会社の中で「キツい女」を生み出すのは何か

日本IBM専務・内永ゆか子の「わたしのビジネススタイル」第2回「会議で言うべきこと、部下とのつき合い方」(BP Online:2007/01/09)
このタイトルより、サブタイトルを読んだ方が記事内容を的確に表していると思う。
それは「なぜ女性は「キツい」と言われてしまうのか」
痛い言葉だ。あまりにも覚えがありすぎて。
そして記事前段は自分のことを言われているかのような言葉のオンパレード。たとえばこんなくだり。

 最近、企業で講演させていただく機会が増えました。ある講演の後に企業の方とお話していると、その方がこうおっしゃるのです。「今、うちにとても優秀な女性がいるんですよ」と。そこで私が「そうですか。ぜひ、彼女をもっと重用してください」と言うと、そこにいる男性皆が、顔を見合わせて笑うんです。「いやぁ、申し上げにくいけど、彼女は一言多いんですよね。超キツくて…」と。

 これはどういうことか。(仕事で)言わなければならないことがあったとしても、男性同士の場合はその6割も言わない。「言わないけど、分かってるよね」「察して、阿吽の呼吸でやってほしい」という前提があるんです。これが、Good Old Boys’Network独特のカルチャーなんですね。女性はこれが分かっていないので、男性が言わないでいる残り4割のことまで言ってしまい、「一言多い」と言われてしまう。

「正論でやりこめる=仕事をきちんとする」だと思い込んでしまう人がなぜか女性に多いというのは経験則からそう感じる。と言うか、自分自身がまったくそうだった。若気が至りまくった思い出したくない思い出満載だ。
また周りの男性たちも、そういう「勘違いはねっかえり」をむしろ面白がっている様子で、正面から論破しようとする先輩はいなかった。それを自分が正しいからだと思っていたのは大間違いで、今から思えば単に陰で嘲笑われていただけなのだ。「バカなやつ」「世間知らずにもほどがある」「あの人にあんな口のききかたして、あとでどうなるか思い知れ」と。

 しかし女性たちは、こういった仕事上のノウハウやコツを、教えてもらっていないのです。男性たちは、どこで教えてもらっているのか。それは、時々一緒に飲みに行ったりして、「あの人はあの時こう言ったが、課長の対応はまずいよね」と教えてもらったり、やってはいけないことをして失敗したりすると、「おまえ、そういうことしちゃだめだよ」とフォローしてくれる。男性はこうして、(組織の中で)“教育のコースにはない教育”を受けることができるんです。

女性だったからこういうことを教えてもらえなかったのか、自分という人間が仲間に値しないと見られたからなのかは正直何とも言えないが、少なくとも彼らにとって私は「仲間」ではなく「異分子」「敵」扱いだったのだと思う。それが当時の自分にはわからなかったのだ。あと推測できるのは、私の入社当時は女性は結婚退職または出産退職が当然の時代だったので、長い目で見た社会人としての教育は不要だと思われていた、という可能性はある。そんなことは本人まったく考えず、学級委員の延長のようなやり方で会社も通用すると思い込んでいたのだから、今となっては顔から火が出るほど恥ずかしい。遠回しに教えてくれた人もいたかもしれないが、当時の私は聴く耳を持たなかったのだろう。

記事後段は、「ある時期の自分にとって、部下は完膚無きまでに叩きのめす相手だった」という告白。

 4回も仕事が替わると、行く先々で「このポジションに就けたのは、女性だからだ」という目で見られます。私はそれに反発して、「私はこの仕事をやりたかったんだ、私にはできるんだ」と思うようにし、それを示したいと必死でした。

 この頃は、私自身も人に対してキツく当たっていたと反省しています。いろいろな試練があるので、私自身ウニのように棘がピンピン張っていたんですね。そして「私はデキるのよ」と周囲に分からせるために、「あなたのロジックは違う」と相手を理論で説き伏せてしまう…。

 3つめの部署で次の異動が決まった時、私の仕事を支えてくれていたある人に聞いてみたのです。「今までいろいろ迷惑をかけたけど、私のためになると思ってアドバイスをくれませんか」と。すると彼は一言、こう言ったのです。「部下の人、そして部下の仕事を、もっと好きになってください」

 これは、本当にこたえました。それまでの私は、部下が好きじゃなかった。私にとって部下とは、「私ができるんだ」ということを証明する相手に過ぎなかったのだ。完膚無きまでに叩きのめす相手だと思っていた…。この一言を聞いた時、本当に涙が出ました。

記事によるとその後「私ひとりでは何もできない。もっと皆を好きになって、皆に活躍の場を持たせることが大切なんだ、と気づきました。」とあり、行動が変わったとある。

女性であるがゆえに“Good Old Boys’Network”から排除され、紆余曲折を経験し、しなくてもいい苦労を散々してきたパイオニアの方の言葉なので、それはそのまま受け取っておきたい。
ただ、失礼ながらこの年代(40代後半から50代)の女性役職の方には似た行動パターンをよく見かけるのはなせだろう、と感じたのは事実。そういう「強さ」がないと女性であるハンディを乗り越えて昇進することはできない時代を生きて来られた方々、ということかもしれない。