五輪エンブレム2位案はお好き?
二〇二〇年東京五輪のエンブレム問題について。ひと月ほど前、ヘンテコな画像をネットで見かけた。コンペで選ばれて後に撤回となった佐野研二郎氏の原案および、二位・原研哉氏、三位・葛西薫氏の案とされる画像である。出どころは週刊新潮だという(十月八日号)。目にしたとたん「さすがにこれはないだろう!」と思った。それぐらいヒドイものに見えた。
ところが、これは本物だったようだ。日本を代表するデザイナーのひとりである原研哉氏本人が「一部が出所不明の漏洩に見舞われた自作案」を十一月二日に公開した。それがどのような案だったか。ご興味ある方は、どうぞ原氏のウェブサイトで確かめてみてください。
2020東京五輪エンブレム 第一回設計競技案(原研哉)
http://www.ndc.co.jp/hara/olympic2020.html
「なるほど、プロの仕事だ!」と思わずにはいられなかった。理由としてはまず、球体のエンブレムが「陰影」という技術を用いずに表現されている。そこにアイデアの核がある。また、競技場などリアルな空間でどんな広がりをもって展開されるかという説明のなかにも、わくわくできる発想があった。好みのちがいはあれど、これが相当の水準をクリアした案であることはたしかだと、わたしは思った。
同じ内容でも、見せ方しだいで印象は正反対になる。それが今回の教訓だ。料理も盛りつけ方で味が大きく変わる。「中身には自信がある」といって、汚い皿にぞんざいに乗せて出す料理人は少ないだろう。それでは客の心はつかめない。
あなたが情報の受け手なら、美化や誇張、悪意や矮小化に惑わされず、ものごとの核心をつかむセンスを磨くべきだ。反対に、送り手側に立つとしたら、どうすれば事実や発想の中心を明快に印象づけられるかという工夫が不可欠だ。
もちろんこれは自戒をこめて書いている。
過去記事:デザインは機能だ(札幌&東京五輪のエンブレム)
http://d.hatena.ne.jp/yosikazuf/20150823/p1