白駒の池物語


  白駒の池物語40


「知っているわ。とうちゃん」
「夕方遅く、清太と二人だけで出
かけるのかい」
「そうよ。二人でみに行くの。
とうちゃん、ゆうすげの花をみに
行ってもいいでしょ」



「きよ。おまえは、嫁入り前の大
事な体なんだよ。
今、縁談の話もいくつかあるしね」
「とうちゃん。清太さんは、誠実
な人よ。だから、心配することは
何もないわ」
きよは、きっぱりいいました。



「とうちゃんも、そう思う。
清太は、ほんとにまじめないい青
年だ。でも・・・長者の娘が、夕方
遅く、使用人と二人だけで出かけ
たなんて、村の人たちにいわれて
も困るしね」
長者は、まよっているようでした。


           つづく



「白駒の池物語」は、信州佐久にあ
る「白駒の池」に伝わっている話を
ヒントにして、みほようこが書いた
物語。



昨日(9月14日)の分は、こちら。


   白駒の池物語39


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20080914#p1




初めてこの物語を読んでくださった
かたへ


    白駒の池物語1


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20080807#p1



「次の日」「次の日」と押せば、
「白駒の池物語」を続けて読む
ことができます。

開善寺の早梅の精


  開善寺の早梅の精1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080302#p1



  「開善寺の早梅の精」より


どのくらいの時間がすぎたのでし
ょうか。
文次が目をさますと、美しい女の
人も、おいしい酒も、料理も消え
ていました。



文次は、一人ぽつんと、梅の木の
下に立っていました。
梅の花が、月あかりに照らされ美
しくみえます。
何事もなかったかのように、梅の
花の香りが、あたり一面にただよ
っていました。



東の空が、だんだんに明るくなり
ました。
「ちゅん、ちゅん、ちゅん」
すずめのなき声も聞こえます。



「わしは、夢をみていたのだろうか。
美しい上品な女の人、舌がとけて
しまいそうなうまい酒、おいしい
料理。



あれは、夢だったのだろうか。
いや、夢ではない。
わしは、梅香となのる女の人と、
たくさんの歌をよんだ。
ほんとに楽しいひとときだった」
文次は、小声でつぶやきました。



すると・・・。
風もないのに、梅の花びらが、ひ
らひらと文次の上に舞いおりてき
ました。
 


「開善寺の早梅の精」は、信州の
伊那谷にある「開善寺」に伝わっ
ている「早梅の精」の話をヒント
にして、みほようこが書いたもの。



「次の日」「次の日」と押せば、
「開善寺の早梅の精」を続けて読
むことができます。

りゅうの俳句1167

・あの姿 咲かないのだよ 童話かな


・嫁入りを 心配すれば 物語


・この花を 出かけるのかい 使用人


・嫁入りや 咲かないのだよ 物語


・このつぼみ 出かけるのかい 使用人