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来し方行く末

2018-06-15 大沼由紀 パセオフラメンコソロライヴVol.91

「グルーヴと確信」!
つい最近、ガルロチで視たマエストロ・カナーレスに爆発的に漲っていたものが、大沼由紀さんにもがっつり宿っていた。

小手先とか技術とか美とか、そういったものはもう求めてはいない。自らが掴んだ自分にしか見えないものだけを求めていた、あの目。
ごくシンプルなのに獰猛な気配を感じさせ、それでいてコンパスは的確に繰り出され、音楽を巻き込みながら創り上げて行く。いやがおうにも内臓の底からドクドクと昂揚していく。大沼さんがかつて体現していたジャズと舞踏の底深い昏さの何と魅惑的なことか。

アレグリアスなのに狂気に近い怖さを感じる。予測のつかないスリル。けれど大沼さん自身は澄んだ目でまっすぐに掴むべきものを捉えていたはずだ。私たちには視えなくとも、そこに「確信」が予感できるゆえに、私たちは引き込まれていく。
何を目指したらいいのか、大沼さんが迷走しながらも挑戦を繰り返していた時期があった。そこを諦めずに抜けた者しか持ち得ないひとつの到達の強さと眩しさがあった。

パセオフラメンコライヴVol.91
大沼由紀 ソロライヴ
2018年6月14日(木)
高円寺エスペランサ
大沼由紀(バイレ)
クーロ・デ・ラ・チクエラ(カンテ)
西容子(カンテ)
山内裕之(ギター)
伊集院史朗(パルマ

2018-05-31 浅草橋スペインバル『ラ・バリーカ』リニューアル・オープン

本格スペイン・バルとして定評のある「ラ・バリーカ」が、美味しさはそのままに、タブラオとして生まれ変わりました。 

そのこけら落としライヴが、5月27日、開催されました。バイレに屋良有子さん、佐藤哲平さん、タマラさん、加藤明日香さん、ギターに栗原武啓さん、カンテに瀧本正信さん、クーロ・ヴァルデペーニャさん、ヴァイオリンに三木重人さんという豪華な顔ぶれが揃い、熱く盛り上がりました。

これまでもレストラン・スペースを利用してライヴは行われていましたが、もっとフラメンコを楽しむ場にしたいという願いから改装に踏み切り、ステージを常設しました。そして照明、音響にもこだわった、クラシックな雰囲気の親しみやすいタブラオ空間が実現。地下で行われるライヴの様子は、1階のモニターにも映し出され、食事しながらリアルタイムでショーを楽しめるようになっています。また歩道にもモニター画面が向けられ、道行く人たちにもフラメンコショーに気付いてもらえる仕掛けになっていて、フラメンコを広めたい!という想いが伝わります。
 
「ラ・バリーカ」管理人さんが、会場の笑いを取りながらも、熱い挨拶をされました。
フラメンコにはまる人って、フラメンコ1本で頑張る人、人生の大半の時間を費やし、お金を費やし、それでもフラメンコをもっと上手になりたい、と、すごく頑張っている方ばかりで、そこに惹かれています。そういった中で、私も何かフラメンコに協力できないだろうか、という想いで、この『ラ・バリーカ』に新しいステージを作りました。
どういうタブラオにしていきたいかをいつも皆と考えていますが、ひとつのキーワードとして「踊り手にやさしいタブラオ」にしよう、と。ライヴを主催する立場の踊り手さんは、集客のみならず、会場を取らなきゃならない、カンテやギターの方たちのギャラも考えなくてはならない、と、すごく大変。そんな踊り手の方たちに喜んでもらえるような場を創りたいのです。
それからもうひとつ、これまでタブラオは、中央線沿線や高田馬場など西側には多いけれど、東側には少なかったので、ここ『ラ・バリーカ』が“東の拠点”となって、フラメンコ界を広げ、支えていきたい。どうか新生ラ・バリーカをよろしくお願いします」

コーディネーターの深沢美生さんは「私が踊り始めた頃は、研究生が発表する場が無かったので、若い人たちに場をどんどん提供していきたい。そして若手もの方もプロの方も、垣根無く、みんなでいろんなことをやっていきたいのです。踊りだけではなく、音楽や文化も、ここから“スペイン”がもっと広まればいいですね」と笑顔で語られました。

