ガンジーとヒトラーの共通点は何か?
ガンジーがヒトラーへ宛てた手紙「我が友よ」
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52094032.html
はてなブックマーク経由で知った。この記事自体はガンジーがヒトラー宛の手紙の冒頭で「Dear friend」と書いたというだけの話で何のことはない。
「一般にガンジー=善、ヒトラー=悪と思われているので、その両者が友人なら意外性があって面白いんじゃない?」という釣りだ。
記事はこう書いている。
両者は「善」の象徴、「悪」の象徴として取り上げられ、一見正反対のように見える。事実そういう風に扱われる事例が多いが、はたしてそうだろうか?
記事は下らないが、もし本当に「一般にガンジー=善、ヒトラー=悪と思われている」とするとそれは単純すぎるだろう。なにしろ両者は民族主義という点でまったく一致しているからだ。
ヒトラーの「ゲルマン民族は世界一、ユダヤ民族はクズ*1」は有名だが、ガンジーも近代国家(≒ネーションステイト)を否定するという点ではある意味ヒトラーよりも過激な民族主義と言える。それを示すのがガンジーの著書『ヒンドゥー・スワラージ』(1909)の次の文。なお、以下は歴史学者の古田元夫氏(東京大)の『アジアのナショナリズム』(1997)からの孫引き。
「過去50年ばかりの間に学んだ知識を捨てることによってインドは救済されるのです。鉄道、電報、病院、法律家、医者等はすべて消えさらなければなりません。またいわゆる上流階級は、意識的かつ宗教的に農民の単純な生活を営むことを学ばなければなりません。」(p.22)
これはトンデモとしか言いようがない。ガンジーはイギリスの法学院(≒ロースクール)に留学し弁護士になっているのにこんなことを書いている。ガンジーはイギリス留学時にフェビアン主義の影響を受けたというがこれはフェビアン主義どころではない過激さ。古田氏も非現実的なユートピア思想と評している。
これらを一言で表した古田氏の次の指摘は印象的だった(前掲書 p.78)。
ガンジーはインド独立の最大の功労者にして最大の批判者といえる。
このようにガンジーは近代化を否定し、伝統的な農民の生活を最上のものと考えていたとすると、ガンジーのいつものコスプレも糸車を回すパフォーマンスも納得がいく。ちなみに糸車は「イギリスの織物の輸入を止めてインド人の紡いだ織物を使え」という意味。まさに保護主義。イギリスの織物は貿易品の例として国際経済学で必ず出てくる。
ヒトラーのロシアを征服しそこにゲルマン民族のユートピアを作るという思想もマジなのか分からないトンデモっぷりだがガンジーもキテいるという話でした。
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