1000年後も遊んでもらえるゲームを作りたい

この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2015の第23日目の記事として書かれました.
諸事情により公開が遅れてしまったことをお詫びいたします.

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篠原遊戯重工と申します.
過去作品は「うそつきばかり」,「Xing(バッティング)」,「クルリア」,「コバンいただき」,「ボードライナー」の5作品です.


まず,結論から書きます.

「少しでも新しいルール(システム)があると自分で信じるのであれば,良いテーマが見つからなくても,良いコンポーネントを揃えられなくても世に出してしまいましょう」


以下,この結論にたどり着くまでの思考を書きます.


私はゲームを作り始めた時,3つの目標を立てました.

  1. 自分のゲームをパブリッシャーに出してもらうこと.
  2. 公開したマニュアルだけを読んで自分でコンポーネントを用意して遊んでくれる人がでてくること.
  3. 自分がこの世からいなくなった後も自分のゲームで遊んでくれる人がいること.


1. と2. は達成できたので,3. を達成するための方法を考えたのがこの記事です.
仮に今日事故で私が死んでしまったらたぶん達成できてしまうので,より具体的に1000年後に遊んでもらうため,とします.
これだけ極端な数字にすると,どれだけ素晴らしいゲームを作り上げたとしても,コンポーネントは保たないでしょうし,テーマも共感しづらいものになっていることでしょう.マニュアルが残る確率を高めるためだけでもまったく別分野の知識が必要になってくるはずです.


現存のゲームの中で1000年後も存在していそうなゲームをいくつかあげてみます.

  • トランプ
  • すごろく
  • 将棋
  • 囲碁
  • マンカラ
  • 麻雀
  • じゃんけん
  • かくれんぼ
  • おにごっこ

分類や解析は苦手なのであくまで感覚的にですが,上にあげたゲームは1000年後も残っている確率が高いように思われます.つまり,このクラスのゲームを作り出すことができれば目標を達成できるかもしれません.
しかしながら,このクラスのゲームを新たに作り出すことそのものが,とてつもない挑戦になってしまいます.そこでほんの少しだけですが実現可能な挑戦にしてみます.


そもそも,あるゲームの何が未来に伝わったら,そのゲームが未来に伝わったことになるのでしょうか.
例えば,以下のようにコンポーネントだけが残っても,ちゃんとしたルールで遊んでもらえないのであれば未来に伝わったとは言えないでしょう.

5,000年前のボードゲーム、トルコで発見


つまり,ルール(システム)が伝わる必要があります.


では,ルール(システム)を伝える役割を担うマニュアルが1000年後に残ることに腐心すればいいのでしょうか.それもあまり意味がないように思われます.何らか別の方法でルール(システム)を伝える必要があります.


一つの方法として,ルール(システム)を遺伝子(ミーム)と見なせばいいと考えています.

ミームについてはこちら

何か新しいルール(システム)を考え出して,その一部でも未来のゲームにコピーされたのであれば,そのゲームは未来に伝わったことになるのです.もちろんその結果を自分で確認することはできませんが,そうあってほしいと願いながらルール(システム)を考えていれば,少しでも新しく,ゲームの枠を広げるようなものを考え出せるのではないかと思っているのです.
また,良いテーマやコンポーネントが現時点で望めなくても,少しでも新しいルール(システム)があると自分で信じるのであれば,そのゲームを世に出す価値があると思うのです.


結論です.

「少しでも新しいルール(システム)があると自分で信じるのであれば,良いテーマが見つからなくても,良いコンポーネントを揃えられなくても世に出してしまいましょう」



※本当はシステムとテーマの関係は数学と物理の関係に似ている,という話も盛り込むつもりだったのですが,話が妙な方向にずれてしまったため割愛しました.

ゲーム性の発見方法(妖精さんの活用方法)

この記事は,Board Game Design Advent Calendar 2014の第7日目の記事として書かれました。

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篠原遊戯重工の篠原と申します.
過去作品は「うそつきばかり」,「Xing(バッティング)」,「クルリア」,「コバンいただき」の4作品です.