今後もライヴを増やしていく予定なので、気軽にお問合せを。
“東”からフラメンコの新しい風が吹いて来たことを感じます。

JR浅草橋駅東口徒歩2分
定休日:無し
電話03−5809−1699

2018-05-25

川島桂子 パセオフラメンコカンテソロライヴVol.90

つくり込んだものがない、余計なものが何もない、というのはこんなにも快い。
川島桂子さんのカンテとエンリケ坂井さんのギター、
それぞれに熟成されたものが高純度でブレンドされ、
とろりと流れるように響いてくるフラメンコは薫り高く、品格があった。
それはとても深いのにまったく重くなく身体に沁み透ってきた。

来日中の78歳になるペリーコ氏の姿もあった。
フラメンコのレジェンドが見守る、暖かく、
そして心地よく引き締まった超満席の空間で、
古き良き時代のフラメンコはまさしく源泉のごとく瑞々しく生きていた。
これがフラメンコ生命力なんだ。

川島さんがまだ初心者で、曲種もわからなかった頃、
ペリーコのアンソロジー』を何度も聴いたという。
そして川島さんはこの夜、その大切にしている曲集から「マリアーナ」を歌った。
いつまでも揺られていたい柔らかな独特のメロディが耳に残る。
エンリケさんは、ギターソロをペリーコ氏に捧げた。
舞台上のお二人にとっても、特別な夜だった。

川島さんの湿度を帯びた艶やかな美声は、
より伸びやかさを増していて、何か肝の据わった開き直りを感じさせた。
それは、葛藤を抱えながら迷いながら、ただ続けていけばいい、
いつか必ずわかる時が来るから、と力づけてくれる声。


懐かしさと新鮮さ、熟成から生まれる新たな始まり。
ひとつのエポックとなる灯火を感じた。
作家で深いアフィシオナードの鳴神響一さんもいらしていた。
濃厚なフラメンコの印象深い一夜だった。

パセオフラメンコライヴVol.90
川島桂子 カンテソロライヴ
2018年5月24日
高円寺エスペランサ
川島桂子(カンテ)
エンリケ坂井(ギター)

2018-05-21 平野啓一郎「ある男」

平野啓一郎「ある男」読了(文學界6月号)。

愛する人の過去を知った後も愛し続けられるだろうか。

法律」「倫理」「差別」。
そういった重い問題に自在に言及しつつ、ある人物の生を辿り、思想を浮き彫りにしていく手法は、前作の『マチネの終わりに』同様、鮮やかだが、特異な事件性を孕みながらも登場人物はより身近でリアリティがあり、一気に読めた。

「わかったってところから、また愛し直すんじゃないですか」
というセリフが軽やかで、深い。

愛は、変化するからこそ、持続できる、という想いは救いだ。負い目も後悔もあるけれど、それらを通過して尚、“今”に存在する想いを見定め、誰よりも自分自身が信じること。そこから、という希望が持てる。

2018-05-18

フィッシャー=ディースカウの命日

今日5月18日は、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの命日。
そして同じ5月の27日は、この名歌手と親交のあった
吉田秀和さんの命日であることも想い出す。
2012年から6年。
良い機会、と、吉田秀和さん著書の言葉を改めて眺める。
ラインを引き、繰り返し読んだ言葉。

「すべての審美感は、本来、一定の個性を持った体験の蓄積の結果でなければならない。その審美感は、もちろん、体験が殖え、深まることによって、変化はするだろうし、変わるのが当然である。しかし、それには、すでに何かの土台がなければ、変わりようもないし、深まりようもない。その土台を、個人なり、その個人の属する集団の審美感の伝統と名づけるならば、そういう意味で、芸術の判断は、すべて特殊的でなければならない。」
(『ソロモンの歌 一本の木』 から引用)

自分の言葉を発していい、と力づけられて来た。
そして、それを発するためには? 
ここが大事と、自分に言い聞かせる。

https://www.youtube.com/watch?v=dKdiPutcGM4

https://www.youtube.com/watch?v=yCAPqO8U73U