●放送免許更新制の問題

 昨年4月、まだ、自民党政権で、地デジ化推進政策が展開されていた時の下書き。日付は、2009/04/28。

 http://diamond.jp/series/inside/09_01_23_001/
 このダイヤモンド社の記事を受けて―

  この問題は、私の知るところではこれまでほとんど論議されることはなかったように思います。
 基本的には、既成の放送局が費やしてきた設備投資(開局当初からのものも含めて)莫大な金額になります。従って、免許を更新せずに、そうした放送設備が“遊ぶ”あるいは“産業廃棄物”になってしまっては困るという現実があります。現在では、アナログからデジタルへの移行にかかる資金が馬鹿になりません。免許の更新拒否などという事態が起きたら、大問題になるということです。
 この電波利権のシステムは、岸信介内閣で郵政大臣に就任した田中角栄がつくり上げたと言われています。大手新聞 ⇒ キー局 ⇒ 地方局 ⇔ 地方新聞 という構造です。電波という有限な資源を使う公共性という錦の御旗を持って、許認可のさじ加減を上手に行ったわけです。昭和30年代のこのシステム作りはVHF局でしたが、その後、さらにUHF局を設置認可する際には、各都道府県にNHKを除いて、民放VHF局1局、UHF局1局ということを基本にして続々と新しいテレビ局が誕生しました。さらにはラジオのFM局についても同様な施策が取られました。昭和50年代初めには新しい民放FM局が全国で誕生しています。
 新設認可の際に考慮されたのが「集中排除」の考えです。系列で三つ以上もマスメディアを抱えることは、まかりならんということです。北海道の場合は、広大な土地を抱えているということもあってVHF局は2社(HBCとSTV)、UHF局も2社(UHBとHTB)まではいいだろうということになったわけです。現在は、最も後発のTVHテレビ北海道テレビ東京・TX=日経新聞系列)が加わってUHF局が3局体制になっています。ちなみに、現在ではキー局、地方局の関係は固定されていますが、UHF局の開局当初からしばらくはキー局、ローカル局がクロスしながら再放送番組の放映権をやりとりしていました。
 いずれにしても、ここまで来てしまって、アナログからデジタルに変えることができずに免許返上もできないのが現在の民放の立ち位置だろうと思います。退路を断たれた状態で数千億単位の設備投資を強いられる。すんなり免許更新を行わないと総務省も何を言われるか分からない。築き上げてきた利権構造を壊すわけには行かないといことなのでしょう。
 ちなみに米国や英国では、この放送免許は入札で更新しているという話しです。こうした例を引き合いに今、放送法、通信法、電波通信事業法を発展させた情報通信法で「入札」という考え方を導入せよと声をあげている人たちもいます。
 総務省サイトにはこの情報通信法に関する報告書がアップされています。
 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2007/pdf/070619_3_bs2.pdf
 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2007/pdf/070619_3_bs1.pdf

 参考までに――
■英国の場合
  Ofcom(オフコム、Office of Communications、英国情報通信庁)は英国における電気通信・放送等の規律・監督を行う規制機関である。メディアの融合に伴い、情報通信産業の統合的な規律を目指すため、放送を担当する独立テレビジョン委員会(ITC) 、放送番組を規制する放送基準委員会(BSC)、通信の規制を担当する通信委員会(OFTEL)、民放ラジオ放送の免許を所管するラジオ委員会(RA) 、電波の周波数割当てを担当する無線通信局(RCA) の5つの規制機関を統合し、2003年12月に設置された。
http://www.ofcom.org.uk/
■米国の場合
 連邦通信委員会(れんぽうつうしんいいんかい、Federal Communications Commission、略称:FCC)はアメリカ合衆国の法令によって創設され、監督され、及び権限を与えられたアメリカ合衆国政府の独立機関(Independent agencies of the United States government)である。
http://www.fcc.gov/

 その後、民主党政権になり、原口総務大臣が「日本版FCC構想」なるものを発表した。電波利権に絡む重要なパラダイムシフトを企図したもので、原口総務大臣田中角栄を真似て新たな利権構造を狙っているのかとの勘ぐりを私はしてしまったのだが、この9月の民主党代表選を受けた第2次菅内閣総務大臣の任を解かれ、その構想の行方がどうなるのか、また、分からなくなった。