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yu4uの日記

2016-09-22

社会人博士課程を修了し、博士号を取得しました

先日学位授与式があり、東京大学大学院、情報理工学系研究科、電子情報学専攻を修了しました。あまり参考になるようなことは書けませんが、自身の記録として過程を書いておこうと思います。

まとめ

  • 社会人博士では、自分の専攻で、e-learning等で単位が取れるか、入学前の研究を博士論文に含めることができるかは重要
  • 博士論文は自分の研究を改めて位置づける良い機会。自分で貢献が小さいと思っていても、その差分を徹底的に考えていくと、実はそこから新たな課題設定が見つかる
  • 社会人じゃない博士やりたい

何故取ったのか

2007年に修士を修了した後、某通信事業者の研究所でコンピュータビジョンの研究を行ってきました。研究者として生きていく以上、いつかは取らねばという意識がずっとありました。特に、修士時代はネットワークの研究であったのに対し、現在はコンピュータビジョンの研究をしているため、現在の専門で学位を取りたいという気持ちがありました。

また、将来的な選択肢を広げるという点でも、取れる恵まれた環境にいる間にとっておきたいという思いがありました。

(後は、査読とかで英語のメールが来る際に、Dr. 〜で始まっているときにしょんぼりしなくなります)


研究室選びから出願まで

何はともあれ、お世話になる研究室を決めないといけません。周りでは出身研究室に戻る人が多いようですが、出身大学が関西かつOR/ネットワーク系の研究室出身なので、戻ることはあまり考えませんでした。

国際学会で何度かお会いして仲良くさせて頂いていた佐藤真一先生に何かの折にお願いしてみたところ、快く引き受けて頂いたので、佐藤先生にお世話になることに決めました。

出願時には上司の推薦書が必要だったり、入学時には会社に在籍したまま入学することを許可するといった内容の書類が必要だったりしたので、やはり会社的に理解がないと在籍したまま通うのは難しいようです。


入試

元々卒業生ではないので、ちゃんと試験を受けないといけません(関連する専攻の修士卒であれば専門科目の試験が免除される)。具体的には、英語(TOEFL ITP)、専門科目の筆記試験、研究プレゼンで合否が決まります。

さて、専門科目は8分野から5題出題され3問に回答するようですが、 実は元々学部工学部系ではなく大学院から情報系に入ったこともあり、 過去問を見てみると半分くらい良く分かりません!というわけで、生協に行き、なんとか分かりそうな4分野くらいの参考書を買って、夜中のスタバで勉強をして入試に挑みました。

実際の試験では、ほとんど勉強しなかった分野からばかり出題され、ちゃんと解けそうなのが1問という絶望を味わいました…。持てる知識想像力を全力で駆使して回答しましたが、良い結果ではなかったと思います。英語と研究プレゼン業務スキルなので問題ないと思っていますが、専門がそんな感じだったので、合否を見に行ったときは本当にドキドキしました。


入学

実は入学と同時に研究所から事業部に異動となり、仕事としてはほとんど研究をしない状況となりました。異動先はスマートフォンを中心とした端末の企画開発および関連するサービスの企画開発を行う部署です。

端末の発売スケジュールという絶対的なデッドラインがある業務であり、仕事に慣れた頃には結構な量の業務を背負っていたため、忙しくも刺激的な日々を送ることになります。この時の所属グループにはそれぞれキャラの違う尊敬できるメンバーが多く、また相当自由にやらせてもらえたので、本当に良い環境でした。

大学はと言うと、必須単位取得のため、毎週開催される輪講に参加する必要があります。輪講は専攻全体で開催され、M1D1は既存研究のサーベイを、M2・D2は自身の研究発表を持ち回りで行います。発表自体は年1回で、その他の回は発表者全員に対して、発表に対するコメントを紙またはウェブフォームから提出する必要があります。

本業が結構忙しい状態でしたが、輪講を落とすわけには行かないので有給を取って参加していました。輪講の他にも、4科目ほどですが普通の単位も取る必要があり、こちらもちょくちょく仕事を休んで学校に行っていました。

平日時間が取られるのはかなりきついのです。E-learningで単位が取れたり、そもそも単位取得自体が不要だったりするケースも聞くので、大学・研究科・専攻によって結構違いがあり、自分が通えるのかによって研究室等を選択することが重要ですね。

この間研究はあまり進められませんでしたが、たまに日本開催の国際学会で発表する等、ほそぼそと活動はしていました。

(そんな理由で国際学会を選んでいたら、入学してからのPublicationのレベルが下がっているように見えると予備審査で突っ込まれた)


予備審査

気づけばあっという間にD3です。本審査の半年前くらいに予備審査があり、博士論文の提出は不要ですが、博士論文の(予定している)アウトラインに沿った研究発表を行う必要があります。

入学前は、映像のコピー検出、近似最近傍探索、大規模画像検索についての研究を行っており、入学前後からバイナリ局所特徴を用いた画像検索という研究を行っていたため、それらを全てつなげて合計5つの研究を大規模マルチメディア検索技術と言うようなタイトルでまとめ発表しました。

