yyzz2;虫撮記【虫画像・他】

昨年までは虫撮りの記録および虫の話題です。

苫小牧から転勤して,現在は遠軽町で活動……していません。

HPはhttp://yyzz2.sakura.ne.jp/。Twitterは更新連絡と愚痴。https://twitter.com/yyzz22

現在,心ならずも完全不定期に陥っています。

18-02-03(土)

[][][]Zaranga属更新。ウォーターハウスの図鑑。 Zaranga属更新。ウォーターハウスの図鑑。を含むブックマーク Zaranga属更新。ウォーターハウスの図鑑。のブックマークコメント

 久しぶりのブログ。生きていたのか死んでいたのか。自分ではよく分からない期間が続いていた。表向きは生きていたようである。でも油断はできない。 11月後半から精神の糸が切れていて,精神の粒のようなものがブラウン運動的な状態にあったようだ。冬の前半はいつもこうだ。

 「みちのく会」までにナミシャクの学名については終わらせておく予定だったが全然無理。文献資料も不足していた。北大へコピー取りに行かなければならないが,年休をそうそうに消費してしまうわけにもいかない。

 

 とりあえず,アオバアオシャクの属名の"Zarange"がほぼ解明したのでHPを(やっとのことで)更新。

 後者は9年振りの改正。9年前は Wikipedia に「Zaranj」の項目はなかったはずである。ネット上には日々新しい知識が蓄積されて,わたしの過去の文章は徐々に使い物にならなくなっていく。

 せっかくブログを書いたので,Zarange属のタイプ種である Zaranga pannosa Moore, 1884 の図版を貼っておく。

f:id:yyzz2:20180203083015j:image(クリック先から拡大可)

 Waterhouse, 1882-90, Aid to the identification of insects 2, pl. 161, fig.1。

 著者のウォーターハウス(1843-1917)はイギリス自然史博物館勤務。専門は甲虫の分類であるようだ。この本はとにかく贅沢な作りが目を引く。例えば第1巻の図版1

f:id:yyzz2:20180203083014j:image(クリック先から拡大可)

 Percosoma sulcipenne というタスマニア固有のオサムシモドキである。巻頭のセレクションとしてもただものではないのだが,1ページ1種。

 全2巻本の図版189枚のうち100枚以上が1種だけである。

 さすがに第2巻の後半からは詰め合わせ図版になる。もともとは3巻ものにする予定だったのかもしれない。

 

 ところで書名『昆虫同定の手引き』。この本にはほとんど解説文がない。だからおよそ実用的とは思えず,詐りありである。著者の序文によれば,図版にいちいち解説文を書くとただならぬ労力が必要な上に,大部な高額本になってしまうのでマズイ。原記載論文をあげておくので,そちらを参照されたい,とのこと。なるほど図版に住所が書いてある(種名の下。Bates, Cist. Ent. , II (1878), p307)。まあ卓見に属するのだろう。

 大部にしたくないなら,すべての図版を貧乏人の標本箱のように詰め合わせにすればいいと思うのだが,そういうものではないらしい。

 今のようにネットでほとんどの原記載を読むことのできる時代ではないのだから,一般の虫好きにとってはえらく不親切に思えるのだがどうなのだろう*1。きっとファインアートの画集のような気持ちで購入しなさい,という相場なのだろうねえ。

 

*1:現代だって原記載論文チェックには結構なエネルギーが必要である。しかも,読んだって同定に使えるとはわたしには思えない。そもそも,同定って本当は標本と標本との付き合わせなんでしょう。記載文では厳しい。分からない

北の国から北の国から 2018/02/19 12:57 ウォーターハウスは糞虫屋さんにはつとに有名ですね。オサムシモドキとされた図はヒョウタンゴミムシ亜科の種のようにも見えますね。更新を心まちにしておりました。

yyzz2yyzz2 2018/02/20 20:40 どうもです。
100年200年前の人々に因縁を付けるようなメモやら切れ端やらは,たまってきているのですが,長文を書く気力が幾分不足がちです。
春にはなんとかなればいいのですが。
とにかく室温が20℃を越えないので長時間PCに向かってられないのです。
Percosoma属は調べた範囲ではBroscinae亜科らしいのでオサムシモドキにしました。
それにしてもどうしてタスマニア固有種の同定の手引きを。誰得なのでしょうか。

