2011-04-24 好きなTVアニメ作品
■[アニメ]好きなTVアニメ作品(暫定版)

とりあえず暫定的に列挙しておきます。劇場作品やOVA、ネット配信のみは除いてます。
アニメンタリー決断
装甲機兵ボトムズ
THE ビッグオー
マシンロボぶっちぎりバトルハッカーズ
超魔術合体ロボ ギンガイザー
ブロッカー軍団IV マシーンブラスター
超攻速ガルビオン
SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors
ゾイド
ゾイド新世紀/ゼロ
タイムパトロール隊オタスケマン
ダーティーペア
創世のアクエリオン
わたしのあしながおじさん
GU-GU-ガンモ
ホワッツマイケル
探偵オペラ ミルキィホームズ
北斗の拳2
ハイスクール!奇面組
きんぎょ注意報
まだまだ思い起こして好きだったが出てくるはずなんでw
2010-12-14 一応の
■[ガンダム]SEEDの影忍 黎明の章

SEEDの影忍 黎明の章
C.E.七一年夏。地球圏全域で繰り広げられた戦乱は、新たなる局面を迎えていた。即ち、ナチュラルでも自在に操れるMSが本格的に配備および圧倒的な人的、工業的国力を背景にした物量を背景に、連合の全面的な反攻が開始されたのである。これによってザフトはついに地球からの撤退を余儀なくされたのだった。
さらに追い討ちをかけたのは、連合側がNJC(ニュートロン・ジャマー・キャンセラー)の技術を獲得した事である。これにより、連合側は再び圧倒的な核の力をその手にしたのだった。
常識的に考えればこの力を誇示する事で、ザフトに対し優位な条件での講和交渉も可能であったであろう。事実連合内部でも穏健派からはそのような声が出ていた。しかしそれを良しとしなかったのは、連合内部で権力を握っていたコーディネーターの絶滅を叫ぶ最過激派ブルーコスモス、そして名も無き多くの民草であった。
乱世以前ではコーディネーターに対して何の感情も抱いていなかった無辜の民草たちであったが、彼らは見ず知らずのコーディネーターによるNJ散布により生活基盤、そして多くの肉親、家族、友人、隣人を奪われていた。そのため民草の多くはコーディネーターの殲滅を訴えるブルーコスモスの主張に共感、支持を送り、核攻撃でさえ容認しようとしていたのだ。
対するプラント側もまた徹底抗戦の構えを崩していなかった。プラント側の穏健派代表のシーゲル・クラインは歌姫と謳われた愛娘ラクス・クラインの軽はずみな行動、すなわちNJC搭載の機密兵器フリーダムを敵対勢力に手渡した事を理由に粛清されており、プラント側の穏健派勢力は地下に潜らざるを得なくなっていたのだ。
その為、プラントもまた民衆の支持を得た最過激派のザラ議長を押しとどめる事は無く、巨大なγ線レーザー砲台ジェネシスの使用さえ容認していた。彼らもまた長年に渡るナチュラルによる差別、そして血のバレンタインの核攻撃の事を忘れていなかったのだ。そう、彼らもまた自らの生存の為にナチュラルを殲滅する事さえ容認する空気に支配されていたのである。
世界は互いの生存さえ許さぬ、史上最悪の殲滅戦へと舵を向けようとしていたのだ。
無論、そのような愚行を止めんとする者たちもいた。両陣営の穏健派並びにその間を取り持ったマルキオ師、そして一部のジャンク屋組織である。
なお、ラクス・クライン一派が連合、プラントの穏健派を統合しようと動いていたが、どの勢力も強大な戦力を持ちながらも場当たり的な行動の多い彼女を信用することが出来ず、特に旧クライン派の一部は自派没落の元凶である彼女を決して許そうとはしなかった。
この時期流布していたと言う話にこのようなものがある。ラクスが旧クライン派の実力者の一人と会談を行ったのだと言う。彼はラクスに対し、
「ようやくお父上の後を継がれる決心をされたのですか?」
と、皮肉を告げたというが、それに対し彼女は何ら動じることなく
「はい、その通りです」
と、答えたのだという。彼はラクスの厚顔無恥さに怒りを通り越して呆れ果て、協力を約束したというのだ。これなどはかなり悪質な話であったが、このような話が産み出され、また信じられてしまっていた事にラクス一派に対する不信感を汲み取る事ができるであろう。
それはさておき、両側の穏健派はジャンク屋組織を仲介に連絡を取り合ってはいたものの、最終局面に到るまでついに各組織は共同歩調を取る事はできなかったのだ。
しかし彼らのような勢力に隠れながらも、マルキオ師の依頼でこの破滅を食い止めるべく動いていた有力集団があった。それが歴史の闇に生きる忍たちである。
とある山奥の庵。ヤキン・ドゥーエにおいて人類の命運を決する一大決戦が開始されようとしていたその頃、ガリョウはある人物に呼ばれこの庵を訪れていた。庵の主はドウハン。忍の者たちに絶大な影響力を持つ古老であった。
「ガリョウよ。此度の大戦に備え、使いとしての勤めご苦労であった」
庵の外では俗世の人の喧騒など何処吹く風と、けたたましく蝉たちがその音を競い合っていた。
「私ごときにもったいなきお言葉。しかし……」
「汝も向かいたい、と申すのじゃな」
「はい」
某国の一件の後、ガリョウはマルキオの依頼を受けたドウハンの使いとして、地球各地の忍たちを説き伏せるべく駆けまわっていたのだった。ドウハンの依頼とあって応じる者たちは多く、その者たちは宇宙へと上がり穏健派への協力や、両過激派勢力への妨害工作などにすでに従事していた。しかし、肝心のガリョウは未だ地球に残ったまま。これでは宇宙に上がった同志達に申し訳が立たないというわけである。
「同志たちと共に刀を並べるのが道理というもの。何卒お許し願いたい……」
「ふむ」
一時の沈黙が二人の間を支配した。
「しかしどうやって宇宙に上がる?このような情勢では打ち上げ船に乗り込むどころか宇宙港に近づく事もままならぬぞ?」
しかしガリョウはその言葉にも全く動ぜずに答える。
「私と影忍を衛星軌道まで持ち上げられるロケットさえあれば十分でございます。そこまで昇ってしまえば地球の引力圏から抜け出す事など容易な事」
ドウハンは嬉々と笑いながら重々しい茶釜を回した。すると機械の動く起動音が周囲に轟く。そして二人が外に出ると、それまで沼であったはずの場所に大きな空洞が開いていた。そしてその空洞には巨大なロケットが一基、堂々と鎮座していた。
「ドウハンさま、これは?!」
「プラント建設時代に使われていた旧式のものじゃ。空であれば宇宙に飛び立つことも用意であろうが、状態からして影忍を載せれば衛星軌道まで駆け上がれるかどうかといったところじゃろう」
「いえ、それだけあれば十分です」
それから半刻の後、その庵の一帯は猛烈な水蒸気と爆風によって全てがなぎ倒された。そして大地を蹴って天空の頂きを目掛けて駆け上って行くロケット。さらにそれにしがみ付いていたのは影忍デュエルであった。まさに忍ならではの芸当である。ドウハンはその様子を小高い山の上からいついつまでも眺めていた。
ロケットは急激に加速しながら天空の頂きに昇って行く。その際に発生するGはとても常人に耐えられるものではないが、鍛え抜かれた忍には意に介するほどでもない。やがてロケットはドウハンの話の通り、衛生軌道上を目前にその勢いを落としていた。
「まだだ、まだ持ってくれ!」
そのガリョウの意志に答えるように、ロケットは少しでも宇宙に近づこうと懸命に炎を吐きつづける。やがてガリョウの視界に一基の衛星が飛び込んできた。それは開戦と同時に無力化されてしまいながらも漂い続けていた軍事衛星のなれの果てであった。
「この距離ならば!」
今まさに力尽きんとするロケットを蹴って影忍は飛び上がる。地表に引き込まんとする重力の制止を振り切って。そしてその跳躍は骸と化していた衛星に届いたのだった。
「忍法、衛星跳び!」
人工衛星を踏み台にして影忍は再び飛び上がった。弾丸のごとく勢いを得た影忍はそのまま重力を振り切って宇宙へと舞い上がる。そして役目を終えたロケットと衛星はそれを見届け終えるとゆっくりと降下を始め、やがて二つの流星となって大地へと帰って行ったのだった。
「さらば老兵……」
流星となって消え行くその二つに一瞥すると、ガリョウは決戦の地へ向けて光のごとき勢いで突き進んで行った。
東から西から、黒い影が宇宙の一点に集結する。それこそが忍たちの姿だった。ドウハンの召集に応じた彼らはその段取りの打ち合わせをすべく、決戦を前に顔を合わせようとしていたのだ。
『集結せよ!』
『集結せよ!』
『集結せよ!』
指定された暗礁宙域にて彼らを出迎えるのは三つの面を持つ観音菩薩のごとき出で立ちのGであった。殆ど全ての機動忍者が既存のMSに手を加えてあったのに対し、これのみはその原型らしきMSはこの世界には存在していなかった。そしてそれを駆るのは三位一体の存在として知られるギンガ、スイセイ、ゲッコウのミツルギ三兄妹であった。
「猿(ましら)三兄弟参ったぁ!」
「赤鮫一門がジンベイ見参!」
「ムササビのコウテン、ソウテン!」
「時元衆門徒推参!」
この地に集結したのは機動忍者を駆る忍たちであった。この時代、MSそのものが未だ普及していなかったため忍の中でもこれを保有している者たちは一握りであった故、後の時代からすれば極めて少なかったと言わざるを得ない。だがそれでもこの地に結集した忍の数は四十七機であり、驚くべき数字と言えるであろう。
なおこの時集結した機動忍軍四十七騎の主な内訳は以下の通りである。
SEEDの影忍ガリョウ (デュエルガンダム)
欧州忍下忍四騎 (ストライクダガー)
時元衆ハリマオ (フォビドゥンガンダム)
時元衆門徒ベンK (カラミティガンダム)
時元衆門徒三騎 (M1アストレイ)
弩忍ゴウガン (イージスガンダム)
双槍のタテワキ (バスターガンダム)
極北のウンケイ (シグー)
赤鮫一門のジンベイ (ゾノ)
赤鮫一門七騎 (グーン)
ムササビのソウテン、コウテン(ディン)
猿三兄弟、ミザル、クチザル、キキザル (ジン)
忍狗衆キュウビおよび下忍五騎 (バクゥ)
不動のアオウ、ニオウ (ザウート)
ミツルギ三兄妹 (ハイドラガンダム)
特に名の通っていたのは上記の者たちであったが、ここに名を掲げなかった者たちもいずれ劣らぬ猛者ばかりであった。そして四十七騎の全てが揃った事を確認するとミツルギが長兄ギンガは声高らかに宣言する。
「この現世に旧世紀以来の悪夢、人類の殲滅戦が今正に始まらんとす。我ら忍を生業とする者、古よりの盟約に従いてこれを阻止する!異論はありや?」
