ポニョとアカシア


崖の上のポニョ」を観る。
昨年10月のベルリンスクール東京モジュールで
スタジオジブリ鈴木敏夫さんをお招きし
僕がインタビュアーとなってお話を伺った。
鈴木さんの物を見る目線、人との付き合い方、行動指針、
そして記者時代からの博識と好奇心などとても勉強になった。


あれから9ヶ月、ようやく完成した作品を
新宿の大スクリーンで楽しんだ。
小学生くらいから僕の年齢の大人まで客層の幅があり、
男性より女性の客が多かった。メインは30代か。
主役の宗介、ポニョをはじめキャラクターがいとおしい。
アニメーションの色、動き、言葉や音の使い方など
相変わらず素晴らしい。


コンピュータを使わないセル画のアニメーション。
鈴木プロデューサーをして「狂気の沙汰」と言わせていたけれど、
いざ画面に見入ってしまうとそうした技術を駆使したこと、
制作者たちの苦労などすっかり忘れた。
木戸銭を1,800円支払って、2時間音と映像に癒され憂さを忘れる。
それだけが客としての心得というものだろう。


物語は最後にもう一波乱あるかと思ったけれど、
案外あっけなく終わってしまった。
登場人物の謎解きもない。
悪役が出そうで出てこない。
客の予想を裏切るだけでなく、
自分で自分の予想を裏切るのが
この頃の宮崎作品の特徴であると僕は思う。
宮崎監督はきっと筋金入りのヘソ曲がりであるに違いない。


僕が座った席の前列の小学生が
ラストシーンで主題歌が流れると
身体をゆすって一緒に口ずさんでいた。
僕もそれに合わせて小さく口ずさむ。
こういう楽しさは家でDVDを観るのとはひと味違う。
こどもたちは大人にとってシュールな物語も
楽しみながら消化してしまう力と柔軟性を持っている。



ポップコーンをつまみながら映画を観たのも久しぶりだが、
久しぶりついでに映画を見終えて「アカシア」に寄った。
1963年からロールキャベツシチューが名物の洋食屋だ。
新宿で芝居や映画を観るときは
行き帰りによく「アカシア」で腹ごしらえをした。
デジタルカメラで写真を撮ると、
まるで映画のセットのように写っている。


ホワイトシチューにロールキャベツがふたつ(写真右上)。
茶碗ごはんとセットで780円。
昔に比べれば値上がりはしているが、
相変わらず良心的な値段だ。
大スクリーンの映画とアカシア、
夕方からこんな時間が過ごせる日はうれしいなぁ。


今週はお盆で帰省に伴い東京の人口が減る。
クルマの数も減るから昼間の青空がすがすがしい。
僕はこの期間、東京の時間を
できるだけ楽しむことに決めている。