第5日目の記事で操られ人形館の常時次人さんが
「朝起きたら妖精さんが来てシステムの骨格が出来ていたので、後はテストをするだけだった!とはなかなかいかないでしょう。」
と書かれていたので,僕は妖精さんに働いてもらう方法について書こうと思います.


さて,ボードゲームのルールの根幹を1つ作るのにどれくらい時間がかかるものでしょうか.
僕はだいたい半年ほどかかるようです.ただし,この半年の中で一番本質的な時間は5分程度です.言い換えれば,ボードゲームのルールの重要な部分は5分で作れるということです.ゲームを作っている作業の中でこの5分間が一番楽しく,興奮する瞬間です.この瞬間のためにゲームを作っていると言っても過言ではありません.ゲーム作りの中の最も大きな報酬だとも感じています.
この5分間のことを妖精さんの仕事としています.

妖精さんは何もしないで勝手に仕事をしてくれたりはしません.妖精さんが働きやすい環境を整える必要があります.


まず,妖精さんにやってもらいたいことをはっきりさせましょう.
ゲームを作る上で必要な工程はたくさんありますが,アイディアの発見フェーズと,アイディアの解決フェーズの二つに分かれると考えています.数学で例えると,数学の問題を作ることと,その問題を解くこととに対応しています.アイディアは方向性やテーマと言い換えることもできます.どちらのフェーズも重要ですが,まずは解くべきアイディアがないと話が進みません.
また,ただアイディアがあればいいわけではありません.より筋の良いアイディアである必要があります.
妖精さんにやってもらいたいことは,この発見フェーズでより筋の良いアイディア(方向性,テーマ)を見つけてもらうことです.

あるアイディアが筋が良いかどうかを判定することは簡単です.そのアイディアを解決した試作をテストプレイした時に出てくる様々な改善案を,特に悩むことなく取捨選択できるようであれば,それは筋の良いアイディアです.どの改善案も甲乙つけがたい場合は,解決しようとしているアイディアがまだ十分な品質に達していない可能性があります.

妖精さんが降りて来やすいように発見フェーズで僕が実践していることは以下になります.

  1. 空き時間に楽しさや面白さにつがなりそうなアイディア(部品)がないかを探し続ける.メモはとらない.
  2. 見つかった良さそうなアイディア(部品)を頭の中で組み合わせてみて,良さそうなアイディア(集合体)にならないか試し続ける.メモは取らない.
  3. 良さそうなアイディア(集合体)を3つくらい同時進行で考え続ける.それぞれを組み合わせたりバラしたりを繰り返す.メモは取らない.
  4. 行き詰まりを感じたら考えるのをやめて意識から外す.メモは取らない.
  5. 上記を繰り返す.

発見フェーズで大事なことは常に考え続けること(頭の中にアイディアを常駐させること)です.このフェーズではメモを取る必要はありません.メモを取るという行為は時間がかかりすぎますし,メモを取ってしまうと安心してしまい,頭の中に常駐させることを怠ってしまうからです.
メモを取らないと忘れてしまうという不安があるかもしれませんが,気にする必要はありません.メモを取らなければ忘れてしまうようなアイディアはさして重要ではないのです.本当に重要なアイディアは忘れようとしても忘れられないものなのです.


■アイディア(部品)の例

  • ドアを開けようとしたら反対側にも人がいて同時にドアを開けようとした.そして同時にドアを開けるのをためらった.これは何かゲームに使えないか?
  • ペットボトル専用の中身が見えないゴミ箱にペットボトルを捨てたら,音で缶が混ざっていたことに気づいた.これは何かゲームに使えないか?
  • バスに乗っていた子供が手を振ってきたから手を振り返したら,実はその子は僕の後ろの人に手を振っていた.これは何かゲームに使えないか?


■良さそうなアイディア(集合体)の例

  • プレイヤー数ー1の枚数の手札を全プレイヤーが持つ.各プレイヤーは自分以外のプレイヤーの前に手札からカードを表にして1枚ずつプレイしていく.最終的に自分の前に集まったカードの組み合わせで得点が決まる.交渉あり.
  • 各プレイヤーは5色の小さなボールが複数入った袋を持つ.プレイヤーは手番にAかB,どちらか1つを行う.