異論を口にする者はこの中にはあろうはずもなかった。号令を下したドウハンに恩義のある者、あるいは古よりの盟約に従う者たちのみがこの地に集っていたのであるから。そしてハイドラはその頭上に立体映像を投影した。そこに映し出されていたのはドウハンその人であった。
「ワシの召集に応じ集いし忍たちに礼を申す。して貴殿らが成すべきことであるが……」
すると各機のモニターに先日行われたボアズの攻防戦の様子が映し出された。
「見ての通り連合は、手に入れたNJCの力を用いて忌まわしき核の封印を解き放ち、これを何の躊躇も無く用いた。このまま連合を放置していればその炎はいずれ罪も無きプラントの民まで焼き尽くす事になるであろう」
「おのれブルーコスモス……」
一瞬忍の間にも戦慄が走る。だがドウハンはその空気を読みつつも言葉を続ける。
「だが連合ばかりではない。ザフトもまたこれに勝るとも劣らぬものを持ち出しておる。これを見よ」
次に映し出されたのは巨大γ線レーザー兵器、創生の光の名を与えられたジェネシス、その見取り図であった。
「これの威力は想像を絶するものと思われる。なにせ出力はかのアラスカの地を灰燼に帰したサイプロクスを上回っておるのだからな。これを空気の層で守られていない宇宙で使用すればコロニーや月面都市の一つや二つ、ゆうに消滅させうるであろう。否、地上に用いられれば民草から草虫に到るまでことごとく焼き払われることになるであろう」
「……。ブルコスの頭目アズラエルもザフトのザラも、もはや正気ではないと伝え聞く。なれば互いに躊躇する事などありえまいて」
ミミズク男爵の言葉に一同は息を飲んだ。であれば、ヤキン・ドゥーエを巡るこの戦は人類の命運をも左右しかねないということになるのだ。
「どちらの勢力にもそれを阻止せんと動いておる者はおるが、如何せん力が及んでおらぬ。まして目先の戦を止める力も無い。動いておるのはラクス・クラインやオーブの残党勢力であるがそれでも全てを押し止めるだけの力を持っているわけではない」
「それ故に我ら忍が動くというわけですね」
「左様」
改めて全員が事の深刻さを認識したところで、具体的な作戦が示される。
「まずは連合の核を止めるのが先決。だが連合もそう易々と核をわかりやすく撃ち出すわけではない。当然数多くの囮を混ぜていることであろう。そこで、だ」
「我が時元衆が導術ですかな?」
「左様」
時元衆とは古より伝わりし陰陽術に忍術を加味した術を使う忍たちの一派である。その党首であるハリマオは万物が発する波を探る術である導術にも長けていた。そこで彼の力を用いて真贋を、本物の核弾頭を見抜き撃ち落そうと言うのである。
「さらに連合の核に一段落がつけばさらに選りすぐりの者たちによってジェネシスの破壊を行ってもらう。他の者はさらなる連合の核攻撃に備えてもらいたい」
この任に選ばれたのは影忍を始めとするG使いの者たちであった。
「さらに最後ではあるが、各々方に隠蔽の護符を授ける。これで容易に探られる事はなくなるであろう」
隠蔽の護符はミラージュコロイドをその対象の周囲に固定させ、あまつさえ気配さえも隠し遂せる力を持っていた。時防衆の力、恐るべしである。
かくして忍びたちはその身を虚空の闇に溶かし込んで決戦の地に向かったのである。
ヤキン・ドゥーエでの決戦の劈頭、連合はあろうことかプラント本国に対して核攻撃を敢行した。よもやこの時点での非戦闘員の居住地域への使用は考えられぬと思っていた忍たちもさすがに驚きを隠しきれなかった。
「きゃつらめ!真っ先に民草を狙うとは……。聞きしに勝る外道めが!」
だが驚いていられる情勢ではない。忍軍は直ちに行動を開始した。ハリマオは陣笠のごときレドームで頭部を覆うと、印を結んで直ちに探りを当てた。そしてその情報はハイドラを介し、導波傍受可能な機能を持つ全ての機体に転送される。NJの影響下にあり、各種センサーはその殆どが本来の性能を発揮できずにいる。そんな中で正確に情報を得られるのは唯一導術のみ。さらに正確にそれを伝達できるのもまた導術のみである。
「一基たりとも逃がすでないぞ!その一発が数十万もの民の命を奪う事になるのであるからな!」
忍軍は己の秘技の限りを尽くして核ミサイル、特にNJCを的確に破壊して行く。NJCさえ破壊してしまえばNJの影響下にある以上、核兵器はまったく無力になるからである。
ともあれ忍軍のみでその全てが破壊できる訳では無論ない。如何に超人的な技量を持つ彼らとは言え数は高々四十七騎。当然限界はあった。
しかし、核攻撃を阻止するのは忍軍だけでないことは賢明なる読者諸兄の事実であろう。すなわちラクス・クライン一派である。特に彼らの保有するNJC搭載のMSとその補助兵器であるミーティアの攻撃力は圧倒的であった。
だが、そのミーティアのセンサー系に密かに導術受信センサーが備わっていた事を知る者はほとんどいない。これはミーティアの部品がジャンク屋組織によって搬入された際に忍たちの手によって密かに搭載されていたのだった。これによりミーティアを装着したNJC装備のGの核ミサイルの撃墜率は驚くほど高いものになっていたのだった。だが、この部品の存在はミーティアがこの時の戦闘で失われてしまった為、余り知られてはいない。
それはさておき、連合の核攻撃の第一派はかろうじて防がれた。そして第一派終了と同時に両軍の本格的な激突が開始される。忍軍はあえてこの戦いからは一歩身を引き、ジェネシスが動き出す時を探っていた。何故ならジェネシスの防御は驚くほど高く、いくら姿を護符によって眩ませていたとしても突破は困難と見受けられたからだった。
「ジェネシスから高熱源反応確認!」
「射線より各々回避!」
「な、なんと!」
ジェネシスから不気味な光が放たれ、その禍禍しき光は連合の艦隊を襲った。まさに圧倒的。宇宙を埋め尽くさんほどの威容を誇っていた連合の宇宙艦隊はおよそ半数を失い、散り散りになってしまっていた。
「あれぞまさに邪悪なる光……」
「彼の力が地上に注がれれば、罪無き命までがことごとく焼き払われるのは明白なるぞ……」
「やはりかような力は絶たねば成らぬ!」
『応!』
もはや発見を恐れるどころではなくなっていた。ミサイルの一基一基を破壊して行けば良い核攻撃と異なり、ジェネシスのそれはシステムそのものが当時の最先端技術と強固な防衛網に固められ、安直に破壊できるものではないことが明白であったからだ。
忍たちは戦場の混乱に乗じ、雪崩れ込まんと突撃を仕掛ける。だがザフトもまた必死。戦力を再編した連合、ラクス一派の執拗な攻撃に必死に耐え凌ぎながらついに第二射に成功したのであった。これにより連合の増援艦隊、および月基地までもが消滅した。
「何とか、何とか突破できぬのか?!」
さしもの忍たちにも焦りの色が見え始める。さらに護符の効果までもが切れはじめるに到り、その焦燥は頂点に達しようとしていた。
だが、ガリョウのみはその場にじっと座禅を組んだまま動こうとはしない。心を静寂に静めて気の流れを探っていたのだ。彼に備わりしSEEDの力が、影忍の心眼センサーが、その能力を限界まで解き放ってこの混沌に筋道を探る。
「見えた!」
やがて目を見開くとガリョウは一筋の光となってジェネシスに向かって行った。これまで強固と思われていた防衛線をまるで風のように突破して行く。
「おお!影忍が、SEEDの影忍が動いたぞ!」
「今だ!一気に雪崩れ込めぇ!」
ガリョウの後を追い、次々と忍たちがその穴に飛び込んで行く。連合、ザフトの両軍の将兵たちにはにわかに意識し難いものであったが、やがてその空気の動きは戦場にいた誰もが感じ取れるほどのうねりに変わって行った。
「何だ?!何がどうなっている?!」
周囲を警戒していたゲイツの一機が何かの異変に気が付く。
「どうした!」
「わかりません!ただ、何かが動いたような……ぐわ!」
次の瞬間そのゲイツは一瞬姿を見せた黒い影に斬られその身を虚空に散らした。
「敵に侵入されたのか!?」
「いえ、まだ反応は捕らえられておりません!」
「だったら流れ弾か……。いずれにせよ各機警戒を怠るな!」
「ハッ!」
常人よりあらゆる感覚が優れているとされるコーディネーターであったが、かれら忍の存在を探れるほどの技量の持ち主がそれほど居た訳ではない。上記の通信記録は後の研究家によって忍によって斬られた機体があったのを示すものではないかとされたものであったが、それが本当であったのか確かめる術もまたない。だが、一つ分かっている事は丁度その時刻に忍たちが本格的にジェネシスに対して破壊工作を開始していたという事である。
「な、何なんだあのMSは?!げふっっ!」
うっすらと陽炎のように霞んで見える機体をジンが目撃できたのはほんの一瞬の事であった。次の瞬間にはベンKの得物の一つである巨大な回転する金棒の一撃で完膚なきまでに粉砕されていたからである。恐るべきは僧兵カラミティの怪力……。
「我が砕岩轟の威力、思い知ったかぁ!」
影忍によって変えられた流れに乗って続々と侵入してくるのは忍ばかりではなく連合、ラクス一派も同じであった。このような乱戦になるとその姿を隠しても晒しても左程の意味はない。故に護符の効果の消え掛かった一部の忍は、邪魔伊達する相手に対して躊躇無くその技を振るっていたのである。
「式利機・写銃攻、写盾防!」
時元衆ハリマオの僧兵フォビドゥンの両肩に各々あったメビウスとメビウス・ゼロが術士の命を受け飛び立つ。余計な部品を省き小型化されてはいるが、乗り手を必要とせずそれ故に変幻自在な運用が可能なこの二機は、前者にはバリアビットが、後者には軽量ガンバレルが装備されており、文字通り攻防一体の活躍を見せる。
「弩級変化!」
その掛け声と共に巨大な弩に姿を変えたのはゴウガンの弩級イージスであった。忍ゆえに光や熱を発することを禁忌としていたがため、彼の得物は巨大な矢である。そしてそれを自らが弩に変化する事によって撃ち出す事を可能にしていたのだ。
「ゴウガン殿、照準よろし!」
「おうさ!てぃ!」
真空の宇宙に風を巻いて撃ち放たれた巨大な矢。たちまちジンやダガーの乱戦続く合間に飛び込み、一〇機ばかりをまとめて串刺しに、さらに戦艦の船体に深々と食い込んで爆発した。
彼らのような比較的目立つ立ち回りのできる忍たちがさらなる混沌を創り出している隙に、ジェネシス破壊の本命たる影忍たちはジェネシスの懐深くに潜り込んでいたのだった。
「して影忍、この巨大な筒を如何にして破壊しようぞ?」
双槍のタテワキ、影法師のミコト、ミミズク男爵らの勢は手分けしてジェネシスの弱点を探っていた。
