いよいよ12日に迫った東京ゲートブリッジの開通を記念して、「東京ゲートブリッジの作り方」を大公開したいと思います。
もしみなさんのお知り合いに大金持ちがいて「気に入った!ぼくのプライベートビーチに東京ゲートブリッジと同じものを作ってくれないか」と相談されたときはこの記事を思い出してほしいです。
- 制約条件をクリアするための技術開発力(材料、工法)があること
- 高度な溶接技術者を持つ橋桁製作工場があること
- 岸壁に300m×50mの地組みヤードがあること
- 大きな起重機船を調達できること
- 困難に直面しても「文明を創る」という誇りと魂で乗り越えること
この5条件をクリアすれば、あなたもゲートブリッジを作れますよ!(当社調べ)では順番にみていきましょうか。
富津港下路トラス地組立て
2009.06.04(富津港)記事はこちら
全長200m、幅23m、高さ40m、重量6000トン。富津港に突如巨大な構造物が現る!東京港に架かる橋をまさか千葉県富津市で作ってるとは誰も思わないですよね。
有明港下路トラス地組立て
2009.09.06(有明港)記事はこちら
一方、有明では中防側下部トラスが地組されていました。もう浜出し直前です。起重機船のトップ3。左から武蔵、第50吉田号、海翔。AKBでいうと前田、大島、篠田?やっぱ起重機船といえどもセンター張りたいよな〜。位置はじゃんけんで決めたのではなく、一番重いところを一番背が低い起重機船が担当しています。
富津港下路トラス地組立て
2009.09.07(富津港)記事はこちら
2週間後の浜出しに向け仕上げの段階。この頃台風11号と14号の接近で架設スケジュールが再々延期されました。もうあと1回延期になると起重機船が他現場に行って揃わないという非常事態になるところでした。ヒヤヒヤ。
富津港下路トラス浜出し
2009.09.23(富津港)記事はこちら
若洲側下部トラスの浜出し作業。6000トンが浮く瞬間を見たかったけれど、現場に着いたときにはトラスは空中でした。海上作業は朝が早いのです。海面が比較的安定しているからです。
うわっ、車がミニカーのようです。なんかリアリティーに欠ける風景ですね。6000トン、東京タワーの1.5倍の重量が浮いてますよ。
起重機船が前進し、トラスを台船に載せます。といっても起重機船自身は自走できないので小型船に曳航してもらって動きます。台船の上では職人衆が作業手順の最終確認を行っています。
オっ、オーライ、オーライ。。。でっかいのが空から降りてきた!
若洲側下部トラス一括架設
2009.09.27(東京港)記事はこちら
4日前に富津港を出発したトラスは東京湾まで曳航されてきました。翌日の架設本番に向けて、この姿勢で一晩を過ごします。有明で地組されていた中防側の下部トラスはすでに橋脚に設置完了しています。
2009.09.28(東京港)記事はこちら
若洲側下部トラス一括架設当日。台船から橋脚への設置作業が始まりました。写真は浮いたあと。
最大積載24000トンのデッキバージはこの工事のために改造されたものです。こちらに詳細があります。
そうそう、この日は3役者最後の競演。最後までセンターを張れなかった海翔と武蔵はちょっと膨れっ面(気のせい?)。
中央径間(若洲側)トラス桁一括架設
2010.05.16(東京港)記事はこちら
中央径間(若洲側)トラス桁一括架設。やっぱ片持ちで2500トンの大ブロック架設ってすごいね。
高力ボルト総数は12600本、45名の職人さんが夜通しで朝6時まで締め付け作業を行ったそうです。
緑色の架設材にはジャッキが組み込まれていて、セッティングビーム固定後にトラス断面を合わせる微調整に使います。
この工事で一番お気に入りのショット。最後の頼みは“人”なのよね。鳶さんの底力を見た気がしました。
若洲側昇降施設の建設
2010.11.29(若洲側)記事はこちら
付帯設備のひとつ、昇降施設の建設中。残念ながら自転車は通行禁止らしいです。
夕陽に染まる「東京ゲートブリッジ」。11/15、応募者数4859名、応募件数12223の中から正式名称が選ばれました。愛着のあった「東京港臨海大橋(仮称)」ともお別れです。
テレビCMに登場!?
2011.1.某日 記事はこちら
レクサスのCMでゲートブリッジがCGで登場。工事会社の人とマニアの間で密かに話題となる。
中央径間箱桁ブロック一括架設
2011.02.26(東京港)記事はこちら
最後の一括架設、中央径間箱桁ブロック。長さ108m、幅24m、重量1900トン。
2011.02.27(東京港)
最大70m位置まで桁を吊り上げます。桁上に見えるのはセッティングビーム。
事前告知があったので大勢の見学者がいますね。さすがドボク愛好家のみなさん。
ゆっくりと桁を降下させていきます。肉眼では動いているのかわからないくらいです。108mの長さですが許される誤差はたったの2mm。
設置完了後、20000本の高力ボルトを締め付けて作業完了です。この後は舗装や高欄などの橋面工事開始です。
開通前見学会
2012.01.28 記事はこちら
1年後。でーん。記憶に新しい開通前の見学会!海上60m、橋の上はやはり風が強いです。
塗装は落ち着いた薄いブルー。錆に強い防食性に優れた塗料が使われています。
昇降施設の中は階段ぐるぐる。目が周りそうですね。
基礎工事開始から8年、数々の困難を乗り越えて、今世紀最大級の橋、「東京ゲートブリッジ」が出来上がりました!!
数々の難題を乗り越え、大きな仕事が成し遂げられた。支えたのは日本人の経験と技術。
「最先端でやっているけれど、もう一つ大事なのは、それを実物にする技術がいる。そこには人がからむ。人間の技能の伝承は大切。最先端の技術と、昔からのトラディッショナルな技術をうまく合わせることでしょう」
物を運び、文化を繋ぎ、人と人を結ぶ「橋」。その橋をつなげるのは人々の叡智と技術、そして決して諦めない情熱なのである。
人が集まり、集落が生まれ、そこに川があれば… 谷があれば… その時代時代の最先端技術で架けられてきた橋。それは文明の象徴。技術の進歩が私たちの夢を運んでくれる。いかなる困難にも立ち向かう人間の強さが、未来への架け橋となる。
テレビ朝日|奇跡の地球物語