傾聴サポーターのホームページに辿り着きました。
岩松先生のメルマガを拝見し、自分なりにまとめていっているのですが、その中で、伝え返し、という技法に気づきました。
友人が心理カウンセラーなのですが、彼女が傾聴を学んだときにはテキストにも載っておらず、聞いたこともなかったと言っていました。
この技法は、ある程度、上級レベルに達してから求められるものなのでしょうか?
突然、このようなことをお聞きして申し訳ございませんが、ご教示いただけますと幸いでございます。
ご迷惑でなければ、宜しくお願い申し上げます。

(質問者:ユキナさん)


質問にでてくる「岩松先生」とは、私が傾聴を習っている岩松正史さん(JKDA 日本傾聴能力開発協会代表)のことです。

岩松さんのところでは、傾聴の技法として「うなずき、あいづち、くり返し」、また「伝え返し」(要約)などを習います。この場合の「くり返し」は「相手が使った言葉(とくに気持ちのキーワード)をそのままくり返すこと」、また「伝え返し」は「話の要点や感情表現をとらえて返すこと」です。

単語やフレーズをそのまま返すのが「くり返し」、話のまとまりについて「つまり……なんですね」というように要約して確認するのが「伝え返し」だということですね。

技法のレベルとしては(1)うなずき、あいづち→(2)くり返し→(3)伝え返し(要約)だと考えていいと思います。



さて、この「くり返し/伝え返し」は、傾聴にとってどの程度大切なのでしょうか。

私の理解でいえば、これらは傾聴にとって重要なスキルであり、とくに「くり返し」は「うなずき、あいづち」と並んで基本的な技法だと考えていいでしょう。

話を整理するために、まず「傾聴ではない聞き方」を確認します。次のような聞き方は傾聴とは別物です。

  • 相手の話に「いい/わるい」の判断をくだす
  • 相手にアドバイスや説得を試みる

これらの聞き方が必ずしもダメだというわけではありませんが、少なくとも、今お話ししている「傾聴」では、このような聞き方は行いません。

では、傾聴ではどんな聴き方をするかというと、次のような態度が大切だとされます。

  • 聴いているときの状態が、仮面や役割や見せかけではなく自然な状態の自分である(一致)
  • 相手を無条件に温かく受け入れる(受容)
  • あたかもその人自身の気持ちを体験しているかのように、相手の身になって聴く(共感的理解)

このように「自分に正直に」「相手を受け入れ」「相手の身になって」聴き、さらにそのことが相手に伝わることで、相手も「自分の気持ちを理解してもらっている」と感じられるようになります。

その意味で、話を聴いてもらう人(クライアント)が「自分の気持ちを分かってもらった」と感じてくれることが、傾聴の大切なポイントだと私は考えています。

相手の話にうなずいたり、あいづちを打ったりすることは、そういった「相手の気持ちを理解し、その理解を相手と共有する」ための手段になります。「くり返し」「伝え返し」も目的は同じです。

たとえば、相手が「仕事であんなことやこんなことがあって、もう泣きたいほど悔しい」というような話をしているとします。そのときに「泣きたいほど悔しい…」という言葉をくり返したり、「つまりあなたは泣きたいほど悔しいんですね」というようなかたちで相手の気持ちを確認することで、相手は「話を聴いてもらっている」「自分の気持ちを分かってもらっている」と感じることができます。



参考までに、手元にある本を紹介します。

『一目でわかる傾聴ボランティア』(鈴木絹英 編、工藤ケン 文・画/NHK出版)では、傾聴のスキルとして「相づちを打ち、うなずく」と並んで「相手の言葉を繰り返す」が載っています。

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さらに詳しく知りたい場合は『はじめてのカウンセリング入門(下) ほんものの傾聴を学ぶ』(諸富祥彦著/誠信書房)をオススメします。著者は明治大学の諸富先生で、「傾聴の5ステップ式トレーニング」の第1ステップに「うなずき、あいづち」「くりかえし」、第2ステップに「共感的な伝え返し」が登場します。