「案じられるな各々方。すでに草が入っている」
すると忍の秘匿通信に連絡が入ってきた。あらかじめ潜入していた草たちからの手引きである。彼らはジェネシスの弱点を探り出し、その箇所を破壊してもらうべく誘導してきたのだった。
「それでは、半刻の後にまた落ち合おう」
護符の力のみならず、其々が隠遁の術に長けた者たちである。彼らは草の手引きに従い、ジェネシスの中に消えて行った。
影忍を隠したガリョウは草によって目印のつけられていた廊下をひた走る。ジェネシス内部は当然警戒も強いはずであったが、余り抵抗らしい抵抗は見られない。これは目立つ形で侵入してきたラクス一派、特にオーブ勢が囮になる形となって防衛側の目を引きつけていた事と、あらかじめ草によって仕掛けられていた秘術によるものだった。
後にこのジェネシスで作業していた職員の生き残りは、この戦いにおいてどこか不安定な気分であったと言う。ザラ議長の演説に我を忘れて興奮、かとおもえば些細な情勢の変化で皆が過大なほど不安を覚えたり、あまつさえ叛乱、および職員全員が職務を放棄して逃げ散ってしまったことは広く知られている。常人よりも冷静な判断を行えるはずのコーディネーターにとってこれは戦場での興奮を超えた不自然な事であった。
だがそれは、あらかじめ忍たちが手を打っていた事ではないかという説が最近俄に脚光を浴びている。その症例が忍が得意とする撹乱薬、および導術による暗示に酷似しているからである。そしてそれは事実であった。草によって微量に空気の中に混入されていたそれは、忍たちの潜入に呼応してその力を増し、第三射直前の時点では冷静な判断が行える者のほうが少なくなると言う有様であった。
ガリョウらは其々の制御系の部位に次々と起爆装置を取り付けて行く。これは第三射の熱量の高まりに応じて起爆する仕掛けになっていた。爆発そのものの威力はさほどではないにせよ、これによって生じる熱量の暴走は十二分にこのジェネシスを粉砕するに足りるであろうからである。
「このような邪悪なる光はあってはならぬのだ!」
手持ちの最後のものを仕掛けた直後に、背後から気配を感じるガリョウ。誰何の言葉に答える間もなく手持ちの手裏剣が相手の喉笛を一撃、これを仕留める。その背丈からして未だ幼い幼年兵といったところであろうか。だが感傷に浸っている余韻などあろうはずもない。これが彼の選んだ血塗られた忍の道なのであるから。
名も無き草たちの手引きにより仕掛けを終えた忍たちは続々とジェネシスから離れて行く。すでにジェネシスでは指導者ザラ議長が討たれた事により、恐慌を来たした職員らの殆どが脱出。また発射が固定されてしまっていたため、忍らの仕掛け通りに自爆するのも時間の問題となっていた。それでも内部に突入して行く機影が二つあったが、そんな事に気を留めている時間などない。やがてジェネシスは発射の際に生じた熱量の暴走、および中心部で発生した爆発によって自爆して果てたのであった。
連合は主だった戦力を失い、ザフトもまたジェネシスを失った。だがこれだけで戦闘が終わった訳ではない。少なくとも両者の指導部の意志が戦闘を望んでいればそのまま続行されていた事であろう。しかしそうはならなかった。プラント、連合、共に良識派がそれぞれの意志を握る事に成功したのである。
まず連合であるが、これはその損害の大きさにあった。連合の宇宙艦隊は投入した戦力の殆どを月面基地諸共失っており、一時撤退して戦力の再編を行うべしとの意見が通ったからだった。もちろんこれが通ったのはジェネシスの破壊が確認されてのことでもある。ともあれ連合は戦力を再編すべく大幅な撤退を余儀なくされたのだった。
対するプラント側は穏健派によるクーデターの成功があった。各々分散していた抵抗勢力はマルキオ師やジャンク屋組織の連絡網を通じその力をまとめ、主だった指導者の奪還にも草たちの手引きにより成功。ジェネシスの破壊、およびザラ議長の死亡によって力を失った強硬派の隙を突き議会の制圧に成功したのだった。そして暫定的指導者となったアイリーン・カナーバによってプラント側から停戦の申し入れが出されたのであった。その時を持ってヤキン・ドゥーエでの戦いは終結することになる。
「各々方、我らの努力は実ったようだ」
次々と撤収して行く両軍を眺めながら、忍たちもまた一時的に集う。激戦であったが故に損害も無視できないものがあったが、とにもかくにも人類の滅亡という最悪のシナリオが回避できた事だけは確かだった。
「これをもって機動忍軍は解散とする。異論は?」
名残惜しいと思うガリョウであったが、口に出す事は無い。彼らは人類滅亡を回避せんが為に一時的に手を結んだのであって、本来ならば敵同士であってもおかしくない間柄なのである。つまりこれは一時の幻であるというわけだった。
「よってこれにて解散とす。各々方ご苦労であった」
その言葉を聞くと忍たちは続々と闇に消えて行った。次に出会う時は敵か味方か。それは神のみぞ知る…。
C.E.の戦乱はこの時を持って一応の決着を見た。だが無論のことこれで戦乱から太平の世に戻った訳ではない。地上にも宇宙にも、そして人々の心の中には余りにも大きな傷跡が残されていたからだ。そしてその傷跡は今後長く次なる戦乱の火種となって人々を苦しめていくことになるであろう。
だが、この戦いから得られたのは憎悪ばかりではない。数多くの教訓も生んでいることに着眼しなければならないであろう。
組織というものが暴走すれば、それは時に全てを滅ぼし尽くすまで突き進む機械になりかねない事。そしてそれを止め得るのは確固たる意志を持つ個人たちが、そして直接的な力は微弱であっても結集してその組織を動かす事である、という事実である。
この戦いにおいてはラクス一派や忍たちの活躍が目立つのは確かである。しかし彼らの力のみで破局を回避できたのではない。最終的に世界を救ったのは圧倒的な力を持つ個人ではなく、地道にそして物事を着実に積み上げてきた名も無き人々であることを忘れた時、再び世界は混乱に陥る事になるであろう。世の中を正しく導けるのは独り善がりの力なのではなく、思考錯誤を伴う漸進的な力なのだから。
そして超人的な力と技量を持つからこそ、そしてその世の理熟知しているからこそ忍たちは歴史の表舞台に立たず、闇の世界に還って行くのである……。
SEEDの影忍 完
2010-12-13 鉄十字キラー
■[ガンダム]SEEDの影忍 荒涼の章

SEEDの影忍 荒涼の章
「者共、影忍の首を討てば値千金ぞ!討って我ら蜂牙の名を天下に示すのじゃ!」
スズメ蜂のような顎を与えられたメビウスが見事に陣形を整え、一個の生き物のように襲い掛かる。その数およそ二〇機。そのどれもが連合のトップガンもかくやというほどの腕前と、高度な連携技術を持っていた。まさに大群で獲物に襲い掛かる蜂の如しである。
彼ら蜂牙一門は当時高価であったMSを多量に保有していた訳ではなかった。故にまとまった数の入手が可能であったMAメビウスに手を加え、彼らの運用に合わせていたのである。
「いくらMAといえど、こうも連携が見事であればあなどれぬという事か。しかし…!」
逃れきれぬと踏んだのか、ついにガリョウはその方向を変えて彼らに真っ向から挑んで行った。
「奴め、とうとう痺れを切らしおったわ!」
一直線に飛び込んでくる影忍デュエルに一門は四方八方から飛び掛ってきた。黒地に褐色の白のラインを描いた彼らのメビウスはすれ違い様にニードルガンを撃ち込む。極小の針を一箇所に集中して撃ち込んで、被弾部をグズグズに破壊するその兵器は、実体弾を無力化するPS装甲に対してはまったく無力であったが、PS装甲の用いられていない機体にとっては恐ろしく脅威的な兵器である。事実、その攻撃によって影忍はその全身にいくつもの穴をあけられてしまった。
「頭目、手応えありました!」
飛び去りぎわに部下達からの報告が相次ぐ。やがて影忍は推進剤に引火して爆発を起こし虚空にその身を散らした。
「こうまで、こうまで脆いのか?これが本当に噂の影忍だったのか?!」
喜び勇む部下達を尻目に一人思考を巡らす頭目。やがて集合した部下達の機体を見た時、彼はある異変に気が付いた。どの機体にも何か粉末のようなものが付着していたのである。
「しまった!あれは囮であったか!」
頭目は強引に機体を起こし、部下たちから突然大きく距離を取った。驚く部下たちに彼は宣告する。
「おのれら!少しでも助かりたいと思わば機体を捨てて逃げよ!」
だがそれも無駄に終わった。付着物は特殊粉末火薬であり、一旦標的に付着すると一定時間後に爆発すると言うシロモノであった。断末魔の悲鳴のみを残して蜂たちは次々と散華していった。
「何という、何という事じゃ!まさかあ奴がこれほどとは……」
よくよく頭目が目を凝らせば、すでに影忍は遥か先に向かっていくのが見える。完全に仕事に失敗したのだった。
「無念、ここは再起を目指し……。?!」
その直後、彼の意識は永久に戻る事はなくなってしまった。虚空より僅か一瞬姿を見せた何者かに、機体諸共両断されてしまったからである。
(所詮こやつらでは足止めにもならぬか…)
その者の目は一直線に地球に駆け下りる影忍の航跡のみを見つめていた。
C.E.七一年。プラント側によってニュートロンジャマーという核分裂反応を抑え込む力を持った機械が地上に打ち込まれてから一年強が過ぎていた。エネルギー資源の殆どを宇宙からのマイクロウエーブと原子力発電から得られる電力に頼っていた地上は、かつて無かった規模のエネルギー危機に直面。連合の主用各国においてさえインフラが崩壊するほどの被害をもたらしたのであるから、代替エネルギーの設備をまったく持たない小国などは文字通り崩壊の危機に晒されていたのだった。
その状況はこの小国でも同じであった。これまでエネルギー供給を隣接する大国に頼っていたこの国では、開戦以来電力が全くと言って良いほど絶たれ、国民は続々と難民化。また居残った民草も泥水をすすり草を食み、燃料に蔵書を用いねばならないような生活を強いられていた。隣国は自国の分の確保が精々でとてもではないが援助など望むべくもなかったのだ。
無論この国も現状をただ手をこまねいて見ていた訳ではなかった。この国ではかつて完成寸前まで漕ぎ着けながらも、途中で製作を放棄した試験型の発電用の核融合炉があったのだ。完成してもその出力は精々宇宙用の巡洋艦のそれ程度ではあったが、それでも急場をしのぐにはそれしか手が残されていなかったのだ。政府は乏しい財力と残された手段の全てを用いてこの発電所の完成を急いでいたのだ。
