yuhka-unoの日記

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「若者の○○離れ」と言われた「若者」としては

伝統工芸について - Togetter

「着物はこうあるべき」という世間の目が和装文化をじわじわ殺している。 - Togetter

上二つを読んで、「知識」と「技術」が十分にあっても、時代の流れや環境の変化に合わせられる「感性」が劣化してしまったら、どうにもならないのだと思った。いくら高品質なものでも、古臭くなってしまって、それそのものに魅力がないのなら、「ただ高いだけのもの」でしかない。結局のところ、魅力があるかないかだ。
「知識」も「技術」も、魅力あるものを作るために必要だから磨くものであって、「知識」と「技術」をこれだけ詰め込んだんだから、これは魅力的なものであるはずなんだ!というのは、本末転倒なんだろう。日本の電化製品などはそうなっているのかもしれない。
「感性」が劣化した分野は、かつて栄華を誇った、高い「知識」と「技術」だけを抱え込んで、ロストテクノロジー化していく。そうなってしまったら、次世代に「知識」と「技術」は受け継がれない。「ものづくり」の時代は終わる。
 
感性が劣化して、時代についていけなくなってくると、新しいやり方を模索しようとするより、これまでのやり方をより強化する形で、生き残りを図ろうとしてしまう。これまでのやり方が、なまじ一時的には効果があるだけに、やめられなくなってしまって、より厄介なんだろう。
長期的に見ると、こっちに切り替えていったほうが良いということでも、短期的に効果があると、そっちの方法に縋り付いてしまったりするものだ。その方法を続けていたのでは、やがて自分の首を締めるという行為であったとしても。就職活動のシステムなどもそうなんだろう。
 
着物業界は、売れなくなっていくにつれ、高価な着物を押し売りする店が出てきた。すると、「着物=押し売り」のイメージがついてしまい、ますます客が離れていくようになった。本当は着物を着たい人は沢山いるのに、押し売りされるのが嫌だから、みんな旧来的な呉服屋には近づかない。
若い人たちの間では、着物を着る人が増えているのだが、そういう人たちは、リサイクルショップかネットショップか古物市で買って、普段着に気楽に着物を楽しみたい人がほとんどだ。そういう人たちも、もちろん旧来的な呉服屋で着物を買おうとは思っていない。
着物界の「恐竜」たちは、そういった若い人たちの着物の着方に眉をひそめ、自分たちこそが主流の正当な着方なのだと思っていたりするのだが、実のところ、現代において「常識」とされている着物の着方は、戦後にできた価値観らしい。そして、そういう変なプライドを持った「恐竜」たちが、「着物はこうあるべき」という世間の目を作り出し、新規参入のハードルを上げている。
 
着物業界の衰退モデルは、他の業界でもよく見られる。どこの業界でも、衰退していくものは、今までのやり方を変えないままやろうとしたら、もう押し売りまがいのことをするしかなくなってきて、それでますます客が離れていって、古さと酷さが凝縮されていく傾向があるのだろう。「殿様商売」と「消費者敵視」と「押し売り」はセットのようなものだ。
かつて栄華を極めた大きな業界は、現代において、似たような経緯で衰退していっている。「若者の○○離れ」と言われている業界のほとんどは、この衰退モデルに当て嵌っていると思う。「若者の○○離れ」と言い出して、更に押し売りまがいのことをするようになったら、たぶんその業界は、もう良くはなっていかない。古さと酷さを凝縮したまま、何も変わらずにズブズブ沈んでいくだけだ。
「若者の○○離れ」と言うのは、もうどうしようもなく内部を変えられなくなっているから、原因を外部に求めるしかなくなっているのだろう。そう思うと、少し可哀想な気もする。「若者の○○離れ」と言われた「若者」の側としては、手を合わせて「看取ってあげましょう」ぐらいの気持ちでいるのが良いのかもしれない。下手に延命措置を施すより、ポックリ逝って頂いたほうが、彼らにとってもこちらにとっても良いだろう。
 

変わらない。替わるだけ - Chikirinの日記
 
人にとっても組織にとっても、「変わる」ことは簡単なことではありません。

特に日本ではあまりに「変わる」のが難しいため、「替わる」方が「変わる」より早く起こることもあります。というか、「替わる」を待たなければ何も変わらないことさえある。

中途半端に変わる必要はないです。そのままどうぞ! - Chikirinの日記
 
何かの問題を解決する方法には、状況を「改善する」アプローチと、状況を「見限る」アプローチがあります。ちきりんは、後者の方が、圧倒的に早くよい結果につながると考えています。

 
 
[追記]

続きを書きました。
「物」ではなく「物でできること」を買っている
 
 
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