ひとは自分の死ぬ日を選べない

人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)

人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)

人間臨終図巻〈2〉 (徳間文庫)

人間臨終図巻〈2〉 (徳間文庫)

人間臨終図巻〈3〉 (徳間文庫)

人間臨終図巻〈3〉 (徳間文庫)

この本が出版されたのは、1986年から1987年にかけて。ハードカヴァーは中産階級の高校生が買える値段ではないので学校で熟読し、20年後のいまになって文庫で購入。
高校生のころは「やたらと長生き、もしくは夭折したひと」を調べていたが、いまとなっては「自分と同い年で死んだひと」に関心が移るようになった。そういうものなのだろう。ちなみにいまのオレと同じ年齢で世を去ったのはラファエロビゼーロートレック斎藤緑雨国木田独歩宮沢賢治などとなる。何やら不可解な人選だが、自殺でもしないかぎり、人間は自分の死ぬ日を決められない。

「書けない」ことを書く

起床時刻と就寝時刻が日によってばらばらという生活を続けているので、「日記」として、ここに書くことはない。でも特別な事情がなければ連日更新を基本しているので、とりあえず更新するだけはする。
ゆえに「もっと内容のあることを書け!」と言われても困る。零度のエクリチュールこそ、オレが目指しているものなのだから(このセンテンスは出鱈目なので、信用しないように)。

零度のエクリチュール

零度のエクリチュール

零度のエクリチュール 新版

零度のエクリチュール 新版

七瀬が正しく映像化される

家族八景 上巻 (KADOKAWA CHARGE COMICS 16-1)

家族八景 上巻 (KADOKAWA CHARGE COMICS 16-1)

家族八景 下巻 (KADOKAWA CHARGE COMICS 16-2)

家族八景 下巻 (KADOKAWA CHARGE COMICS 16-2)

上巻まで読了する。
筒井康隆は映像化しやすい小説家だと思われがちだが、原作に忠実にして映像化して成功したものは、あまりない。とりわけ「七瀬三部作」の主人公は浮世離れした美女であり、どんな俳優やキャラクターデザイナーが手掛けても、嘘臭くなってしまう。
ゆえに清原なつのが「七瀬三部作」の第一作である『家族八景』を手掛けると知ったときには不安になった。彼女は決して上手な絵を描けるタイプではないからだ。しかしセックスや恋愛に対する鋭い洞察や心理描写のたくみさにおいては彼女以上の適任者はなかなかなく、また国内外を問わずSFに関する造詣が深い。これはまさに適任であり、そして期待を裏切らない内容であった。『家族八景』以降の作品も漫画化されるのだろうか。
家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

エディプスの恋人 (新潮文庫)

エディプスの恋人 (新潮文庫)

今後はカッパブックスなみに、誤字脱字のないブログを目指します!

誤字がどうの誤変換がこうのといった話をコメント欄で続けているうちに、機会があれば触れたいと思っていた韓国の出版事情について書きたくなった。
関川夏央『退屈な迷宮』によれば、韓国人の編集者は日本人の編集者からすれば、仕事らしい仕事をほとんどやらないそうだ*1。要するにあれを直せ、ここは不必要だ、そこは論理的な整合性がない、としつこく指摘する編集者が少なかったらしい。ゆえに当時の「韓国文学」には、冗長なものが多かったとのこと。
これをもってして韓国が日本よりも「後進的」だとするのは間違っている。日本ではすっかり廃れた儒教的な道徳が、隣国ではまだ生き残っていると解釈するほうが自然だろう。「儒教的であるのが、すなわち後進的なのだ」と反論されても困る。儒教が根付いている国では作家は「先生」で、「『先生』の文章に手を加えるのは畏れ多い」という意識が根強いのではないだろうか(関川はそこまで踏み込んだ分析はしていないが)。
ううむ、韓国と日本を比較文化論的に論じようとすると、右からも左からも文句を付けられそう内容になってしまう。しかしここまで書いたものを死蔵するのはもったいないので。公開する。

退屈な迷宮―「北朝鮮」とは何だったのか (新潮文庫)

退屈な迷宮―「北朝鮮」とは何だったのか (新潮文庫)

*1:もっともこれは1990年前後の見聞をまとめているので、いまでは事情が違っているかもしれない。

本日のamzon.com

http://www.amazon.com/dp/2070295826/
『狂気の歴史』amazom.comのフランス語の原書で購入。もちろんえ英訳ではない。
『言葉と物』と『監獄の誕生』をフーコーの彼の主著として捉える向きは、「いまさら『狂気の歴史』を買うとは」と失笑かもしれない。しかし実際にはこの本はなぜかきちんと眼を通した通すしたこたがく、おまけにユーロ高で、さらにはフランシスの書籍と納得できる値段で買うには、実店舗とamazon:comくらいしか選択肢がないからだ。えらく廻ってとくどいことをやた感があるが、日本のネット書店で日本語訳を買うよりは合理的な消費行動なのだと勘違いしたい。

言葉と物―人文科学の考古学

言葉と物―人文科学の考古学

監獄の誕生 ― 監視と処罰

監獄の誕生 ― 監視と処罰

狂気の歴史―古典主義時代における

狂気の歴史―古典主義時代における

馬鹿息子、さらに馬鹿になる

新装版 考えるヒント (文春文庫)

新装版 考えるヒント (文春文庫)

中学生のころから「日本に論理的な文芸批評が定着しなかった最悪の元凶ははこの男である」という父親の説教を聞かされたせいで、小林秀雄は「ただでさえ悪い頭が、読んだらさらに悪くなる物書き」リストの最上位に位置していた。ゆえに34歳になるまで、この小柄な大酒呑みの文章は一行たりとも読んだことがなかった(現代国語の授業で無理に読まされたものは除く)のだ。しかしこの本は読むと意外と面白い。冥府の父は「小林秀雄を読んだせいで、L'idiot de la familleがますますidiotになった」と嘆いているのかもしれないが。コンピューターと将棋について論じた冒頭の短文は、いまBonanzaを開発しているひとが読んだらどう思うのだろうか。