だが、あともう少しでどうにかなるというところで致命的な事態が発生した。核融合用に必要な高出力レーザー、その収束に必要な高精度レンズが何者かによって破壊されてしまったのだ。核融合は超高温を創り出さねば発生させる事はできない。水爆はこれを原子爆弾によって創り出すのだが、核融合発電においてはこれをレーザーによって創り出すのが一般的な方法とされていた。故にその肝心要のレーザーが死んでしまったのでは発電など夢のまた夢になってしまう。
当然要求されるのは代替のレンズである。ところがこのレンズは地球上では作り出す事が殆ど不可能で、これまではその生産はすべてプラントに頼っていたのだ。そういった次第で戦争相手からレンズの入手など不可能。在庫は軍がすでにその全てを新造艦のために確保しており、たとえ売ってくれると言うメーカーがあっても法外な値段をつけてくる事には違いはなかった。
だがそんなこの国に助け舟を出した者たちがいた。彼らは表立って名乗る事はなかったが、ナチュラルとコーディネーターの不毛な争いを終わらせる為に活動していると言う集団のプラント側の者たちと言う。そして彼らはそのレンズを届ける為に、幾多の人脈をたどってSEEDの影忍と呼ばれるガリョウにその仕事を依頼したのだった。
「このレンズが届く事を待ちわびる無辜の民が大勢居るのだ。何としても届けねば……」
ガリョウは膝に抱えたケースを見やった。この中には高出力レーザー用の高精度レンズが三〇枚入っているのだ。そしてこの三〇枚のレンズに、件の小国の命運が掛かっているのだ。
NJの影響下にある地球圏ではレーダーが殆ど無力化されているので、電波による探知は行えなくなっている。そのことは常に相手に姿を掴まれてはならぬ忍にとって実に好都合であった。だが勿論赤外線や目視による探知は健在。故に大気圏に突入する際も細心の注意を払って行わねばならぬことに変わりはない。影忍は大気圏を目前にし、目くらましのデフリを散布しながらも、目的地へ向けての侵入角を慎重に取っていた。
「よし、そろそろ落下傘の開き頃だな…」
ガリョウは寸手のところまで大気圏突入用落下傘を開こうとはしなかった。大気圏突入の直前こそがこちら側が最も無防備で、かつ敵にとっては最も狙いやすい瞬間だからである。
ガリョウは摩擦熱によって機体が発熱し始める直前まで様子を見ていた。実のところ蜂牙一門の追跡は振り切ったものの、別の何者かに付けられていると感じていたからだった。そしてその読みは的中した。侵入角を定めた直後に、背後から何者かが攻撃を加えて来たのだった。
「やはり!」
瞬時に反応し、影忍デュエルはその攻撃を紙一重で回避する。だが、この段階での回避運動の影響は大きかった。侵入角がずれてしまった為に、本来は直行コースであったのだが、その落下点が大きく逸れてしまう事になったのだ。
「こうなっては致し方ない……」
ガリョウは止む無く落下傘を開いた。とはいえその落下傘は大気中を下るためのものではなく大気圏に突入するためのものであるため上下さかさまに、傘を下に向けて使用するのである。強固な断熱材によって作られているその傘は大気との摩擦熱にも十分に耐え、確実に地上に降下する事が出来ると言う優れものであった。
やがて周囲は摩擦による赤い光の支配する世界に変わる…。
影忍が降り立ったのは中央アジア特有の乾ききった荒野であった。目的地である某国まではおよそ一〇〇〇里あまり。侵入角によっては地球の裏側になってしまうことも多々あることを考えれば許容できる範囲であった。
しかし某国までの道中が安易であるわけでもない。何故ならこの地域は元来動乱の続く土地であり、この度の大乱の為その情勢はC.E.に暦が変わって以来最悪のものになっていたからである。
「彼の国はここより北西の方角およそ一〇〇〇里。影忍であればおおよそ二日といったところか……。しかし急がねば!」
隠密性を重視する忍にとって日中その姿を晒しての行動は、本来禁忌と言っても良いほどのものであった。しかし己の到着が一刻でも遅れるごとにその分民草の苦しみは続く訳である。もはや猶予はならなかったのだ。照り付ける強烈な日差しの中を全速で、しかし砂埃一つ上げずに道中を急ぐ影忍デュエル。まさにそれは選ばれた忍にのみ行える神技と言えるであろう。
夜通し駆ける事丸一日。ようやく荒野を抜け地球最大の湖畔であるカスピ海のほとりにまで辿り着いたガリョウは、切れかけた電力を補充せんため機体を隠し町に向かった。無論正体を悟られぬように行商に身をやつしてである。
(あれから振り切ったと思っていたが、未だに私を付けているものがいる……。相手は忍だな)
どこか様子の怪しげな店から重機用の蓄電池を買うガリョウ。この時勢であるから表立って電気を販売しているところは皆無であるし、もちろん扱っていても値段は法外なものである。しかし手段は選んでいられないのが今の彼である。多少の交渉は怪しまれぬ為行うが、それでもほとんど相手の納得する範疇の価格で購入する。
荷物をロバに載せるとガリョウは町から出る為にゆっくりと郊外に足を運ぶ。意図してにぎわう市場を抜けていくが、それでもガリョウの研ぎ澄まされた感覚は何者かが自分を付けているのを感じ取っていた。
やがて町の郊外に出たところで、ガリョウは借り受けたロバを持ち主に返し、荷物を古錆びた二輪駆動車に移す。そしてロバの主人が離れたところを見計らって、誰も居ないはずの方角に向かって話し掛けた。
「何故私を付けまわす?」
その直後、手前の地面から土煙が上がり何者かが弾丸のように飛び出してきた。その両腕には鋭利な鍵爪が備わっている。地中に潜んでいたところを見ると、どうやら土忍の一派のようであった。
無論そのような手が読めないガリョウではない。行商の衣服をその場に脱ぎ捨てるとその姿は忍のそれに変わっていたのだった。
「他にもいるのであろう。顔を見せたらどうだ?」
その直後、次々と周囲を囲むように方々から巨大な土柱が沸き起こる。その数八機。その全てがバクゥであった。そして最後に現れたのは彼らよりも一回り大型の機体。すなわちラゴウであった。最初に姿を現した忍は稲光のごとき疾さでそれに飛び乗った。
「やはり土蜘蛛衆であったか……」
ガリョウは辺りを見渡した。周囲は完全に包囲され蟻の這い出る隙間も無い。ましてこちらは機体から降りた生身である。常識的に考えればまず勝ち目はないであろう。
「如何にも、我らは土蜘蛛衆。依頼によりお主の持っておるレンズを全て頂戴しに参った。大人しく渡せば命までは取ろうとは言わぬ……」
ラゴウを駆る頭目よりの宣告である。しかしこの状況下であってもガリョウは顔色一つ変え様とはしない。
「残念ながら応じる訳にはいかぬ」
「ならば死ねぃ!」
周囲を囲んだうちの二機の前足の爪がガリョウ目掛けて振り下ろされる。だがその瞬間、その四機は天高く舞い上げられていたのだった。
「何と!」
舞い上げられたバクゥは瞬時にその四足を切り捨てられていた。まさに神業である。そして大地に立ちはだかっていたのはまごう事なき影忍デュエルであった。
「ここでお主等の相手をしている暇はないが……、邪魔伊達するなら容赦はせぬ!」
ガリョウは不測の事態に備えて影忍を何時でも呼び出しに応じて動けるように用意していたのだ。あとは彼らが自ら掘りぬいた地中の穴を通って参上したという訳である。
機体に飛び乗る直前に、重機用の蓄電池はすでに機体の電源に接続されていた。電力に頼って動かねばならぬ機動忍者にとってもはや必須となった早合の威力は絶大。これはありとあらゆる規格の電極から機体に合わせた電力を吸い出せると言うシロモノである。そういった次第ですでに影忍にとって必要な電力は既に確保されていたのだ。
「ぬう、者共かかれぃ!」
号令に応じ一斉に飛び掛るバクゥ。だが影忍はそれに応じる構えを見せたところで煙幕を放つ。そして彼の姿を見失った土蜘蛛衆を尻目に、カスピ海を横断せんと水面を驚くほどの速度で駆け抜けて行ったのだった。
「大地での戦を得意とする土蜘蛛だが、さすがに水面までは追って来れまい。むしろ問題は……」
ガリョウは土蜘蛛衆以外に己を付け狙う者の位置を悟っていた。
「宇宙より付けねらい者よ、そろそろ姿を現したらどうだ!」
影忍は後方に向かって十字手裏剣を投げつける。そしてそれは金属音を立てて跳ね返されたのだった。
「流石は名高きSEEDの影忍。気付いておったか……」
僅か数分の間にカスピ海を横断した両者は、その湖畔で対峙した。その機体はこれまでのザフトの機体ではない。どうやら新型のゲイツであるらしかった。
「大気圏にて攻撃を仕掛けて来たのはお前か?」
「如何にも。私の名はアブラビ……。用件はあ奴らと同じ。レンズと貴殿の命が欲しい」
「ならば……」
両者共に刀を抜き放つ。ただ、相手のそれはカタールと呼ばれる形状の拳を包むような形状の刃であった。どうやら相手は中東で独自に発達した暗殺術を流派に取り込んだ中東忍者であるらしい。
「きぇぇぇぃ!」
奇声を発して仕掛けて来たのはゲイツの方であった。両の腕から繰り出されるカタールの速度は圧倒的。影忍はそれをかろうじて防げる程度でまったくの防戦一方になっていた。
「これが中東忍者……、何と手強い」
だがこのまま押されたままの影忍ではない。態勢を立て直すと片手にクナイを握り同じ二刀流で反撃に転じたのだ。
「こうでなくては…。こうでなくては面白ろうない!」
打ち合いが終わると次にゲイツは金属の輪を何枚も取り出した。
「あれは戦輪(チャクラム)!」
「左様、ましてこの数をどう避けて見せる!?」
ゲイツの腕から十数枚にも及ぶ戦輪が放たれた。まさにその軌道は変幻自在。さしもの影忍もその全てを回避する事は敵わず、装甲のあちこちを切り裂かれてしまった。
「あの数で全身を切り刻まれぬとは…、流石は影忍よ。だがこのような所で油を売っておっても良いのかな…」
「うぬっ!」
先ほどの土蜘蛛衆ならばともかく、彼ほどのような手慣れが相手ともなると容易に巻くわけにもいかない。それ故に相手せざるを得なかった訳であったが、一刻を争うのが彼の今の使命である。何としても決着をつけねばならなかった。
だが、そんなガリョウの焦りを見透かすように事態は急変する。何と水上までは動けないと思われていた土蜘蛛衆が追いついてきたのだった。
「案外早かったようだな」
「これもお主が用意すればこそよ。だが手柄は我等が頂く!」
「やれるものならな…」
(いかん、このままでは…!)
