関口存男『冠詞(全3巻)』(1960-62、三修社)


元日の夜、新年を期して注文したお宝が届いてしまった!
関口存男『冠詞—意味形態的背景より見たるドイツ語冠詞の研究』(全3巻)
(1960-62、三修社)を手に取り頁を繰ってみる。
内容も値段も僕にとっては高値の花だから
存在は知っていたけれど自分の守備範囲を大きく超えていると思っていた。



年末年始休み、恒例の勉強部屋・本の整理をしていたとき、
倉田卓次『続々裁判官の書斎』に
この本が取り上げられていることに初めて気づいた。
倉田が一級の書評家であることは分かっているが、
まさかこの本を紹介していたとは。
意表を突かれた。



整理の手を休めて12頁の書評を読んだ。
(実はこうした時間が本を整理する最高のお楽しみ)。
倉田の書評は常にハイレベルで密度が濃く、
気楽には読めない。
精読する。


やはり通りいっぺんの紹介ではなかった。
この著書の核心のひとつ「単回遂行相(たんかいすいこうそう)」を
図解入りで懇切丁寧に解説している。
もちろん学術書だから簡単なはずはないが、
なんと!面白いじゃないか!



倉田の〆の文章はこうだ。


  注文しても絶版かも知れないし、高価でもあるから、
  若い諸君に「買え」と言う気はないが、
  ことばに、日本語に、興味を持つ向きには
  「ドイツ文法書と敬遠せず、一度図書館で手に取って、
  私の要約した部分だけでも原文で読んでご覧」と勧めたい。
       (『続々裁判官の書斎』pp.72-73より引用)


僕がよく見ているサイト「日本の古書店」
復刻版でなく初版が相場の1/3で一組出ているのを見つけた。
相場の1/3でも買えない。
買うなら貯金を下ろさなくてはいけない。
せっかくこの2年間、質素に暮らして
その生活にもリズムができてきたのに。



でも不思議なもので、
12月に受けた大腸ポリープ切除手術の給付金が年末に振り込まれた。
お付き合いの長い担当Aさんが書類を用意して
手続きを迅速に進めてくれたおかげだ。
この給付金から病院に支払ったお金を差し引くと、
送料分がこぼれるくらいで、
関口先生の遺著となった三巻本が手に入る。



公立図書館で読もうにも
僕が登録している都内5区では所蔵しておらず、
国立国会図書館で閲覧するのが精一杯。
それでも仕方ないと思っていた。


そうだ!このお金を使おうと決めたのだ。
「特別出費」であることは変わらないけれど、
入る予定のなかったお金の使い方としては
かなりかっこいいんじゃないか(…と自分を説得した)。



我が家の勉強部屋に語学、言語哲学の先達、
斎藤秀三郎関口存男両先生の最後の著書が並んでいる。
もちろん所蔵するだけでなく、
時間を見つけて読んでますよ!
(僕が死ぬ前にはどこか図書館にでも寄贈しないと
もったいないですね)


ところで日本語書名は難解だが、
原題は"DER ARTIKEL VON TSUGIO SEKIGUCHI"。
「ザ・冠詞」。
超シンプルなんです。


ことばの哲学 関口存男のこと

ことばの哲学 関口存男のこと

関口存男の生涯と業績 POD版

関口存男の生涯と業績 POD版

wikipedia:関口存男
wikipedia:斎藤秀三郎


(文中一部敬称略)