  A)自分の袋から任意のボールをつかみ出し,一番数が多い色のボールと,二番目に数が多い色のボールを確認する.どちらか片方の色のボールを全て得点として消費し,残った色のボールを共通の場に出す.数が三番目以降のボールは自分の袋に戻す.
  B)共通の場から一色全てのボールを自分の袋に入れる.

  • 大中小3種類のキューブが,それぞれ4色に塗り分けられている.プレイヤーはキューブを積み上げてタワーにしていく.タワーは複数存在できる.小さいキューブの上に大きいキューブを積むことはできない.各プレイヤーは手番で,手持ちのキューブをタワーの一番上に積むか,タワーの一番上からキューブを下ろして手持ちとするかのどちらかを選んで行う.勝利条件は検討中.


上記をだいたい半年くらい続けると,突然妖精さんが舞い降ります.そして5分程度で筋の良いアイディア(方向性,テーマ)を作って去っていきます.これまでですと,散歩中・シャワー中・寝起き(夢の中)で妖精さんはお仕事をしてくれました.今も次の妖精さんが舞い降りるのを待ち続ける日々です.


最後になりますが,ゲームを作るというゲームはとてもとても面白いので,まだ遊んだことがない方はぜひ一度遊ばれてみることをお勧めします

新作ゲーム「Xing」記事一覧

■連絡
トラブルにより2012秋のゲームマーケットにサークル代表者である私自身が参加できなくなりました.友人の助けにより新作Xing(バッティング)の発売は行えますが,いかんせん急な話なので少々バタつくかと思います.何卒ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします.


11/18(日)に浅草で開催されるゲームマーケットで新作ゲームのXing(バッティング)を発売します.
以下,ゲームマーケットサイト内ブログに投稿した記事の一覧です.



■PV第一弾
http://gamemarket.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=986

前作「うそつきばかり」のPVを作成いただいた大橋弘典さんに,今回もPVを作成いただきました!撮影している時はこんなに格好良くなるとは思いませんでした・・・



コンポーネント紹介
http://gamemarket.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=1043

Xing(バッティング)のコンポーネントです.袋とお皿のロゴがとても気に入っています.



■ルール説明PV
http://gamemarket.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=1058

基本ルールのインストPVです.一発撮りだったので緊張しました.



■ルール説明
http://gamemarket.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=1043

Xing(バッティング)のルールマニュアルです.
最後の最後まで悩みました・・・

ただのじゃんけんがひどく楽しかったこと

いつものメンバーとボードゲームを遊ぶと、終わった後に反省会と称して飲みに行くことが多いです。その席でやった焼き鳥争奪のじゃんけんがとても楽しかった、というお話です。

焼き鳥争奪ゲーム

コンポーネント
  • 5種類の焼き鳥の串がそれぞれ2本ずつ計10本
プレイヤー数
  • 5人
勝利条件
  • それぞれのプレイヤーが自分が食べたい串を可能であれば1本全部食べること。
  • それが不可能な場合は少なくとも1口は食べること。
ゲームの進め方
  1. 5人全員でじゃんけんをする。
  2. じゃんけんに最後まで勝ち残った1名が串を1本とる。
  3. そのプレイヤーの左隣のプレイヤーから時計回りに1本ずつ串をとっていく。
  4. 1周したところで残り5本の串を全てばらしてみんなで食べる。

条件はこれだけですが、みなゲーマーなので異様な盛り上がりを見せました。即座に交渉が始まり、自分が食べたい串や、じゃんけんで自分が出す手を宣言するプレイヤーが現れました。席の位置関係によって同盟の申し出や恫喝が飛び交い、もはや焼き鳥などどうでもよくなりました。
交渉が落ち着くのを待ってじゃんけんを行いました。あいこになる度に感嘆の声が上がり、また交渉が始まり・・・を繰り返し、最後の2名の勝負の時まで交渉は続きました。終わってみればみんなちゃんと自分が食べたかった串を食べれていて、なあんだ〜となりましたが、そこに至るまでの過程がとてもとても楽しかったです。
普段ゲームをしない人と同じ事をやってここまで盛り上がるのは難しいだろうなと思いつつ、何とかシステム側で自動的にこのような交渉が始まるゲームが作れないものかと考える日々です。

