今月のダンサー:06年11月 森田真希さん

(C) Yusuke Masuda

今月のダンサー:森田真希さん



舞台で踊る森田真希(以下:森田)の際立った感性と存在感に魅せられるようになったのは批評活動を行うようになってからである。コンテンポラリーで踊る森田の姿を見るたびに、より広く認知をされるべきだと強く感じた。インタビューを申し込んでみたところ快く引き受けてくださり感謝の気持ちでいっぱいである。

年末にかけての公演スケジュールは以下の通りだ。是非足を運んでみて欲しい。

全くの偶然なのだが新書館発行ダンスマガジンのお友達リレーインタビューに、武石光嗣より森田へのコメントが載っている。11月27日発売のダンスマガジンには森田のインタビュー記事が載るそうだ

ダンス ノエル
キミホ ハルバート振付、「NUTELLA」に出演
2006年12月26日(火)
青山劇場

第21回 武蔵野 シティバレエ定期公演
中原麻里振付、「Fish Tail」に主演
2006年11月26日(日)15:00開演 
武蔵野市民文化会館
S席 4,000円 A席 3,000円 B席 1,000円

ラ ダンスコントラステ 第10回記念公演
「Les Souris 〜くるみ割り人形〜」
2006年11月14日(火) 15日(水) 19:00開演
青山円形劇場
前売り・当日とも全席指定 5,000円


Q1.森田さんはバレエの踊り手ですが、キラりと光る個性を感じることがあります。3月のキミホ・ハルバートさんの 作品ではキャラクターがひときわ目立っていました。踊り手として踊るときに何か心がけていることはありますか?


A. 振付家が何をどのように伝えたいのかを、リハーサルをしながら把握しようと心がけています。作者の頭の中や、心の中にあるものを掘り出すので、見付けられない時もありますが、そういう場合は話し合いをしたり、自分なりに振付家へのアプローチの仕方を毎回変えてみたりしています。去年3月のキミホ作品は、白雪姫が題材で、私は継母役でした。やはり、作品に物語りがあり、役柄が初めから存在すると、役作りはしやすいです。白雪姫をやった時には、映画版の白雪姫を観て、参考にしました。
私は生粋のプレイヤーなので、振付家の求めるものに近づける作業が楽しくて仕方がないんです。


Q2.バレエとの出会いはいかがでしたか?HPには子どもの頃のお写真もUPされていますが。


A.  バレエは3歳ぐらいに始めたんだと思います。
母(照屋真由子)がバレエダンサーで、その関係で始めたハズ!?ですが、私が通い始めたスタジオに、その頃は小さい子が少なくて、毎回泣いてばかりいました。当時習っていたお絵かきの教室が大好きで、バレエは1ヶ月で辞めるから!!とバレエの先生にも入所の時に宣言したのを覚えています。
とにかく、スキップ以外は全て見学していましたから。でも、家がスタジオの近所だった事もあって、大雪の日も、たった1人でレッスンやっていました。ただ、出掛けにしょっちゅうお腹痛くなってみたりもしてましたけど・・・。4年生でコンクールに出始め、私のHPにも無邪気な発表会の写真が出ていますが、何の迷いも無く、踊っていたんだと思います。あの頃の私に言わせれば、トゥシューズの履き過ぎで爪が痛いとか、それなりに苦労はあったんだと思いますが・・・


Q3.ロシアバレエインティチュートの一期生として学ばれたそうですね。その頃の逸話をお教えください。


A. はい。その当時、ボリショイのバレエ学校の先生に習えるという事で、画期的なバレエスクールだったと思います。
私は10歳で入所して、5年過程を終了しました。初めて週3回、電車に乗り1人でバレエに通う経験をしました。とにかくこの5年間は、反抗期の真っ最中でしたね。今振り返ると、何をそんなに反発していたのか分からない程、ひどいレッスン態度だったと思います。先生は3ヶ月置きぐらいに変わったのですが、1人の先生は私の事で悩み過ぎて、胃が痛いと泣いていらしたそうです。年に1回試験があって、当時日本では珍しく成績表をもらうのですが、嬉しい事に私は5年間オール5でした。授業態度はひどいのに、成績はクラストップなんて、なんとも扱い難い子供だったと思います。1990年にはボリショイのバレエ学校の日本公演に参加させていただきました。私はボリショイのスクールの校長先生の推薦で、コッペリアの中の人形の踊りを、ボリショイの生徒さんとダブルキャストで踊りました。12歳で上野の文化会館でソロを踊る機会に恵まれて、本当に幸せでしたね。今でもあの公演のプログラム、大事に持っています。


Q4. 後にベルギーなどで学ばれたようですがその時代はどのようなことを感じられましたか?


中学校を卒業してすぐ、15歳と1ヶ月でベルギーのアントワープバレエスクールに入学しました。最初はとにかく1人で生活する自由に浸り、大いに羽を伸ばしていたと思います。ベルギーには4年住んでいましたが、良い事、悪い事も含め、私という人間を創った、とても有意義な時間だったと思います。羽目を外した時もありましたが、人間関係や社会との関わり、クラスメイトとの仲間意識など、踊り以外の部分でも、15歳の私には心に響くものが多々ありました。


Q5. キミホ・ハルバートさんやラ・ダンス・コントラステなど現代バレエの振付家の作品で活動をされているようですが、若い皆さんと森田さんの間に共通する同時代的な意識はありますか?