さしもの影忍も絶体絶命の窮地に陥っていた。強敵中東忍者のみならず、土蜘蛛衆まで同時に相手をせねばならぬのである。ましてこちらはレンズを届けねば成らぬ身。沈着冷静を身の上とするガリョウといえども焦りに焦っていた。
だがその時であった。巨木ほどはあろうかと言う巨大な矢が影忍の周囲を囲っていたバクゥに襲いかかってきたのだ。
「お主ら手を引けぃ!」
丘陵の頂上に五機ほどの機影が見えた。その全てが紛れもなくMS。だがそれはザフトのものではなかった。うちの四機は胴体の形状からしてストライクダガーと呼ばれる連合側の新鋭量産機であり、そしてその中央の機は何と連合最強と謳われるストライクGであった。しかしそのどれもが頭部に正面に十文字の覗き口の開けられた円筒状の仮面を被っている。
「何奴!?」
土蜘蛛衆の一人の問いに謎の一団の大将は凛として答えた。
「我らは欧州忍軍!」
「欧州忍軍とな?!」
「となればあれはミミズク男爵!」
ざわつく土蜘蛛衆を無視してミミズク男爵はガリョウに話し掛ける。
「影忍よ!この場は我々が預かる。早々にそのレンズを届けるがよい」
「かたじけなし!しかし何故手を貸してもらえるのだ?」
「彼の国とは浅からぬ縁がある。故に」
その答えを聞くと影忍は刀を納めて某国へ向けて進路を向けた。当然追い縋らんとする他の一同。だが彼らの前に欧州忍軍が立ちはだかる。
「ここは私の顔に免じて引いては貰えぬかな?無論悪いようにはせぬ……」
「影忍のみならず欧州忍軍、男爵まで相手にせねばならぬのでは致し方ない。ここは手を引かせてもらおう」
男爵の言葉に中東忍者は渋々と従う。そして煙幕を放ってその姿をくらましたのだった。だが、もう一方の土蜘蛛衆は引こうとはしない。それどころか口に咥えた刃を向けて臨戦態勢に入っていた。
「ここで手を引けば土蜘蛛衆の名折れ。ここはまかり通させてもらおうぞ!」
「問答無用と言う訳か……。ならばその身を持って我ら欧州忍軍の恐ろしさを知ってもらおう」
男爵が剣を構えたのを合図に、ダガー四機はその四方に動いた。そして身動き一つしないままにダガー四機は男爵の周囲を超高速で回転し始めたのだった。
「受けよ!ダイヤモンド・ダストルネード!」
次の瞬間、彼らの周囲から凍てつく冷気を伴った竜巻が巻き起こった。竜巻目掛けて飛び込むバクゥたちはことごとく巻き上げられ、凍りつき落下して行く。そして大地に叩きつけられるとガラス細工のように粉々に砕け散っていったのだった。
「おのれぇぇ!」
頭目のラゴウはその冷気を掻い潜って竜巻の中心に踊り込む。回転の中心は無風であり、それは同時に相手の弱点に跳び込んだ事を意味するからであった。
ラゴウは口元に咥えたビームサーベルを真下に向けて落下する。だが、男爵はまるで動じる様子も無い。
「突破したのは見事であったが……、所詮蜘蛛ではそれまでよ」
その直後、ダガーたちは回転を止めて方々に散る。すると竜巻は勢いを弱めてしまった。だがこれは頭目にとって好機を表すものではない。逆に落下コースにいたために分散した風の煽りを受けてきりもみに揉まれてしまったのだ。
「し、しまった!」
だがその事に気がついたときは既に手遅れだった。慌てて態勢を整えようとしたその時にはすでにラゴウは男爵の一撃によって真っ向から両断されていたのである。「大人しく手を引いていれば良かったものを…」
異変に気が付いた住民達が駆けつけた時には既に全ては終わっていた。欧州忍軍はその場違いなほど強烈な吹雪と共にいずこともなく姿を消していた。そして辺りに残されたのは凍りつき粉々に砕けた土蜘蛛衆の残骸であった。
それから数日後。その某国の夜は一年振りに電気の灯かりによって輝いていた。ようやく調整を終えた核融合炉にようやく火が灯り、些細なものではあったが街に電気を供給することができるようになったのである。
そしてその光景を温かく見守る一団があった。影忍と欧州忍軍である。
「男爵殿、ようやく灯が灯りましたが……、逆に近隣の国より狙われるようなことにはなりませんでしょうか?」
機体同様の仮面を被ったミミズク男爵は達観したような声で答える。
「それであらば心配無用。この国は連合への協力を明言しておる。もう間もなく連合は宇宙にてザフトとの決着を付け様と言う時期であり、周辺国からは半ば強制的に軍事力を供出させておる。故に宣伝としても軍事としても当面この国に手を出すものなどおりはせぬ。それに……」
「それに?」
「いずれにせよこの戦乱、どちらが勝つにせよ終わるであろう。そうなれば自然とNJも解かれ、世界は完全ではないにせよ落ちつくところに落ちつく」
「私もそうなることを願って止みません」
両者は天を仰ぐ。雲一つ無き満天の星空ではあるが、その空の向こうでは未だ止む事無き戦火の炎が上がっているのだ。そしてその一角では創生の光と名付けられた最終兵器が今正に完成せんとしていたのだ。
地球とプラント、否、ナチュラルとコーディネーターとの決着の時は刻々と近づいている。果たして勝つのは、生き残るのはいずれの種族であろうか?歴史を繋ぐのか、それとも終止符が打たれてしまうのか。彼ら闇の住人は見守るばかりであった……。
2010-12-01 死した屍拾うもの
昨日に続き、本日も再掲。
■[ガンダム]SEEDの影忍 南冥の章

SEEDの影忍 南冥の章
「おのれ、まだ付け回すか!」
水面をスレスレに飛ぶ、二つの機影があった。ザフトの飛行型MSディン、だがあからさまにそれはザフトの所属でのものではない。右肩には般若の面が描かれ、その胸には災鬼の文字がある。
ディンのセンサーには後方より迫る一つの機影が映されていた。後をつけられはじめてより半刻ほど。余計なものに見つからぬ為に超低空を飛ばねばならず、それ故に速度を落とさねばならないのだが、それにしても相手は異常であった。反応はあからさまに水面の上にあるというのに、である。
「死念坊、ここまでつけられては住処が露見する。いい加減に斬って捨てようぞ!」
だが、その死念坊はといえばまったく乗り気ではない。それどころか顔に恐怖の色を浮かべていたほどであった。
「やめておけ苦念坊!奴は我らの敵う相手ではない。奴が、奴こそがSEEDの影忍よぉ!」
「はぅ!」
だが苦念坊は返答する間もなく討ち取られた。背後より音速を超えて飛び込んできた十字手裏剣がまともに直撃したのだ。
同僚を討たれた死念坊はあわてて付近の小島に着地した。すると、瞬きする間もなく眼前に影が姿を現した。紛れも無くそれは影忍のGであった。
「南海に鬼が棲むという…」
影忍は背中の刀を抜き放って構える。
「退治しに参った。ぬしらが災鬼堂か?」
その気迫に押されたか、死念坊は両手を広げあえて丸腰である事を誇示して見せた。
「如何にもわれらが災鬼堂。おぬしには勝てぬ、見逃してくれい」
そう言うと膝を折って続ける。
「な、何でも話そう。何が知りたい?」
「わかった」
そう言うと影忍は刀を下ろした。だが死念坊は右腕を背に回し、隠してあったアーマーシュナイダーを密かに手に握った。やがて背を向ける影忍。それを見るや否や、死念坊は好機とばかりに踊りかかってきた。
「甘いわぁ!」
C.E.七一年。天下が麻のごとく乱れ、戦乱の世に入ってよりすでに一年以上の時が流れていた。こと乱世ともなれば、盗賊、火付けがはびこるのが世のならい。南洋の島々を拠点に付近一帯から遠くは砂漠のオアシス都市までを荒らしまわっていたのが、盗賊集団災鬼堂であった。ただ他の賊と異なるのは、その構成する一味のことごとくが忍の崩れであるということである。
災鬼堂のアジトは南冥の鬱蒼たる密林の小島にあった。その入り口、MSがかろうじて通れるほどの場所には番犬たるバクゥの姿があった。
「おう、死念坊か。遅かったな」
降り立ったディンに確認のスキャニングをかけるバクゥ。だが何らの異常も見うけられない。
「ところで苦念坊はどうした?」
「死んだ…。だが代わりにこれを持参した」
死念坊はその右手に抱えていた包みを開いた。するとそれから転がり出たのは影忍の首であった。
「こ、これはぁ!」
「如何にも。最強の忍、SEEDの影忍はこの俺が討ち取ったのよ!」
高らかに勝ち誇る死念坊。その様子に疑問を抱きつつも朽狗は答える。
「まあよかろう。頭目に見せて褒美の一つでももらうとよかろう」
そう言うと朽狗は影忍の首を投げ返す。それを誇らしげに右手で受け取る死念坊。
「待てい死念坊!」
「何だ?!」
「妙だな…。ワシの知る死念坊は確か利き腕は左であったはず…」
僅かな間を沈黙が支配する。
「貴様、何者だぁ!」
牙を剥き出しにして飛びかかる朽狗。だがその瞬間、死念坊がその手にしていた影忍の首から怪しげな煙が噴出し周囲を包み込んだ。そして間髪いれずに周囲は爆炎に包まれた。
「こんな手は通用しないというわけか…。やるな災鬼堂!」
「賊の本拠に侵入、成功した模様です」
そこからしばし離れた沖合いに、強襲揚陸艦を中心とした一〇隻ほどの艦隊の姿があった。赤道連合が派遣してきた対災鬼衆討伐の艦隊である。その旗艦である強襲揚陸艦のブリッジにいかにも狡猾そうな風貌の男がパイプをゆらしながら鎮座していた。
「よし、直ちに制圧に移れ。あくまでも主力は我々なのだからな」
全速で陸に向かいながら、揚陸艦から次々と輸送用ヘリが飛び立ってゆく。本拠地に歩兵を突入させ制圧しようというのだ。
「しかし司令、この男本当に信用できるのでしょうか?まして忍などという者が?」
参謀らしい男が彼に怪訝な顔で尋ねてくる。しかし司令は気にも掛けずに答える。
「少なくとも腕は立つことは違いない。まあいくら“ニンジャ”とはいえ所詮は唯の傭兵よ」
(まあ、狗には狗の使い道がある…。手を噛まれてからでは遅いでな…)
男の瞳は怪しい光を放っていた。
「玄武門より侵入者!すでに第四層まで突破されております!」
「蒼目、赤目を向かわせろ!」
「駄目です!両人ともすでに討ち取られております!」
「な、なんとぉ!」
(やはりこ奴らでは止められんか…)
刻々と入る悲痛な報告に耳を傾けながらも、般若の面を被った頭目はどこか嬉々としていた。
「ワシも出よう。新型のアレを出せい!」
操縦席に乗り込み、頭目は彼の乗機である烏天狗レイダーを起動させた。
「これが運命などというものであれば…、この俗世もまんざら捨てたものはないのう、ガリョウよ」
立ち塞がる敵の忍をことごとく討ち取りつつも、ガリョウはまったく足も止めずに最深部に向かっていた。最も深く、そして最も強固に守られている所こそが、この要塞の弱点であるからだ。
まともに防衛体制を与える間もなく最深部に影忍は辿り着いた。かつての対水爆攻撃にも耐えうるよう設計されていた、大型艦船をも収容可能な超巨大地下シェルターを改造したこの要塞は、MSが自在に動き回る事が出来るほど広大な空間であった。しかし、現在では老朽化が進みその中心に巨大な柱が討ちたてられ、施設そのものを支えていたのだ。ガリョウが狙うのはまさにその柱であった。
