『明日また君の家へ』がものすごく刺さった。

しばらく放置していたダイアリーに、だらだらとめんどくさい話を書き始めたことからお分かりだとは思いますが、もう近年稀に見る大ヒット。


悲しくて切なくて、読んでると精神的にきつくて、気分も沈んでしまうような物語が好き。
心をかき乱されてつらいし、泣き疲れてきついし、読後の苦しさがずっと後を引いて何も手につかなくなる。決して快かったり元気になったりなんかしなくて、むしろその逆なのに、その感覚をなぜか求めてしまって、何度も読み返したくなる。そんな作品がたまらなく好き。

けど、そういう作品ってなかなかないんですよね。単なる悲しい話、暗い話じゃあダメなんです。そういうのだと気分が沈むだけで、もう嫌!ってなる。
また、凹まされてそれがいい感じになってきても、エンディングが綺麗にまとまりすぎだとまたダメで。爽やかな後味で、かき乱された感情が整えられて、そこで満足しちゃって後が続かない。

なんかこうやって書いてると、すごいめんどくさい奴に思えてくるけど、まあ実際そうなのかもしれない。


で、この『明日また君の家へ』ですが。
何気なく手にした本で、全くの不意打ちだったのだけど、読む前と読んだあとでは何かこう、すべてが変わってしまった気がする。
ここ数日はもう、かき乱されて凹んだ感情をどうすることも出来なくて。
読み返すか、こうして思いの丈を吐き出すか、また読み返すか、余韻に浸って何も手につかない時間を過ごすかしか出来なくて。
つらいのに繰り返したい。気分が沈んで立ち直れなくなりそうな、恐怖にも似た感覚に襲われるのに、そこから抜け出したくなくなる。
こんな風になる作品は、これまで数えるほどしか知らない。


短編3本と中編1本で綴られたこの本。
前2本の"Skew Lines"、"again"でまずぎゅうっと胸が締め付けられて、ああこの切なさがなんかいいなあ、と。
綺麗に終わらなくて、ほろ苦い。
悲しいのに心の奥が少し、暖かくなる、そんな一見矛盾した感覚が心地いい。

そして3本目の"よりみち"。このお話はほんわかできて優しい気持ちに。
悲しかったのが癒されるようで、なんだかいい気分だな〜っと。

そうして粒ぞろいの短編にいろんな思いを想起されて、中編"Virtual"に突入するわけです。
扉のキャプションに少し、不穏なものを感じながらも読み進めていく。
はじめは、微笑ましい幼馴染のじゃれあいで、なんだか嬉しくなってくる。けれどそこかしこに差し込まれるモノローグに不安を覚えつつ、進んでいくと、1話め(.25)の結びで「えっ」と。
そこからはもう一直線。巧みに編みこまれる回想で明かされていく一つの嘘と、それによって危うさを秘めながら形作られていく現在。一見幸せそうなのに、実は痛いくらいに切なくて、ページを進めるたび恐れが募っていく。
そして、膨らみきった嘘が、弾ける。

もう、泣くしかなかった。


そして訪れる束の間の安息と、畳み掛けるように突きつけられるもう一つの現実、もしくは、ボタンの掛け違え。


安易な救いなどなくて。



エピローグを迎えても、この心は深く作品世界に囚われたまま。

くろば・U先生の持ち味なのか、高密度に折りたたまれた内容が画面に込められてるように思う。何度読み返しても、瑞々しさが失われない。
そんなだからまた、何度でも繰り返す。
そうしてまた泣いて、凹んで、より深く囚われていく。

もう、抜け出せやしない。