まとまり日記

私はこういうときでも自分がいじけなかったこと、力むことなくそういう風に育ったのが母への感謝なのである。これは大きかった。恥ずかしさの容量が大きいのは強いのだ。見栄を張らないで生きること、これは何よりも大きな糧である。(森信雄)

廉価版を買うかグレードアップ版を買うか

わたしが買い物をするときに頻繁に直面する意思決定問題の解決法を考えたので備忘のためにメモ。

問題の状況

ある種類のものを買いたいと思っている。それには廉価版とグレードアップ版があり、後者の方が品質・機能は勝っているが値段がそれに応じて高い。どちらを買うべきか。

もう少し説明すると問題は以下のようになる。もしグレードアップ版を買って満足するならば、廉価版を買うよりは費用は高くなる。しかしもし廉価版を買って満足するならば、費用はそれよりも安くすむのでこちらの方がよい。ところがもし廉価版を買って満足できずにグレードアップ版も買うことになると、一番費用が高くなる。では廉価版とグレードアップ版のどちらを買うとよいか。

例えば

雪道でランをしたいと思っているが、今持っているシューズでは機能不足である。したがって雪道用のランニングシューズを買いたい。調べてみた結果、候補が二つあったとする。

ゲルスノーライド

スノーターサー

今調べてみるとスノーライドは約8500円、スノーターサーは約1万2500円*1

後者は高いが、今のところの最上級グレード。ではどちらを買えばよいか*2

考えかた

廉価版の価格をx円、グレードアップ版の価格をy円とする([tex:xpとする。するとまず(i)廉価版を買った場合(ii)グレードアップ版を買った場合の出来事のツリーは右のようになる。

で、(i)の場合の期待費用は

$px+(1-p)(x+y)=x+(1-p)y$

左辺の第一項は廉価版で満足した場合、第二項は満足できずにグレードアップ版も買った場合の費用。

(ii)の場合の期待費用はy。で、まず廉価版を買って様子を見るべきなのは、「((i)の期待費用)<((ii)の期待費用)」の時。つまり[tex:$px+(1-p)(x+y)=x+(1-p)y\displaystyle\frac{x}{y}$]となる。つまり、廉価版を買って様子を見るべきなのは、廉価版で満足する確率が、廉価版の価格をグレードアップ版の価格で割ったものよりも高い時。

上の例だと、廉価版のスノーライドを買うべきなのは、スノーライドに満足する確率の見積もりが$p>8500/12500=0.68$の時、つまり68%よりも高い時。

逆にグレードアップ版を買った方がいいときは二つあって、それは

  • 両者の価格差が小さいとき(xyの差が小さいとき)
  • 廉価版に満足しないことがわかりきっているとき(pの値がきわめて小さいとき)

また、両者の期待費用の差が小さいときは、どっちにしても費用の見込みは変わらないのでその点で意思決定するのは無理と言うことになる。

ただしこうした計算が実際上使えないときがあって、たとえば家を買うときのようにx+y円を払いきれない時には使えない。また商品の価格階級が三つ以上の時にも拡張できると思うが、上の計算そのままでは使えない。

もし買い物で迷うみなさまのお役に立てれば幸甚*3

*1:ただし価格は色やサイズによって違うので実際に買う場合はご注意を。

*2:ただしサイズの問題はクリアされたとする。

*3:なおわたしは廉価版の靴を買いました。いまのところ満足しております。