柱に取りつくと、影忍はコツコツと叩きながら慎重にその最も脆い部分を探る。影忍は手持ちの爆薬は殆ど皆無であるため、労せずとも破壊可能な一点を探り出す必要があったのだ。
慎重に弱点を探るガリョウ。そんな彼の脳裏に、一瞬よぎったのは年少の頃、彼が最も憧れていた碧眼の兄弟子の教えであった。
「よいか、ガリョウ。如何に強大な要塞であれコロニーであれ、それを支えているのは柱だ。無論それゆえに隙もないよう強固に作られておる。がしかし忍はその中から弱点を見付け出し、その一点を攻めこれを崩す。これを忍法では大黒落としという」
「はい!」
「これができれば誰に恥じる事も無き一人前の忍よ」
その瞬間、ガリョウに何者かが囁きかけた。狙うはこの一点と。無論その内なる声に従いガリョウは愛刀サミダレでそこを切り裂く。たちまち柱は悲鳴を上げる。そして縦横に巨大な亀裂が走り、その重みに耐えかねてゆっくりと崩落を始めたのであった。
(よし、これで災鬼堂の命運も潰えた…)
脱出せんとする影忍デュエル。だが突然の背後からの気配に身構える。
「確かに誇るべき弟弟子であったが…、まさかこうも易々と落とされるとは思わなんだぞ…」
ゆっくりと割れる床の下から姿を現したのは、烏天狗のごとき装束に身を包んだ新型のMS、しかもその面立ちから高性能機の証明であるGシリーズであると思われた。
「久しいのう、ガリョウ」
そう言うと、頭目はその般若の面を外した。するとその下から顔を現したのは碧眼の男であった。
「ミカヅチ……」
崩れ落ちる要塞の中、睨み合いを続ける両者。互いに刀を抜き放ち、じりじりと間合いを計る。だがそこにも、制圧部隊が突入してこようとしていた。
「ぬう。ここでは邪魔が多い…。場所を選ぶぞ、ガリョウ!」
「こ、これは?!」
「どうした!」
沖合いの連合軍艦隊の旗艦の観測室はにわかには信じ難いデータを拾い上げていた。
「目標より、超音速で何かが二つほど飛び出しました!」
「NJ(ニュートロンジャマー)による故障であろう?!」
「突入部隊より報告、MSと思われる物体が一瞬で走り去ったとの報告が…」
「司令、両者の報告が一致しております」
「ぬ、ぬぅ…」
両者は駆けに駆ける。忍に関して最も驚嘆することはそのスピードであろう。ある文献によれば機動忍者は一夜にして地球を四周したと記されている。筆者が思うにこれなどは明らかに誇張であろうが、忍という奇異な存在故にこのような伝承がなされたことは想像に難くない。
やがて両者はその戦場を選んだ。地球上に残された数少ない石油資源の産地にして、先日のザフトの攻撃によって未だ消火さえままならず、地獄の破口のように燃え盛り続ける海上の油田基地群。獣はおろか飛ぶ鳥さえ近づけぬこのような場所にも、彼ら忍は戦いの場所を求めるのであった。
真紅の炎の中に時折、ぶつかり合う二つの影がある。影忍デュエルと烏天狗レイダーである。蜃気楼によるものか、はたまた凡人の感覚では追いつけぬのか、両者の攻防の様は俄に捕らえられるものではないほど激しいものであった。
レイダーの腰の爪が影忍めがけて飛び出す。ガリョウは苦も無くそれをかわすと、反撃にクナイを燃え盛る水面目掛けて投げつける。するクナイは水面を跳ね、あらぬ方向からミカヅチ目掛けて襲いかかる。
「ほう、出来るようになったのう」
だがミカヅチもさるもの。死角としか思えぬ方向から飛んでくるクナイを二本の指で捕まえると、ガリョウのやって見せた通りに投げ返して見せたのだった。
「何故だ?」
「む?」
両者の攻防が一旦止まる。互いに過酷な場所での戦闘ゆえか額を汗で濡らし、大きく息をついている。背後では両者の動向をうかがうように、先ほどまで轟々と吐き出されていた火柱が勢いを衰えさせた。
「私の知っているミカヅチは我欲の為に動く男ではなかった!それが……、それが何故?!」
「ふふふ……。そう言うなガリョウよ。それは買かぶりすぎというものだ」
「ワシはお前が思っておるほど立派な男ではなかった……。下衆であった、ただそれだけの事よ……」
「……!」
ミカヅチは腰に備えてあった団扇型のカッターを手にした。
「良い事を教えてやろう。災鬼堂は単なる盗賊集団にあらず!連合の、否、ブルーコスモスの資金集めとコーディネーターへの憎悪を募らせる為につくられたのよ!」
次の瞬間、ミカヅチは扇子を大きく一振りした。すると爆風にも等しき凄まじい突風が発生し、煽られた炎の波が影忍目掛けて襲い掛かった。ガリョウはかろうじてそれを堪える。
「そうよ、お前の雇い主と同じ連合よ!」
つまりこういう事であった。災鬼堂が保有しているMSはミカヅチのレイダーを除いてその全てがザフト製のMSであったのだ。であれば、彼らに襲われた民草はその影で糸を引いているのがザフト、すなわちコーディネーターであると思い込むであろう。そしてそれが、コーディネーターの抹殺を目論むブルーコスモスの策略であった。活動資金を彼らに調達させつつ、その罪と憎悪をコーディネーターに仕向ける。正に一石二鳥である。そしてこの度彼らを追討しようとした理由は、彼らへの口封じであると同時に、災鬼堂を討伐する事で戦果を誇示しようというわけである。
「わかるかガリョウ!?これが人の世だ!かくも戦を好み、同胞の血肉さえも一滴あまさず飲み乾す!それが人!人!」
続けざまにレイダーの扇子から中に仕込まれていた小刀が次々と飛び出す。ガリョウは身動きさえ取らずにその一本一本を浴びていった。
「この俗世では鬼畜のみが生き残る!わかるか!?」
再び襲いかかる炎の津波。だが影忍はその炎の壁を両の手で振り払った。
「忍とは……、忍とは、大義によってのみ刃を振るう。民草からは盗まず、殺さず、巻き込ませず……。それが、それがあなたの流儀であったはず……!」
幼き頃の自分の姿と、そんな未熟な自分に手取り足取り物事を教えてくれていた、かつての兄弟子の姿がガリョウの目に浮かんでいた。そしてその彼が、眼前の災鬼堂の頭目と成り果てた姿と合わさった時、ガリョウの瞳からは止めど無く涙が溢れていた。
だが、ミカヅチはそんなガリョウの様子をせせら笑う。
「忘れたのう……、さような事など。ワシは畜生道に堕ちたのよ」
「お前も来るがよい。ここは良いぞ、ガリョウよ……」
その言葉を耳にしたガリョウは涙を拳で拭い去ると、覚悟を決めて操縦桿を強く握り締めた。
「斬らねば……、やはり斬らねばならんのか……」
「斬れるだと?お前に……」
再び両者の間を沈黙が支配した。先ほど立てられた波も和ぎ、水面は今はただ、流された油を赤々と燃やすばかりであった。
だがその沈黙も破られる時が来た。均衡を破るように油田基地から火柱が大きく涌き上がったのだ。そしてそれが両者が激突する合図であった。
「ぬぉう!」
水面から大きく飛びあがる両者。そして互いが頂点に達した時、レイダーの腰の有線誘導型の爪が勢い良く投げ放たれ、影忍の胸に深々と突き立った。
「がっはっはっは!甘かったなガリョウ!所詮お前ではワシに……」
だがその時、ようやくミカヅチは異変に気が付いた。彼が突き立てたのは影忍ではなかったのだ。それは未だ溶け落ちずに残っていた油田基地のパイプを束ねたものだったのだ。
「か、変わり身だと!」
その時、ミカヅチは水面下に何者かが潜んでいる事に気が付いた。まるでその姿を誇示するようにシュノーケル代わりに浮かんでいる竹筒型のセンサーの姿を捉えたのだ。
「おのれ、おのれぇ!」
慌ててミカヅチはその物体目掛けて爪を放つ。だが手応えこそあったものの、それもやはり油田基地の耐熱材を丸めたものであった。しかも竹筒はそれだけではない。気が付けば彼の周囲はそれに埋め尽くされていたのだった。
「お前がワシに!ワシに勝つのか?!ガリョウぅぅ!」
大きく飛びあがったミカヅチは両手に握った二対の扇子を水面目掛けて振り下ろした。爆風と共に仕込まれた短刀が周囲に降り注ぐ。だが、影忍はそこにはいなかった。火炎地獄ゆえに発生する上昇気流を捕まえていたガリョウは黒煙に隠れて遥か上空から待ち構えていたのだ。
「な、なんとぉ!」
影忍が上にいた事にミカヅチが気が付いたのと、影忍のサミダレが斬りかかったのはまったくの同時だった。
「司令、敵拠点の征圧完了したとの事です」
「うむ、ご苦労であった」
そう答えると司令官は腕時計を覗き込む。
(そろそろ時間だな……)
「こ、ここまで強うなったか……」
ガリョウの一撃は機体はおろか、ミカツヂにも致命的な傷を与えていた。激しい出血により、操縦席は血の海となっている。しかしそれでもまだ喋れると言うのは、彼が常人離れした忍であるからであろう。
「この傷では助かるまい……。死に方を選びたい……」
「……、いいでしょう…」
ようやく終わったのか、それともまだ何か仕掛けてくるのか?絶えず刃の元に身を置いてきたガリョウはまったく隙を見せない。しかしそれであっても、突然のミカヅチの行動にはさしものガリョウも反応する事もままならなかった。
「獲ったわぁ!」
一瞬の隙を突いて烏天狗レイダーの左腕が影忍デュエルの左わき腹を引き千切った。
「!!」
「甘いぞガリョウ!そんな事ではまだまだよぉ!」
レイダーの一撃は操縦席を狙ったものであったのだろうか?否、否である。レイダーの左手にはわき腹の装甲が掴まれていた。そしてそれを見たガリョウから驚きの声が上がったのだった。
「そ、それは…!」
それは装甲の内側に仕掛けられていた小型でありながら圧倒的な破壊力を持つという超高性能爆薬であった。ガリョウはこの仕事の依頼、即ち災鬼堂を討ち果たせば機体の入手ルートに関しては不問にし、今回の為に部品さえ調達するという待遇を受けていた。無論疑わない訳ではなかったが、世の為人の為と受けたのである。そんな彼に対する仕打ちがこうであったのだ。
「よいかガリョウ……。軍人とは、俗世の鬼とはこうしたものよ!何もかも消せば終わると思うておる!しかと見よガリョウ!」
「これがお前の選んだ道、生きてゆく世界よ!ここで果てるワシは幸せやも知れぬ。地獄もここよりは住み易かろうてなぁー!」
次の瞬間、時限式発火装置が作動しレイダーの掴んでいた爆薬がまばゆい閃光を放って爆発した。その威力は凄まじく、一時ではあったがその油田基地の火災の炎を、地獄の業火を吹き払ってしまったほどであった。
「海が、南冥の海が泣いている……」
影忍は爆発の直前、飛行用の凧を張り、すでに上空へと舞っていた。明るさを失い、一時ばかり元の静けさを取り戻した眼下の南冥の海がガリョウには海が泣いているように思えていた。
「油田地帯より異常爆発を確認!」