 傾聴を中心としたカウンセリングで、もっとも多く使われる技法が、共感的な「伝え返し(リフレクション:reflection)でしょう。かつては「反射」とか「感情の反射」などと訳されていましたが、最近は私も《伝え返し》という訳語を使うようになりました。
(中略)
 四十代のころのロジャーズのカウンセリングにおける応答の八割が、この《伝え返し》であったといわれています。

はじめてのカウンセリング入門(下)―ほんものの傾聴を学ぶ
(p136〜137)



ここに登場するロジャーズとは、傾聴(来談者中心療法)の元祖であるアメリカの心理学者カール・ロジャーズ(1902〜1987)のことです。上記引用部分の続きには、ロジャーズ自身がこの「伝え返し」についてどう考えていたかが解説されています。諸富先生の説明を引用します。

 このようにロジャーズは、死の前年、一般に「伝え返し」と呼ばれている技法の内実は、クライアントの体験世界の「鏡」になることであり、相手の内的世界についての自分の理解や受け取りを確かめていくことである、という見解を表明しています。
 《伝え返し》は、単なるオウム返しではありません。
 クライアントの方が表明されている気持ちのエッセンスを感じとって、「あなたがおっしゃっているのは……ということでしょうか」と、こちらの「理解」や「受けとめ」を、クライアント自身の内側で響かせて「確かめてもらう」という姿勢でおこなっていく応答のことです。

(同書 p138)


以上のように、「くり返し」「伝え返し」は、傾聴にとって大切な、基本ともいっていい技法だと私は理解しています。

【参考文献】

  • 『ロジャーズが語る 自己実現の道』(C.R. ロジャーズ著、諸富祥彦・末武康弘・保坂亨 共訳/岩崎学術出版社)
  • 『はじめてのカウンセリング入門(下) ほんものの傾聴を学ぶ』(諸富祥彦著/誠信書房)
  • 『一目でわかる傾聴ボランティア』(鈴木絹英 編、工藤ケン 文・画/NHK出版)

2016-12-24 クリスマスと黄金律 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

今夜はクリスマスイブですね。

クリスマスといえば、よく「イエス・キリストの誕生日」ともいわれますが、聖書にはイエスの誕生日がいつであるかについての記述はありません。

クリスマスはイエスの誕生日そのものではなく、イエスの降誕を祝う日(キリストのミサ→クリスマス)として、4世紀ごろ定められました。古代の冬至を祝う祭りに関係しているといわれます。

世界最大のベストセラーである新約聖書には、人々の心に残る印象的なフレーズが多く含まれています。

その中でも有名な言葉が、「人にしてほしいと思うことはすべて、人にもしてあげなさい」という、いわゆる「黄金律」です。

これはまさにコミュニケーションの基本だと、私も思います。

家族でも友人でも同僚でも、自分の話を相手に聞いてもらいたいと思うなら、まずあなた自身が相手の話に耳を傾けること。あなたが「話を聞いて理解してくれる人」になったとき初めて、相手の中にもあなたの話を聞く心の余裕が生まれます。

自分と相手は鏡のような関係。「人に話を聞いてもらいたいと思ったら、まず自分が人の話に耳を傾ける」・・・クリスマスイブにぜひそんな「黄金律」を実行してみてはいかがでしょうか。

2016-12-23

築地に行ってみた

いつもPCばかりなので、今日は初めてスマホから書いてみます。

仕事で何年もお世話になった方が、築地の仲卸店に転職とのこと。広告会社で外資系のクライアント担当が長かったことを考えると、思い切った転身です。

ちょうど近くに用事があったので、訪ねてみました。

…でも、あいにく定休日でした。

よく考えると、毎日夜中の1時起きで午後3時頃まで仕事。ネット環境もない店舗。定休日だからこそ、久しぶりにSNS投稿できたのでしょう。

最初から電話などで定休日を確認する方法もありましたが、ぶらりとでかけて築地の賑わいに浸るのもいい経験でした。

流れに身をまかせる。偶然に従ってみる。そんなすごし方もぼくはわりと好きなのです。

2016-12-22

「言葉が意見を伝える道具であるならば、まず、意見を育てる必要がある」

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『言葉にできるは武器になる』(梅田悟司著/日本経済新聞出版社)という本を読んでみました。著者は電通のコピーライターです。

