第47会「みくに会」非公式レポート(4)。7月2日中盤戦。

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 目が覚めると,わたしは時間をつぶせない人間なのでさっさと講演会場(=幹事部屋=宴会場)に行ってしまう。プロジェクターが準備されていて,Sさんがリハ中。漬け物バケツにしか見えない採集装置を幹事たちに説明している。
 
 隅の長机では若手2人がいつものように展翅。午前の収穫のヒゲナガガであるらしい。昨日から,さっぱりチョウがいない,蛾がいないと人々は口をそろえてぼやいていたのだが,そんな中でも採る人はしっかり採っているのが紋切り型だが世の中の常らしい。社会全体の流れからは浮いているだろう蛾屋さんたちにおいてさえも「紋切り型」が通用してしまうのは,わたしには面白い。
 
 天気がおかしい。どうも雨模様である。今夜はトラップは厳しいかもしれない。川北さんの強力テント型トラップが宿舎の軒先へ移動。時々風がつく。どうにも不安である。今夜はダメかも。飲み会専? せっかくなのにもったいないなあ。
 
 時間(16:00)になるときちんと人が集まってくる。今回唯一の講演の始まりである。
 演目は,昨年出版された『北海道の蝶と蛾』から,「北海道特産の蛾について」。わたしだけでは1時間もたないからみなさん質問や報告おねがいします,とは講演者(共著者)の桜井さんの前置き。

北海道の蝶と蛾 (昆虫図鑑)

北海道の蝶と蛾 (昆虫図鑑)

 この本については以前拙ブログで紹介したことがある。とりわけミクロレピの強烈さは他のハンドブックには類を見ないレベル。会場で手を上げてもらうと参加者のほとんどが購入済みである。
 
 講演内容は本から北海道固有種(思いのほか多い)の画像を抜き出して解説していくもの。すばらしい解像度でアップの蛾像がスクリーンに映し出される。
 集まっている正統蛾屋さんとはおそらく関心が異なっているのだろうだが,外野傍系のわたしにとっても面白い内容。蛾も楽しいのだけれども,蛾屋さんたちも面白い。
 チェックポイントが幾つか。

  • 道内では沢山いるのだけれど,内地にはいない種。
  • 文字通りの珍品。
    • なんとか「狙って採れる」もの。
    • 「狙える」のだけど生息地が限定的だったり発生時期が短期であるもの。
    • 単純にほとんど「珍品」なもの。
    • 記録が1例しかなく,怪しげなもの。

などなど。
 例えばヒダカミツボシキリガは「狙ってなかなか採れない」代表で,その場の挙手による調査では採集成功者は数名。今回不参加のある人は何年も北海道に通い詰めて未だ得られずということだそうだ。いつ見ても展翅している東農大(網走)の学生さんが採集者なのはさすが。講演者によれば,山の中というよりも,牧草地の合間合間に残存している林間にいるのだという。難儀な話である。
 わたしは(コレクター的な感性は皆無なので)珍しい蛾にはほとんど関心がない。初見の蛾にたまたま出会えれば嬉しい,といった程度である。その意味で,ハネナガコバネエダシャクが北海道種だったのはあらためて驚かされた。あれは Trichopteryx の中では個性がはっきりしていていい蛾だよ。
再掲。

 大写しになった蛾を見て,人々からは,これは○○○○で採ったことがある,まだ持っていないよ,ダメだった等の合いの手がどんどんに入る。正統派の蛾屋の情熱は只者ではない。
 さらには故某氏が北海道で記載した(疑問に附されていた)蛾数種を確認するとすべて「誤同定」だったという話も。
 1時間持たないというのは講演者の謙譲に終わって,むしろ時間が押し気味になったほど。最後に出てきた漬け物バケツ型採集器についても質問が続出する。バケツに入れる毒液にクロロホルムを使う人もいるのだという。それってかなり危険である。人間が採れかねない。
 今後水銀灯の製造が規制されてLEDだけになったら困るよね,今使っているライトを大切にしなきゃいけないね,とか雑談もいろいろ。
 
 窓の外は雨がざんざん。多少の雨なら平気でも,こう降っては大抵の蛾は無理である。
 
(5)に続く。