木山泰嗣『憲法がしゃべった。』

2011年に出版された本を紹介するシリーズの48冊目。木山泰嗣氏は弁護士。税法が専門のようだ。『小説で分かる○○法』みたいな本を読んだのがきっかけ。木山氏の著書の特徴は非常に速く読めること。どれも30分程度だろう。そもそも文字数が少ないのもあるが、読みやすい文章として参考になる。

憲法がしゃべった。?世界一やさしい憲法の授業?

憲法がしゃべった。?世界一やさしい憲法の授業?

木山泰嗣『憲法がしゃべった。』(2011)すばる舎 ★★

『弁護士が書いた究極の勉強法』以来の木山泰嗣氏。今回は憲法の入門書。といっても子ども向けだったようだ。"憲法くん"というキャラが憲法のことを子どもたちに教えるという設定。書いてある内容は標準的でいいと思うが形式が子供向けというより子供だましという気がして好かない。内容の理解に役に立っていない。途中で子ども同士の冗談話が挿入されるが本文と関係がない。巻末で"憲法くん"にオチをつけているが子供だまし。


橋本治『勉強ができなくても恥ずかしくない』のシリーズは子ども向けだと思うが、子供だましとは思わない。セルバンテスの『ドン・キホーテ』も。なぜだろうか。この点についてバートランド・ラッセルは次のように言っている(『教育論』)。

子供っぽいことを魅力的だと考えるような子供は、一人もいない。[・・・]だから、子供のための本は、子供っぽいふるまいに対して、先輩ぶった喜びを示すようなものであっては決してならない。当節の児童図書の多くに見られるわざとらしいばかばかしさときたら、胸がむかつくほどである。[・・・]それゆえ、子供のための最良の本は、元来はおとなのために書かれたもので、たまたま子供にも向いている本ということになる。(p.280)

本書がここまで酷いとは思わないが、<わざとらしい>ことは間違いない。一方、『ドン・キホーテ』などまさに<元来はおとなのために書かれたもので、たまたま子供にも向いている本>だろう。

【参考文献】

芦部信喜憲法
戸松秀典『プレップ憲法
長谷部恭男『憲法とは何か』
渋谷秀樹『憲法への招待』
松井茂記アメリ憲法入門』

ラッセル教育論 (岩波文庫)

ラッセル教育論 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)