ゲームマーケット2012春

ゲームマーケット2012春に篠原遊戯重工として出店しました。
商品は「うそつきばかり」です。

http://gamemarket.jp/modules/weblog/index.php?user_id=490

何かを作るのも、それを自分で売るのも、買ってくれた方の感想を聞くのも、何もかもが初めてでした。買ってくれた方に感謝するとともに、様々な形で手伝ってくれた友人たちに改めてお礼を言いたいです。一人では"絶対に"完成までこぎつけることはできませんでした。

本当に、本当にありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。

僕のゲームの作り方

ゲーム作りと数学の問題を解くことは似ていると感じています.
作りたいゲーム=解きたい問題といった感じです.


僕は数学の問題を解くとき,筋道を立てずにその場で思いついたアイデアや,過去に有用だったアイデアをパズルのよう組み合わせて解くのが好きです.効率的な解き方でないことは十分承知しているのですが,この方法で解けた時はひどく気分がよく,どうしてもやめることができません.


ゲームを作るときも同じで,何となく思い浮かんだ事物や,過去に遊んだゲームの面白かった要素などを頭の中にいっぱい並べて,ランダムに組み合わせて作るのが好きです.*1.これまた効率が悪いことは分かりきっているのですが,当初ゲーム作りの定石がよく分かってなかったので馴染みのこの方法で進めていました.


ただ,この方法にも良いところがあります.他のことをしながらでも頭の中で考え続けることができて息切れしません.たくさんのダイスを6ゾロが出るまでぼ〜っと振り続けるのと似ています.完全に運に任せた状態です.
なかなか思考が収束しない方法なので,締切があるモノづくりの場合は最低の部類の方法に入ると思います*2.でも,ストレス無くゲームのことを考え続けることができるので,途中で挫折しにくいという利点はあるかなと思ってます.
今回のゲームマーケットでの最重要ミッションは"ちゃんとゲームを仕上げて出品すること!"だったので,結果としては悪くない方法を選択できていたのかもしれません.


実際のところは,この非効率な方法でちゃんとゲームを仕上げられたのは周りの友人たちの助力に寄るところが非常に大きく,今後もゲームを作っていくのなら方法改善の必要性を強く感じています*3


この文章も"思い浮かんだことを適当に組み合わせる"方法で書いてるのですが,やっぱりダメですね.長々と書いて,この方法ではダメだ,という非常にネガティブな結論に達するところが非常に僕らしい気がしてます.

*1:例えば吸盤+漢字+ロンデルシステムとか

*2:今回はある程度形になるまで二ヶ月かかりました.

*3:これは先日参加したドロッセイルマイヤーズのワークショップでも強く感じたのですが,その感想はまた別記事で.

ゲームマーケットに出店します

篠原です.

5/13(日)のゲームマーケットに「篠原遊戯重工」というサークル名で出店します.
一定年齢以上の人にしか元ネタが分かってもらえないサークル名ですが大目に見てください.

ここでは自作ゲームの宣伝*1や,ついでに僕がボードゲームを遊んで感じたこと・考えたことを書いていきます.
最初はちゃんと独自ドメインを取得してから宣伝を始めようと思っていたのですが,「篠原遊戯重工」を独自ドメインで表したら何になるかでずっと悩んで先に進めなくなっていました.決まらないまま時間が過ぎてしまい,いい加減タイムアウトなので独自ドメインは諦めてはてなダイアリーを使うことにしました.これでやっと名刺にURLを入れることができます.

僕がゲーム作りで苦しんでる様をしっとりとお楽しみいただければ幸いです.

*1:ステマ大歓迎です.