P2Pネットワーク実験協議会シンポジウムに参加した感想

http://www.fmmc.or.jp/P2P/pub/sympo/info.html

うちの大学のうちの校舎でP2P関係のシンポジウムがあったので参加してきた。印象に残ったものをいくつか紹介。

参加した理由

ガイドラインの策定をやっているE教授の研究室志望で、ちょうど今P2Pの勉強とかしていたからタイムリーかなと思って。技術よりも、ガイドラインやビジネスの動向について扱うシンポジウムだったので、今のP2P業界の雰囲気を把握するのに良いかなと。
研究者や事業者やマスメディアが主体のイベントで定員もあったから少し萎縮したけど、思い切って申し込んでみた。

開会前

会場前で座ってコード書いていたらE教授から「おまえこれ出んの?」と聞かれて冷や汗。すいません><
ちなみに僕がこのイベントを知ったのは協議会会長のA教授が講義の最後で宣伝していたからです。
行ってみるとE研の先輩方がいらっしゃって、シンポジウムの重鎮の方々と名刺交換したりお話したりしてた。すげー。

午前の部

P2P技術方式概観 - 西谷智広氏(NTTコム)

基礎的なP2Pの仕組みについて。P2P教科書に書いてあったことまんまだったので理解できた。

P2P技術による効果 - 首藤一幸氏(ウタゴエ)

P2Pには「かき集め」と「ばら撒き」の2種類がある、という捉え方がわかりやすかった。P2P技術を用いればMax90%近い帯域削減ができるらしい。

午後の部

P2Pを利用したサービス/ソフトウェアに関するガイドラインの策定について - 江崎教授

ガイドラインの策定のお話。事業者配信型と利用者配信型の2タイプを想定している。P2Pのソフトウェアを作るときはこのガイドラインに従いましょうと。

ネットワークの効率的利用に向けた実験の検証について - 山下達也氏(NTTコム)

地域IXの復権という考え方はおもしろいと思った。

映画祭作品の配信(BitTorrent方式) - 室川豪氏(BitTorrent)

作品に人気が無くて十分なデータが得られなかったらしい。ネットワーク上に生きているPeerが1つでもいればオリジンの帯域は40%も削減される。

全体の感想

特に午後の部はP2P企業の自社技術紹介や実証実験結果の報告がメインだった。

それってP2P

P2Pって聞くとWinnyのような非構造オーバーレイネットワークでユーザ同士が対等にファイルを交換しあうというイメージがあるせいかもしれないが、紹介されていたP2P技術が本当にP2Pなのかと違和感を感じてしまった。
紹介された大半の技術は、映像をマルチキャストするためにツリー型の構造化オーバーレイネットワークで上から垂れ流すようなもの。結局はサーバ・クライアントの関係は変わらないで、中継ノードの一部をクライアントにしただけだろっていうもの(それでも凄いのかもしれないが)。中にはそれサーバサイドでの負荷分散とかクラスタかとかミラーサーバと何が違うの?っていうものもあった。
ツリー構造化した時点でP2Pの「対等なものが通信する」っていう概念が崩れるだろうから、もう「映像をマルチキャストするためのツリー型構造化オーバーレイネットワーク技術」で別にやったほうがいいんじゃないか?

誰が得するの?

まず「誰」というのには、大きくわけて

  • 配信事業者(コンテンツや配信用のサーバ、回線を用意する)
  • ISP(ネットワークインフラを提供する)
  • クライアント(配信されたコンテンツを消費する)

の3者が存在する。各社の発表内容をまとめてみると

  1. 構造化オーバーレイネットワークでクライアント同士でデータのやりとりをしてくれたら、サーバの負荷や帯域資源の消費が減る(40%程度らしい)ので、配信事業者は嬉しいが、別にネットワーク全体でのトラフィック量が減る訳ではないのでISPは得をしない。むしろメタデータのやりとりで数%トラフィックが増える。
  2. 同一ネットーワーク内でデータのやりとりができればIXの通過量や基幹ネットワークの帯域消費が抑えられるのでISPは嬉しい。
  3. ユーザはコンテンツが受け取れている限りは別に得も損もしない。得するとしても多少速度が速くなるかもしれないぐらい(充分得と言える場合もある。)。

つまり全員が得をするには同一ネットワーク内でクライアント同士でデータをやりとりさせなければならない。当たり前か。
まぁ現時点ではユーザにとってあまり関係の無い話。むしろ同じ動画配信を受けるにしてもいろいろなプロトコルがあって、それ用のクライアントをいちいちインストールしなくてはいけないので面倒な話。今のところ統一するなどの話はでていないとのこと。

ガイドラインと研究・技術開発

東工大(?)の教授が質疑応答で、ガイドラインを作ることによってソフトウェアの研究・技術開発を縛ることになるからけしからん!と仰っていた。多分Winnyとかを意識していらっしゃるんだろうか?江崎教授が受け答えていらっしゃったが、多少はぐらかした感じの答えだったので僕には良く分からなかった。やはり答えづらいのだろうか。
ガイドライン自体は協議会に属する事業者がP2Pでビジネスをするときのお作法を定めたものなので、おそらく研究開発には関係ないし、破ったからといって刑事罰を受けるものじゃないので、まぁ場違いな質問だなと思った。

閉幕後

29日の情報共有研究会でも講演される首藤さんにご挨拶させていただいた。名もない学生なのに優しく接していただけて高感度↑。発表内容からも能力・カリスマ性のある人だなと思った。

お知り合いの参加者

技術フェチ日記(首藤さんのダイアリー)
簡単なまとめと写真が載っているので、こちらもご覧いただければ。ちなみに僕も少し写っている><

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mootohさんも同じような感想を持たれたようだ。