A. 年代は特に関係無く、その人に共感出来れば、私はどんな方とも一緒にお仕事したいと思っています。ラ ダンス コントラステの振付家である、佐藤宏先生は、私の母と東京バレエ団時代の仲間で、私が母のお腹の中にいる頃から知っていると言われます。そんな私と今は、振付家とダンサーの間柄でいるのが、不思議な感じがするそうです。そして、キミホと私は姉妹みたいなもので、友人でもあり、振付家とダンサーでもあり、幼馴染みでもあり、という関係です。ベタベタとただ一緒にいるような間柄ではないけど、1番信頼しているし、頼りにもしています。だから当然、キミホ作品は踊っていて気持ちが良いですよね。信頼関係が無かったら、良い作品なんて出来る訳がないし、私達は振付家の言うなりに踊る、マシーンじゃないですからね。


Q6. UNIT SEEKなどの形式で森田さんご自身の創作も模索されているようですね。これまでの日々が花開くといいなと思い見守っていますが。どのようなことをかんがえていらっしゃいますか?


A. 2004年の夏に相棒の金田あゆ子とUNIT SEEKを立ち上げました。何もかもが初めての経験でしたが、自分達の力で公演を行った事は、私達にとって大きな進歩だったと思います。今までは振付家が欲しいものを提供する、いわゆる受け身の構えでしたが、何か自分の中から発信したいという想いが強くなり、その時に私と同じような想いを抱いていた金田あゆ子と、一緒にやろう!!と言う事になりました。1人ではきっと出来なかったと思います。1+1が2ではなく、3にも4にもなる瞬間を目の当たりにして、本当にそう感じました。
継続する事に意義があると考えているので、2007年秋に、また公演を企画しています。色々な方からアドヴァイスを頂き、多くのスタッフ、そしてお客様に守られながら、やりたい事をやりたいように舞台の上で出来るなんて、幸せな事だと思います。UNIT SEEKはまだ1回しか公演をしていないので、作風はまだ確立されていませんが、自分達のビジョンを明確に持ち、やりたい事を自分の中にしっかり持ち、それを形にしようと常に思っています。そして、責任を持ってお客様にお見せする。自分の想いがしっかりしていないと、お客様に伝わる訳がないと考えています。共感してもらおうとか、分かってもらおうなんて傲慢な思いはありませんが、観た方が、何かしらを感じ取って、小さな幸せに繋がったらいいなぁ・・・それが私達の喜びです。


Q7.その一方で地域との交流も考えていらっしゃるようですね。今度公演がある武蔵野シティバレエなどについて伺ってみたいです。


A. 武蔵野シティバレエの公演には、去年初めて参加させて頂きました。
ご縁があって、今年も出演するのですが、まず驚いた事は、武蔵野市がこのシティバレエにとても力を入れているという事です。
ダンサーに出費をさせず、チケットのノルマも無い状態で公演に出れるなんて、今の日本じゃそうそうない話しです。舞台でリハーサルが行えたり、去年の胡桃割り人形全幕では、オーケストラの演奏で踊る事が出来ました。お金を払って舞台に立つのではなく、ダンサーもスタッフもちゃんと保障されるような環境がもっと増えればいいなと思います。
これはUNIT SEEKでも目指している目標の一つです。


Q8. これからやってみたいことなどについてご自由にお話頂けると嬉しいです。


A. 基本的に欲が薄くて、今の環境を幸せだと感じているので、夢なんていう大層なものはありませんが、今、私のダンサー人生での柱となっているUNIT SEEKの活動と、来年3月に控えているUNIT KIMIHOの初自主公演を成功させるのが1番の目標です。自分のユニットは、再来年の年明けには音楽の方達とツアーのお話もありますし、ジャンルの違うアーティストと一緒に舞台を創ってみたいという想いがあります。ゆくゆくは、老人介護施設や病院などでも私達の踊りが出来たらいいなと考えています。UNIT KIMIHOは毎回素晴らしいダンサーと共演出来るのが、私にとっても良い勉強になります。キミホのアシスタントもしているので、大変だとは思いますが、どんな舞台が出来上がるのか、私もワクワクしています。多くのお客様に観て頂けたら嬉しいです。
これからも、UNIT SEEK、UNIT KIMIHO共に宜しくお願い致します。


森田真希 プロフィール:

森田 真希 (もりた まき)

http://www.maki-morita.com/profile.html より

3月22日 東京生まれ
4歳より松山バレエ学校にてバレエを始める。
外崎芳明、山崎敬子、清水哲太郎、森下洋子に師事。

1988年 ロシアバレエインスティテュート(旧ソビエトバレエインスティテュート)第1期生として入学。
普通科課程(5年間)を入学から卒業まで最高の成績にて卒業。

1990年 岸辺バレエスタジオ入所。岸辺光代、照屋真由子に師事。

1993年 ベルギー アントワープ私立バレエ学校に入学。
マリア・メチカローバ、ヤン・ヌィツッになどに師事。

1997年 帰国

1998年 新国立劇場登録ダンサーになる。

2004年 「UNIT SEEK」発起。


公式HP
森田真希 公式ウェブサイト
http://www.maki-morita.com/index.html