菅野仁『友だち幻想』(ちくまプリマー新書、2008)


通勤で使っている私鉄K線の額面広告で見かけて
なんとなく気になっていた。
腰巻きにはこうある。


   9年前に書かれた本がいま話題に
   朝日新聞2017.6.6「文化・文芸」で紹介 
   大反響


友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)


菅野仁(かんの ひとし)
『友だち幻想—人と人の<つながり>を考える』
ちくまプリマー新書、2008)を読む。


こんな一節が印象に残った。


   大人になるためにかならず必要なことなのだけれど、
   学校では教えてくれないことが二つあります。


   一つは、先に述べた
   「気の合わない人間とも並存しなければならない」
   ということと、そのための作法です。
   もう一つ教えないことは何かというと、
   「君にはこういう限界がある」ということです。


   そもそも人間が生きているかぎり、
   多かれ少なかれ限界や挫折(ざせつ)というものは
   必ずやってくるものです。


   それを乗り越えるための心構えを
   少しずつ養っておく必要があるのですが、
   いまの学校では、「君たちには無限の可能性がある」
   というようなメッセージばかりが強くて、
   「人には誰でも限界がある」
   「いくら頑張ってもダメなことだってある」」
   ということまでは、教えてくれません。
                     (pp.115-116)


本当にそうだなぁ、と大人になった今、しみじみ思う。
若い読者がこの本を読んで、
今より少し楽に生きられるといいんだがなぁ、
と元・若い読者は願う。


菅野は2006年より宮城教育大学教育学部教授。
16年より同大学副学長(学務担当)兼任。
専攻は社会学社会学思想史・コミュニケーション論・地域社会論)。
2016年、没。
いい本を残してくれたと思う。