いまどきめったに味わえない極辛書評である。
「週刊文春」匿名書評コラム「ブックエンド」の
1976年10月から1980年8月までの掲載分から選んだ二百余編である。
僕自身は<狐>の書評や、
辛口とは言え谷沢永一の「紙つぶて」の方が読後感がいい。
なぜ自分が気に入らぬ本をわざわざ選び斬りつけるのか、
インテリ特有の嫌みを感じる。
けれど、一歩下がって読書界を眺めれば
甘口の嘘八百、提灯記事の山である。
匿名として、また連載終了後は本名を明かし
文筆家としてのリスクを冒した本心の書評にはやはり一目置きたい。
自分は広告宣伝を身過ぎ世過ぎにしている。
広告と広告でないものの境目をぼかしたり
わざとあいまいにすることは姑息であると思う。
だから書評が仲間内や業界内の広告宣伝に成り下がるのなら
そんなものには一文の値打ちもない。
その点では僕は<風>を100%支持する立場である。
(文中敬称略)
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