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[五十嵐貴久] 誘拐


誘拐

誘拐

韓国との歴史的な条約締結を控え、全警察力が大統領警護に集まる中、現職の総理大臣の孫が誘拐されるという大事件が起きた。全く痕跡を残さない犯人に、警察は混乱に陥る…。“誘拐”という、いわば古典的な犯罪の中に、非常に現代的な仕掛けが取り入れられた、緊迫感溢れるミステリー。青春小説『1985年の奇跡』、家族小説『パパとムスメの七日間』、ミステリー『交渉人』など幅広い作風で活躍するエンターテイナー五十嵐貴久の最新刊!


中盤まではある程度予想どおりで現役総理の孫が誘拐されるという大胆な設定の割りには淡々とした退屈な展開でしたが、ラスト10ページで著者が伝えたかったことが理解できました。「あっ!」この瞬間の鳥肌もんはさすがストーリーテラーだけあります。最後の最後でこの小説は謎解きのミステリーではなくリストラされた弱者目線の復讐犯罪であり人間ドラマであることに気付きます。

小説の中で「金で買えないものはない」と常々語る総理大臣ですが、過度の実力主義や格差社会による負の側面を痛烈に皮肉る内容に「政治とは明日枯れる花にも水をやる心」といった大平元首相の言葉を思い出しました。必殺仕事人や水戸黄門のように奇麗すぎる話に映るかも知れませんが、読んで気持ちいいもんはいいもんです。