ボズ・バレル、ブルース好きがばれる

ポール・ロジャース華麗なる一族については
http://d.hatena.ne.jp/yunioshi/20060814


Yuuuko様より誤りをご指摘いただきました。
公式ページに新しい奥様との写真が載っています。
http://www.paulrodgers.com/


若いきれいな奥様ですね。お幸せに。
Yuuuko様情報ありがとうございました!
マチさんもめげずに頑張ってください。


クイーン&ポール・ロジャースの成功に加え、ソロツアーも好調のようですね。
というわけで幸せ絶頂のようですがバッド・カンパニー(以下バドカン)はオリジナルメンバーで再結成しないのかな?
と思っていたら、ベースのボズ・バレルは一年前に60歳で亡くなっていたのでしたね(そういえば新聞に載っていた)。
残念です。


ボズ・バレルはブリティッシュロックの中でも少し変わった存在のような気がする。
彼がロックシーンで最初に注目を浴びたのはキング・クリムゾンである。
あのプログレッシブロックバンドの中でも技巧を極めたあのバンドで、彼はボーカルとベースを務めた。


しかし、彼はそもそもクリムゾンにボーカリストとして採用されたのである。
(このオーディションではあのブライアン・フェリーが落ちている!)
透き通った歌声はグレッグ・レイクの後釜として十分な実力だったが、ベーシストが見つからないという理由から、全くベースの経験が無かったのにもかかわらずクリムゾンのリーダー、ギタリストのロバート・フリップからベースのレッスンを受けてマスターし、その後はベーシストとして活躍することになった。
要するにバンドに入ってから楽器をマスターした、こういう人はあまりいないと思う。
しかもクリムゾン脱退後に結成したバドカンではベースに徹しバックコーラスしかやっていない。
リードボーカルの曲が一曲くらいあってもよさそうなもんで何だかもったいない!と思うのは僕だけだろうか?


(『アイランド』 ボズはすぐやめちゃったのでキン・クリでのオリジナルアルバムは2枚しかない。
ベースの腕はさすがに褒められないが、逆に味があって結構好きなんですけど。)
アイランド (紙ジャケット仕様)


(バド・カンのデビュー作にして最大のヒットアルバム。)
バッド・カンパニー


もともとリズム&ブルースにルーツを持っていた彼がクリムゾンに馴染めなかったのはよくわかるが、ベースを教えてもらったフリップには死ぬまでいいイメージを持たず、仲直りもしなかったらしい。
何故ならクリムゾンに入った時、こんな感じだったのだと思う。


フリップ「バレル君!合格おめでとう」
ボズ「あの、ボズって、呼んでください」
フリップ「…ボズ君。君にはベースもやってもらうことになった」
ボズ「ええ!?そんなの聞いてないですよ。俺、楽器やったことないんだから無理ですよお」
フリップ「この我輩がマンツーマンで教えるから、我輩のプログラムに沿ってやればマスターできるはずだ」
ボズ「だって、ツアー開始までもう3ヶ月しかないって言ってたじゃないですか」
フリップ「左様。だからその3ヶ月間の特別集中講座を組んだ。明日から始める。やりたまえ」
ボズ「そんな、強引な!」
ボズ、フリップの出した時間割を見る。
ボズ「一時間目、音楽史?」
フリップ「我輩が目指す音楽のルーツをたどれば、ギリシア時代に行き当たる。それからルネッサンスを経て、バロック、バッハ…」
ボズ「(辟易して)二時間目、音楽理論?」
フリップ「音楽史でわかるとおり、音楽は偉大な先人たちによる様々な音楽理論から成立しておる。例えば現代音楽でいう”無調”だが…」
ボズ「(無視して)三時間目、プログレ概論?」
フリップ「我輩の考えるプログレッシブロックのあるべき姿についての講義である。おそらく…理想の達成まではあと30年くらいはかかると思うが…」
ボズ「で。実技ベース。ここで演奏ですか?」
フリップ「まあ、一日6時間くらいは覚悟したまえ」
ボズ「6時間!指が擦り切れちゃうよお」
フリップ「我輩の芸術を達成するためには、精進は欠かせない!我輩は今でも8時間はギターを放さんぞ!いわんや初心者をや」
ボズ「あのフリップさん、フリップさん」
フリップ「失敬な、先生と呼びたまえ!」
ボズ「…フリップ先生、この最後の”道徳”って何ですか?」
フリップ「”われわれ人々は眠りの状態にある。その事に目覚めて一人一人が修練することによって人間は自由に、そして絶対的なものになり得るのだ”…」
ボズ「あの、先生、何をおっしゃってるのかさっぱり分からないんですが?」
フリップ「よろしい、これも3ヶ月でみっちり伝授してあげよう」
ボズ「やっぱりやめようかなあ…何だか宗教ぽいし、演奏に自信ないし」
フリップ「君はボーカルとベース二役なので2倍のギャラをあげよう」
ボズ「今日からやりましょう!…これはテキストですか?
(本を取り上げて)え〜と、
『君にも”21世紀の精神異常者”が弾ける!ゼロから始めるベース入門』
プログレッシブ・ロックは恐くない。難解音楽を解く鍵』
『変則チューニングが人生を変えた』
『雑学グルジェフ 99の謎
『人を動かす上司の言葉 プロ・ミュージシャン編』
…」
フリップ「それと『ブルースが音楽を退化させる ザ・検証:ブルースの罪』だ」
ボズ「(カチン)…ブルースの罪って」
フリップ「ボズ君。いいかね。我がキン・クリではブルースのような低俗で幼稚な音楽はやらない。肝に銘じておきたまえよ。それから、今日からこれを付けなさい」
ボズ「何ですかこのバネみたいなのは」
フリップ「我輩が考案した”プログレッシブロックベーシスト養成ギプス”だ。これを3ヶ月間24時間装着すること。これをはずすことができた時、それは君がベーシストとして旅立つ時だ!よろしいかな」
ボズ「……」


というわけで血と汗と涙の3ヶ月の修行が始まった。
そしてボズはベースをすっかりマスターしたのであった。
しかし、ライブではフリップ先生を無視してついブルースを弾いてしまい、フリップ先生に破門させられてしまったのだった。
(以上、またひとつも本当のことを書いてないぞ。ベースを教わった事実と破門になったいきさつだけ本当だが。とにかく知っている人だけ笑ってくだされ。)


ボズには失礼かもしれないが「歌手」では大成しなかっただろう。
ベースができるようになったからバドカンで活躍できた。


でも、恩師にあたるフリップ先生とは死ぬまで会おうとしなかったらしい。
よほどのことがあったんでしょうね。
改めてご冥福をお祈りします。


参考書1『グルジェフ 注目すべき人々との出会い』
注目すべき人々との出会い
この本を一回読んで理解できる人がいたらそれは天才。


参考書2ロバート・フリップ―キング・クリムゾンからギター・クラフトまで (宝島COLLECTION)