ぼくは普段この類いの本をなるべく読まないようにしています。読んだときには「なるほど」と思っても、自分の問題意識やその深さと直結していないと、その場かぎりのナットクで終わりがちだからです。

スポーツにたとえれば、自分がくり返し練習した後コーチのアドバイスを受けるのならいいけれども、自分がたいして練習していないのにコツばっかり聞きかじっても身に付かないということ。

ところが、今回なぜ買ってみようと思ったのか。それは、「自分が最近考えていることが、この本でより深く語られている」と思ったからです。

東京駅近くの八重洲ブックセンターでは、1階に平積みされていました。そこも含めて、何度か手にとって立ち読みしたあと、結局、買ってみることにしました。

著者のメッセージをひとことで言うと、こうなります。

「言葉が意見を伝える道具であるならば、まず、意見を育てる必要がある」


ふだん私たちは言葉を「コミュニケーションの道具」だと考えています。ところが、自分の考えが浅いところに留まっているのに、言葉だけを磨こうとしても、結局、その言葉が胸に響くことはないのです。

「言葉は思考の上澄みに過ぎない」


著者はそう言い切ります。そして「外に向かう言葉」をあれこれ言う前の「内なる言葉」の育て方について考察します。

(つづく)

2016-12-21 オスプレイは「不時着」?「墜落」? このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

ある方から米軍のオスプレイ事故について、この「質問学」ブログで取り上げると面白いのでは、という提案をもらいました。「不時着」と「墜落 crash」という言葉の意味について。いただいた文章を私なりに簡略化してご紹介します。

<問題> 次は、2016年12月13日に沖縄で起こったオスプレイの事故についての文章である。言葉の使い方として間違っているものはどれか? (なお、米軍は、まったく操縦できなくなったわけではなく、普天間に戻るわけにはいかないので、海岸沿いの人のいないところに着水したとの説明を行っている)

  1. オスプレイは沖縄沖に不時着した。(米軍及び日本の防衛省の発表) 
  2. オスプレイは沖縄沖に不時着し,大破した。(NHKほか多くのマスコミが使った表現)
  3. オスプレイは沖縄沖に墜落し、大破した。(沖縄の新聞の表現)

(参考)
海外のマスコミ報道では「crash」という言葉を使っている。
1) US Osprey aircraft crashes off Okinawa coast in Japan. (BBC News)
http://www.bbc.com/news/world-asia-38311685
(The most recent crash was in Hawaii in May last year, in which two US Marines died.

2) Marine Corps MV-22 Osprey crashes off Okinawa. Crew rescued.
http://www.news.com.au/.../b3df1c3c15d7ced2b3ae47b376270303


私はこの問題には詳しくないので、ここでどれが正解でどれが間違いとは言いません。でも、3つの文でずいぶんと印象は変わってきますね。

辞書を引くと、「不時着」とは「『不時着陸』の略。航空機が、故障などのために目的地以外の場所におりること」。一方の「墜落」とは「高いところから落ちること。(例)航空機の墜落事故」と載っています。

英語の「crash」は「<車・列車などが>衝突する。<飛行機などが>墜落する」という意味です。また「不時着」は英語で「a forced landing」「an emergency landing」「a crash landing (胴体着陸)」などと表現するようです。

報道写真を見ると、たしかに機体が大破しています。皆さんは「不時着」「墜落」…どの表現がしっくりくるでしょうか。

ちなみに、米軍の垂直離着陸機の愛称「オスプレイ」とは「タカ目ミサゴ科」の鳥「ミサゴ」のこと。日本では古来「魚を獲るタカ」として知られ、「魚鷹(うおたか)」とも呼ばれるそうです。