地図帳と年表を脇に置く


史書、ノンフィクション、社会科学などの本を読むとき、
地図帳と年表を脇に置き、
頻繁に参照しながら読み進めるようになった。
これがとても具合がよろしい。



例えば中東情勢などを読んでいると、
国名、都市名などの位置関係が分からないとちんぷんかんぷんだ。
近頃「地政学」が大流行だが、
民族、政治、地理が混乱しているだけで
役に立たない書物、情報も多い。


地政学」の基本は地理である。地図である。
ウェゲナーが唱えた2億年前の超大陸パンゲアの時代はいざしらず、
大陸移動は100万年単位で起きている現象だ。
たかだかここ1,000年、2,000年の人類の歴史では、
地球の地理の変化は誤差に等しい。


なので、飛行機から人工衛星の時代になっても、
土地の高度を考慮した三次元の地理の知識は役立つ。
チェチェンアフガニスタンをいくら空爆しても、
戦争に勝てないのは2,000メートル級の山岳地帯だからだ。
山は空からは攻めきれない。



ポーランドは10世紀に国家として認知され、
18世紀には4回に渡って隣国に侵略され分割され消滅した。
第二次世界大戦後は
ナチスドイツ、ソビエト連邦に侵略分割され消滅した。
国家主権を復活したのは1952年だ。


ポーランド語の国名「ポルスカ」は
野原を意味する「ポーレ」が語源だ。
ポーランドには1,000メートル以上の高地がほぼ存在しないことは
地図を見れば一目瞭然だ。
守るに守りがたく、攻めるに攻めやすい地理であることが、
5回の国家消滅の主要原因のひとつだったのが理解できる。



中学、高校の頃は地理、歴史は
勉強しても勉強しがいのない科目に思えた。
全体像を把握するのが難しいし、
なにをどこまで勉強すれば一応の目安になるのか分かりづらかった。
英語、数学、国語の方がよっぽど勉強しがいがあり、
達成感があった。


シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 ((文春新書))

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社会人として組織の人間関係、政治力学など仕事の混沌を経験すると、
歴史、社会科学の分野はとても面白く、生々しくなった。
地図帳と年表を手にすることで、
そうした知識がより確実になるのがうれしい。
地図は空間、年表は時間。
空間と時間を見晴らせば、知の風景は開けると知った。