「やったか……」
その報告を耳にした司令官は、ようやく安堵したように座席に座った。
「これでよい。この蒼き清浄なる世界には忍などという怪しげな者どもなど居てはならぬのだ……」
御付きの兵が彼にコーヒーカップを手渡す。司令官はそれをゆったりと口に含んだ。
「そして私が昇進し発言権を得た際には、上層部にコーディネーター共々、忍どもの抹殺も進言せねば……」
だが、彼が思いを未来に巡らせられたのはそれまでであった。次の瞬間、このブリッジには何処ともなく飛んできたアーマーシュナイダーの破片が直撃し、この男が座っていた場所をブリッジから南冥の海に叩き出してしまったのだ。無論、遺体など見つかるはずも無かった。
その後の調査でも、その物体が何処から飛来してきたのか判明する事は無かった。だが、その金属片には何者かによって文字が刻まれていたことが確認された。そこに記されていた文字はただ二文字。「天誅」と……。
第二回 了
2010-11-30 旧サイトの復活計画
■[ガンダム]SEEDの影忍

SEEDの影忍 序の章
時はC.E.(こずみっく・いら)七一年。時代は戦国、動乱の時代の只中にあった。
血のバレンタインに端を発した地球連合とプラントとの争いは、宇宙はおろか地球各地にまで拡大。太平の世は一変して累々たる屍たちの並ぶ地獄と化した。
まこと戦乱の世であった。
吐息さえ凍りつくほどに冷たい漆黒の宇宙。それを駆け抜ける影が一つ。その影は影であって影にあらず。暗闇色に全身を染めてはいたが、紛れも無くそれは人型機動兵器、すなわちMSであった。
「やはりつけられている……」
影とみまごうその機体は、虚空を漂う岩石群のなかに身を潜めた。周囲を注意深く探る影。センサーには何も映ってはいないが、何者かが跡をつけていることはそのかすかな気配で感じ取ることが出来た。
「正規軍ならとうにまいているはず……。まして身を隠す必要もない。やはり忍か?」
一般のMSでは考えられぬほどに明度を落とした暗い操縦席には、機体色同様に暗闇色に塗られた宇宙用操縦者服に身を固めた男が息を殺して乗っていた。この者の名はガリョウ。やはり忍である。
ふいに背にしていた岩石の後ろから気配を感じる。ガリョウはしばし様子を伺いながら、機を見ると一気にそこから離れる。刹那、岩石の背後に潜んでいた岩肌色のジン、忍用に不要な装飾、装備を排し、忍刀のみを得物とするそれが、一度に三機躍り掛かる。
「ちぃ!」
一度に振り下ろされる三振りの刀を掻い潜り、影は疾風のように込み入った岩石群をかきわけて走り去る。しかし相手もさるもの、一時ほどの間、距離を開かせる事なく常人の目では追えぬ速度で、ぴったりとその跡を追跡して行った。
「ちぃ、仕損じたか!」
やがて追撃を一時断念した彼らのうちの一機、参の文字を胸に描いた機の操者が吐き捨てた。だがそれを弐の文字の操者がなだめる。
「止めておけ、参」
「ですが兄者!」
「奴こそは噂のSEEDの影忍。そう易々と討てる相手ではないわ」
壱の文字の長兄が参を諭した。
「SEEDの影忍!あやつが……」
「あやつの機体、大いに忍びの装備に手を加えられてはいるが、まごう事なく連合の新鋭機。ザフトの手にも渡ったと言うGよ」
ガリョウの駆る機体。それは連合の秘匿兵器、Gシリーズの一つデュエルが原型であった。このデュエルは装甲こそ連合の最新技術の粋であるPS装甲ではなかったが、中身そのものはザフトに強奪されたそれと全く同じ物であった。
ヘリオポリスが襲撃される一月ほど前に、ガリョウの同門の忍に奪われ、その存在とデータがザフトに売られた。ザフトのクルーゼ隊がヘリオポリスの襲撃を決定したのもこの情報によるものである。その者は途中の内紛で負った傷が元で息絶えたのだったが、そのデュエルGは影忍として作りかえられ、ガリョウに託されていたのだ。
「だが、このまま逃がす訳にもいくまいよ兄者!」
「それはわかっておる……。弐よ、きやつが逃れたのは巳の刻の側であったな?」
「おうよ」
「確か無人のプラントが近い。網をはるか……」
「そこだ兄者!先回りと行こうぞ!」
「おうよ!」
この周囲の地理に詳しい彼らは、音も無く、そして瞬く間にその場から姿を消していた。
心を刃で隠して忍書く。その主とした役割は古の時代と同じく、兵力撹乱・暗殺、戦場においては要塞攻めを最も得意としていた。
この戦国の時代、忍者は最も活躍したと言われているが、彼らの常人、あるいはコーディネーターさえ超えると言われたその超人的な技量は、あくまで闇に閉ざされていた。
「バッテリーの予備は残り一刻分……。そろそろ補給を受けねば」
操縦席のモニターにはバッテリーの残量が表示されていた。PS装甲ではないため、その活動時間は本来のデュエルと比べれば格段に長くなっている。それに忍の持てる秘蔵の技術を用いて改良を加えているため、その活動時間は本来の数倍にも達していた。
だがそれでも、核動力と比べれば格段に活動時間は短い事は否めない。移動補助用と電力供給パネルを兼ねた凧型の補助装置もあるのだが、このような急がねばならず、秘匿性も重視される状況下では使うこともままならない。そこで彼ら忍びは各々が予め、人目につかない場所に補給用のバッテリーを隠しているのである。そしてガリョウが向かっていたのも、そんな場所の一つである放棄された無人プラントであった。
隔壁に張りつくガリョウ。ゆっくりとバッテリーを隠してある場所に近づいていく。
「奴らの狙いはこの密書……」
ガリョウはその懐に収めていた密書を取り出した。
その密書は、巻物に姿を変えたナチュラル用のMSのOSであった。ザフトのMS開発者の一人が、己の腕を証明せんと書き上げたもので、これを組み込んだMSはナチュラルの幼子でも手足のように動かせたと言う驚くべきものであった。無論このようなものが連合の手に渡ってしまえば、ザフトの優位など一夜にして吹き飛んでしまうであろう。故に秘中の秘としてその存在は隠されていたのだった。
だが、そのOSを書き上げた者は己の会心の作をそのまま封印されることに耐えられなかった。その者は己の腕を見せんがため、それだけのために同胞を裏切り、連合に向けて己の書き上げたOSのプログラムを忍、ガリョウの親しい者に託したのだった。
しかしそれを見逃さぬザフトではなかった。たちまち極秘裏に網を張り、激しい追撃の末にガリョウの友はあえなく命を落としたのだった。正規軍はそのものを爆殺したことで密書をも焼き払えたと判断していたのだが、そうと見なかったのがザフトに組する忍たちであった。彼らはその密書を見つけ出し報酬を得んと、その足取りを追い、ついにガリョウの元まで辿り着いたのだった。
「友よ、我が命にかえても必ずやこれを連合の本陣に……!」
壁面を蜘蛛のように這いながら進むガリョウ。だが、指先から伝わるかすかな振動が、何物かが近づいている事を彼に伝えた。
「動きを読まれた?!相手は手慣れか!」
隔壁を滑るように近づいてきたのは、先ほど交えた相手であった。
影忍は腰を低く保ったまま、背負った刀を抜き放ち、一太刀にせんと飛びかかる。しかし、相手は一機だけではなかった。如何なる手段を用いたか、一機に見せかけていたそれは三機に弾け、同時に襲いかかったのだ。
「ちい!」
この姿勢で三機同時の攻撃を回避する術は、さしものガリョウにもなかった。だが、影忍には秘中の秘である奥の手があった。
「手応えあった!」
参は嬉々として叫ぶ。
「待てい!様子がおかしいぞ!」
弐は異変に気が付いていた。
「あやつに刃が通っておらぬ!奴めまさか!」
三機から同時に切りつけられた影忍であったが、装甲の幾つかはともかく、肝心な場所への損害は受けていなかった。そう、影忍は極々僅かな部分に密かに手に入れたPS装甲を用いていたのだ(両手の肘、足の皿、踵。そして操縦席回り)。攻撃をかわせないと見たガリョウはそれらの装甲を起動させ、意図的にその部位に攻撃を当てさせる事で三兄弟の攻撃を切り抜けたのだった。
「次はこちらの番だ!」
影忍はその腰に下げていた袋を高々と掲げて中身を噴霧した。周囲の景色が徐々にぼやけ始め、やがて何が虚で何が実なのかさえ曖昧になっていく。
「おお!」
「な、なんじゃこれは?!」
「あやかしか!?」
「こ、これは!」
『ミラージュコロイド!』
ミラージュコロイド。これは光を屈折させ、張り巡らした機体の姿を隠すのに用いられた。しかし本来、この状態を維持するには特殊な磁場を巡らせねばならず、燃料消費もまた激しかった。そこで解析に成功した忍たちは、己のみの身を隠すのでなく、相手を撹乱させる為に、好んで幻覚剤をそれに混ぜて使用することを好んだ。
「まずいぞ!ここは風上じゃあ!」
「視界に頼れん!一旦散れ!」
センサー類が利かなくなった彼らは、懸命にその場から逃れようとした。
なおここで捕捉しておくが、風上・風下というのは太陽から吹き込んでくる太陽風、その方角を事を指す。
「うぬぅ!」
同時に飛んだ三機であったが、真っ先に狙われたのは動きが未熟であった参であった。彼は完全に後ろを取られていた。懸命に離そうと飛びまわるも、ぴったりとその名の通り影のようにまとわりついた影忍から逃れる事はできなかった。
「あ、兄者ぁ!」
逃れられぬと真後ろに刀を振りぬいた時が参の最後の時だった。逆に隙だらけになった真正面に回り込まれ、一刀の元に真っ向から両断されてしまったのだ。名だたる刀匠が鍛えた業物である影忍の愛刀サミダレの威力は絶大である。
「まずは……、一匹!」
参を始末した影忍はそのまま姿を隠し、機をうかがう。無論他の二機の姿はここには無く、彼らもまた次の機会をうかがっているはずだった。
「兄者、参の奴が討たれたようじゃ」
弐が長兄である壱に告げる。だが壱はといえばまるで動じる様子も無い。
「背後から切られるとはな……。あの腕ではいずれ命を落としたことだろう」
「だが仇を討たねばなるまいぞ?」
「その必要もない。我等が一族は弱き者は必要とせぬ」
彼らのヘルメットに記されていたのは炎の紋章。すなわち、古より闇に生きてきた不知火の一族であった。旧二〇世紀の後期に一度決起したものの、大和政府に敗れて以来表舞台に立つことを諦め、統一された意志も無く細々と忍の技術を伝えていた。そして人類が宇宙に進出してからもその技術と忍術を合わせた技を持って、この時代にも一族の名を伝えていたのであった。
「しかし密書は奴めが握ったままぞ?」
「かまわぬ。元々ザフトに恩義も義理もない」
「だが仇は討たねばなるまいて」
そう言い残すと弐は音も無く影忍を求めて飛び出していった。
「勝手にしろ……」
何を思うのか、壱は一人その場に座り込んだままであった。
(敵は多勢。故に本来こちらから切り込むのは得策ではないが……、時間がない!)