予備審査のコメントでは、薄々気づいていましたが、博士の研究としてまとまりがないという観点での指摘を多く頂きました。通常の論文をつなげたような博士論文を見たことがあったので、そういうので良いのかなというノリがあったのは否めません。また、入学以前の研究が博士論文の大部分を占めることに関しても指摘がありました。専攻によっては明確に禁止されている場合があるようです。

さて、これらの指摘に対し、最もstraightforwardに回答すると、入学以後のバイナリ局所特徴を用いた画像検索でまとめる、となるわけですが、これまでの研究業績に対し非常にボリュームが小さくなってしまい、博士論文として書き切れるのか、とプチ絶望していました。


育児休職

実は予備審査でプチ絶望する1ヶ月ほど前に子供が生まれ、元々奥さんに育児休職を取ると約束していたこともあり、予備審査後に育児休職を取得しました。快く取得させて頂いた部署の方々には本当に感謝しています。

具体的には、12月末に子供が生まれ、1月末に予備審査、2月から育児休職なので、実は予備審査のタイミングは育児+仕事の引き継ぎ真っ盛りなのでした。元々1月末が予定日だったのが1ヶ月早く生まれたのですが、予定通りだったらもっとバタバタだったので、親孝行な子です。

そんなこんなで、育児に明け暮れ、気づけば4月。春の陽気を感じながら、ふと大学のスケジュールを見ると、「6月10日博士論文提出締切日」という文字が。表紙すらない状態で漠然と8月くらいかなとか思っていた(アホ)ので、見た瞬間、もうだめだぁ・・・おしまいだぁという感じになり、半年延長かなぁ、これなら最初から長期履修制度にしておけば良かったなぁとか思っていました。

それでもやれるところまではやらねばと、 @ketsumedo_yarou パイセンにお願いして博士論文テンプレを貰ってから、追い込みを開始しました。

(というかお願いDMを送ってから速攻で自身の博士論文ソース全部入りをくれる @ketsumedo_yarou パイセンにはもう頭が上がりません)

ちなみに見直すと5月7日にDMしており、よくもまぁ1ヶ月前まで引っ張ったと思います。

やはり論文は書き始めると進みます。書き始めないと進みません。徐々にページが増えていったり、体裁が整ってきたりするとどんどんモチベーションが高まります。

最初に手を付けたRelated Workは、元々サーベイ論文のようなレベルで広く体系立てて整理したいと思っていたので、書きたいことのほうが多く、比較的スムーズに進みました。意外に困ったのが、手法の初出がいつ、どの論文かということ。大体の論文はその辺適当で、厳密に一番古いペーパーを参照しようとしたりはしないので、その辺をあまり気にせず読んでいた論文を結構読み直しました。

そして、元々温めていた新規の手法を頑張って1つのチャプターまで成長させ、他の手法もジャーナル化と合わせてボリュームアップしてなんとか本文100ページ超えまで書き、6月10日無事提出完了することができました。

なお、これは奥さんの理解とサポートなしでは本当になし得なかったです。Acknowledgementはノロケではないのです。日中や休みの日は結構な頻度で研究室に篭もらせて貰い、またそれ以上に精神的なサポートも大きかったです。


本審査まで

本審査に向けて、発表資料を作成するとともに、改めて自分の研究の位置付けの整理をしていました。

元々、バイナリ特徴の画像検索は、「驚きを、常識に。」というauのCMで連携するODOROKIアプリというアプリで、端末内での高速な画像認識を実現するために、これまで利用したことのないORBというバイナリ特徴を活用し、突貫で認識ライブラリを作成したことが始まりでした。このときは実用に耐えるアプリを作成することが重要だったので、なるべくシンプルに要件を満たすようにライブラリを作っていたので、あまり研究という意識はありませんでした。

その後、バイナリ特徴に対してフィッシャーベクトルといった手法適用して画像検索を行う研究を続けたりしていたのですが、改めてちゃんと調べてみると、実はバイナリ特徴を画像検索に応用している文献がほとんどないことに気づきました。

結果的に(今更ですが)、非バイナリ特徴で使われてきた様々な手法を初めてバイナリ特徴にうまく適用したという観点で、自分の研究を改めて位置付けることができました。

今回の博士課程では、どの研究でもそうだと思いますが、自分の研究と徹底的に向き合って、一体自分の貢献が何なんだということを考えることが一番得るものが大きかったです。自分では貢献が小さいと思っていても、その差分を徹底的に考えていくと、実はそこから新たな課題設定が見つかるものだと思います。


本審査

良い発表&質疑対応ができたと思います。

本審査までの間に自分の研究の位置付けを整理できていたため、イントロから結論までストーリーが一貫しており、楽しく発表することができました。発表のときには「分野外の人にも分かった気にさせる」のがモットーなのですが、副査の先生に「専門ではないが、理解できた」と言って頂けたのが嬉しかったです。


やり残したこと

やり残したというわけでもないですが、もっと学生の身分を利用できれば良かったと思います。

学生という身分だからこそ享受できるメリットがいっぱいある(が社会人だと享受しにくい)ということも再認識しました。

自分が学生の頃は意識低い系のネトゲ廃人であったためあまり活用できていませんでしたが、インターン、留学制度、起業家支援プログラム等々、今から思うと、修士の後、博士課程に進むという選択肢もあったな、と思うのでした。


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