ガリョウは這うようにしながらも残る二人の敵を求めていた。如何に消費電力を削ろうとも所詮蓄電池方式で動かねばならない身である。その電力は刻々と失われてゆく。まして夜通し駆けた身であるから、残された稼働時間もあと僅かになっていたのだ。
推進剤を使わず、指で這うように外周をめぐる影忍。ふいにその指先が毛髪ほどの線に触れた。刹那、周囲に仕掛けられていた爆薬に引火。辺りはたちまち火の海になった。
「あの程度でくたばりはすまい!」
弐は炎上するその一帯に姿を現した。仕掛けておいた高性能爆薬は赤々と周囲を照らし出す。しかし動くものなど何一つ見出す事は出来なかった。
「そこか!」
弐は膝に装備されていた八方手裏剣を炎の中めがけて投げ放つ。するとそこから弾丸のように飛び出すものがあった。影忍である。
「炎の中に身を潜めようと、我の目は誤魔化せぬ!」
影忍は一転して攻勢に打って出た。十字手裏剣を繰り出し、飛びかかって急所を狙う。だが敵もさるもの、手裏剣を刀で跳ね返すと影忍の一撃を避けて手投げ弾を投げ返してきたのだった。
「我は一族きっての爆薬使いよ!先ほど斬られた参と同じと見るなぁ!」
手投げ弾を畳の替わりの外壁返しで防ぐと、攻撃を諦めたのか影忍は一目散に逃げ出した。無論弐はその後にピタリと張りつく。
「どうした、逃げてばかりでは勝てぬぞ!」
一方ガリョウは周囲の様子を伺いつつ、再び打って出る機会を狙っていた。ピタリと背後につけられながらも、冷静さを失わず状況を的確に見定めることができるのは、彼がそれだけ優れた忍ゆえの事である。
(あれを使えば!)
一瞬視界に相手の仕掛けの線が掠めたのをガリョウは見逃さなかった。意図的に速度を落として立ち止まると、刀を構えて迎え撃つ。
「逃げ切れぬと悟ったかぁ!」
無論仕掛けた本人は、己の仕掛けの位置を知らぬ訳ではなかった。影忍の背後に仕掛けがあることは当然分かっている。それ故に彼は影忍を追い詰めたと踏んだのだった。
「死ねぃ!」
影忍目掛けて弐は飛び掛る。その直後影忍は大きく飛びあがった。勢いの付きすぎた相手を自滅させようという策である。
「見抜けぬとでも思ったかぁ!」
あと僅かというところで急停止すると弐はその勢いで直上目掛けて飛びあがった。距離は至近。一撃のもとに仕留めんと刀を突き上げる。
「?!」
目も眩む閃光が辺りに走った。影忍は至近距離から閃光弾を使用したのである。強烈な光に打たれて弐の目はたちまち暗闇に包まれた。
「終わりだ!」
影忍は弐の背中を踏み台のように一蹴りした。勢い良く真下に叩きつけられる弐。そしてその時、彼が仕掛けた線に触れたのだった。
「あ、兄者ぁ!」
まともに爆風に晒された弐。もちろん忍用に軽量化され装甲を薄くしてあるジンに耐えられるものではなかった。五体はバラバラになりはて、断末魔の悲鳴を残して弐は散華した。
「……、何故黙って見ていた?」
炎の向こうにうっすらと見えるゆらめきにガリョウは問うた。
「貴様の腕前見せてもらった」
やがて消え去った炎の向こうにいたのは、胸に壱の文字が記されたジンであった。
「密書やら仇討ちやらはどうでもよくなってな……。お主、このワシと手を組まぬか?その腕、このまま野に晒すのはあまりにも惜しい」
壱の男は油断させる為の策略としてではなく、本心からそう思っているらしかった。
「何故だ?!」
「簡単なことよ。弱者は消え失せ強者のみが生き残るのが我ら忍の道。今はザフトが優勢なれど、先はまだ見えぬ。故に組もうというのだ」
腕の立つ者同士の衝突を避け、むしろ逆に手を組む事でこれからの動乱の世を渡っていこうというのがこの男の腹であった。だが、ガリョウは首を縦には振らなかった。
「惜しい腕だが……、やはり斬らねばならぬか!」
言い終わるや否や壱は刀を抜いて襲い掛かってきた。反射的に刀を構え迎え撃つガリョウ。だが壱の恐るべき攻撃速度は、これまで打ち倒した二人とは段違いであった。かろうじて急所はかわしたものの、その一撃で肩の装甲の半分が切断されていた。
「どうした、この程度も見きれぬのか?!」
「早い!何という動きなのだ?!」
そのジンの速度は圧倒的だった。恐らくは相手もまた微量にミラージュコロイドを撒いて目くらましにしているのであろうが、そのような小細工が問題なのではなかった。あまりの早さにセンサーが相手を捕捉できなかったのだ。
「フハハハ。どうしたどうしたどうしたぁ!」
右と思えば左、左と思えば上。変幻自在に四方八方から襲い来る壱のジンの前に、さしもの影忍も徐々に五体を刻まれて行った。
(駄目だ!一体どうすれば?!)
その時、閃光のようにガリョウの頭に閃くものがあった。それは修行時代に師から告げられた言葉だった。
「目だけに頼るな!全身で感じ取るのだ。そしてそれを極めればやがて心眼をも会得できる。ゆめゆめ忘れるでない!」
目に見えぬ相手と対峙した際での対処法がそれだという。無論常人に出来る芸当ではなく、例え忍であってもその領域に辿り着けるのは一握りもいる訳ではない。だが、ガリョウは師のその言葉に全てを賭けた。
「全身の感覚を研ぎ澄まし、心眼に到る!ならば!」
ガリョウは影忍のメインカメラの電源をあえて落とし、瞳を閉じて全神経を刃の先以上に研ぎ澄ました。
「馬鹿め!観念しおったか!」
メインカメラの電源が落ちたことを見取った壱はそのまま背後から一気に斬りかかってきた。
「!」
ふいに背後からの気配を感じ取ったガリョウ。メインカメラの電源も落ち、他のセンサーも宇宙空間では殆ど役には立っていないはずである。しかし、研ぎ澄まされた彼の感覚は確かに相手を捕らえていた。そして相手がもう一撃を仕掛けてきたとき、彼の心の水面上で種子が大きく弾けたのだった。
「見えた!心の種子の一弾き!」
その瞬間、影忍に備わっていたもう一つの機能が目を覚ました。胸部装甲の下に隠されていた巨大なセンサーが姿を現したのだ。そして同時にコックピットのメインモニターが赤々と輝き、全周囲の全ての情報が映し出される。これこそ、操縦者のSEEDの覚醒に応じて開放される、影忍の真の姿であった。
「もはや逃しはせん!」
「何とぉ!」
虚空を一閃したかと思われた直後、どうと倒れ伏したのは壱のジンであった。致命的な一撃であったため、もはや助かる見込みは無いであろう。
「ふふふふ……、見事。と言いたいが。こっけいな話よのう……」
火花が飛び散り爆発寸前の操縦席。息も絶え絶えになりながらの男の言葉に、ガリョウはじっと聞き入っていた。
「ワシら雑兵がきばったところでどうにもなるわけでなし……、天下がどうなるわけでなし……」
「諸行……、無常」
「如何にも、な……」
そう最後に微笑を残すと、ジンは二人の後を追うように炎の中に沈んで行った。ガリョウは瞳を閉じ、小声で念仏を唱えると、彼もまた何処とも無く闇の中に帰って行った。
C.E.七一年。この戦乱の末期になって連合は、懸念であったOSの問題を解決させ、圧倒的な生産力を背景に数多くのMSを繰り出し、形成を逆転せしめた。そしてその連合がナチュラル用のMSのOSに正式に採用したそれは、同時期にようやく調整の終わったオーブ製のそれよりも上回る性能だったと言う。
オーブ側はこの頃、歴史に名高いコーディネーターの天才少年によって改良されたOSを基にしたものを使っていたと言われ一日の長があると思われていた。しかし、オーブでの攻防戦においての状況を見るに付け、M1アストレイとストライクダガーの個体性能にはさほど差が無かったというのが当時の判定であった。
常識的に考えればアークエンジェルから情報らしい情報が得られていなかったはずの連合、すなわち北大西洋連合が何故それを凌駕する性能を持つOSを開発できたのかということが問題となっていたのだが、その開発には流出したザフトのOS技術が用いられていたというのが、当時のもっぱらの噂であった。
だが、その陰に忍と呼ばれる存在が跋扈していた事、それ以前に忍なる存在がそもそも本当に存在していたのか、ましてフリーの傭兵たちでさえ極々一握りの者たちだけが保有していたと言うMSを、そんなあやふやな者たちが所有していたのかを証明する資料は何一つ残されてはいない。
第一回 了
2010-11-01 さらば我が最初の拠点

http://plaza.rakuten.co.jp/usersupport/diary/201008250000/
[ご挨拶]
平素は、Infoseek をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
インフォシークでは、2001年より、無料ホームページサービス「インフォシーク iswebライト」、および有料の「インフォシーク iswebライト 広告非表示オプション」を提供してまいりました。
しかしながら、昨今のインターネット環境の変化を受け、弊社内にて慎重に検討を重ねた結果、誠に勝手ではございますが、サービスを終了させていただくこととなりました。
「インフォシーク iswebライト」、および「インフォシーク iswebライト 広告非表示オプション」を長年ご愛顧いただいた皆さまに、ご迷惑をおかけすることを深くお詫びします。
[サービス終了概要]
■ サービス終了予定日
2010年10月31日(日) (11月1日に終了作業を行います)
■ 終了対象サービス
というわけで私の最初の拠点、というか本拠地だった
「Zi-EX天神 SAGA」
http://zitennzinn.hp.infoseek.co.jp/
ともお別れのようです。今までありがとう(´;ω;`)ブワッ
2010-08-08 本日の買い物

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今後もこういう再掲ネタ行って下さい。お願いします。
>鋼鉄王ネタ
原作で容姿がそのまんま不知火党だったんで拡大解釈いたしましたw