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17-10-08(日)

[][]エゾヒグマの分類。Hastina属・Euhampsonia属修正。アオセダカシャチホコの図版。 エゾヒグマの分類。Hastina属・Euhampsonia属修正。アオセダカシャチホコの図版。を含むブックマーク エゾヒグマの分類。Hastina属・Euhampsonia属修正。アオセダカシャチホコの図版。のブックマークコメント

 今は大学も営業が大変である。教授たちが研究に専念できるご時世ではないらしく,昨日は北見の高校で北海道大学の宣伝のための出前模擬授業があった。本来招かれざるわたしが,顧客である高校生に混入して,しかも一番前の席を陣取って何か質問してやろうと身構えていたのは言うまでもない。

 

 北海道のヒグマについて,ミトコンドリアDNA解析による系統分類から地理的移動を明らかにするという講義。

 亜種エゾヒグマ Ursus arctor jezoensis (北海道の大熊の雄熊)に3系統があるのは頭骨の測定によってすでに知られていたという。今回の話は,この3系統と同系列のヒグマのそれぞれをヨーロッパ・北アメリカに見いだしたというもの。これによってヒグマの歴史的な移動経路を推測できる。

 よく分からなかった。北海道亜種が亜種分類されているからには,ヨーロッパやアメリカの亜種とは形態などに違いがあるのだろう。遺伝的に近いのなら亜種認定されるほどの差異があるのだろうか? 蛾の亜種分類は結構シビアだぞ?

 終了後。

 Q:エゾエーンシス亜種は他の亜種に対してどのような形態の違いがあるのですか。

 A:分布地域による亜種区分です。記載的には「小さい」というぐらいです。

 Q:わたしは虫の分類に関心のある人間なのですが,哺乳類の亜種にはそのような分布によるケースがあるのですか。

 A:虫のようには交配することが難しいので,地理的なものが多いです。

 昆虫の亜種分類で交配が行われるかわたしには分からない(他種を撚り出す時にペアリング実験をが行われるのは知っている)が,すくなくともクマについてはその程度の基準での亜種分類だったのだな。実践的には違いない。

 これは勉強になった。専門家の話を聞くのはだから面白い。

 

 HPの手直しが続く。

  • Hastina属
    • ネットサーフしていたら,サンスクリットに引っかかったので追記しておく。
  • Euhampsonia属
    • 原記載の確認。

 せっかくだから,アオセダカシャチホコの原記載の図版。

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オーベルチュールの1877,Études d'entomologie 5。http://biodiversitylibrary.org/page/10426388

だいぶん感じが違う。前翅の色の濃い部分がずいぶん強調されている。

 わたしの撮った写真ではこう。再掲。

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 ついでだからどんどん貼ろう。松村松年の1921,新日本千蟲圖解 4。http://biodiversitylibrary.org/page/34535943

f:id:yyzz2:20171008184504j:image

モノクロ絵なのでよく分からない。

 つぎはザイツ。1915, Die Gross-Schmetterlinge der Erde 2。http://biodiversitylibrary.org/page/9921506

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ああ,なるほどね。まあ,そういうものなんだな。

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17-10-03(火)

[][]Togepteryx属調べ直し。松村松年におけるタテスジシャチホコの標準和名の混乱について。 Togepteryx属調べ直し。松村松年におけるタテスジシャチホコの標準和名の混乱について。を含むブックマーク Togepteryx属調べ直し。松村松年におけるタテスジシャチホコの標準和名の混乱について。のブックマークコメント

 HPのシャチホコ修正中.Togepteryx属の調べ直し

 どんどん面倒な事案が発生する。

 

 タテスジシャチホコの属名の原記載は,松村松年, 1920, 動物学雑誌 32 379: 149 (PDF)。

 すると,こう。

(二三) ハガタエグリシャチホコ Togepteryx (n.g.) velutina OBTH.

とあって,これが学名的に現「タテスジシャチホコ」。そしてすぐ後に2度目の

(二四) ハガタエグリシャチホコ Hagapteryx admirabilis STGR.

で,こちらの学名は現「ハガタエグリシャチホコ」で合っている。ならば(二三)が単純な誤記載かといえばそういう訳ではなくて(!),「タテスジシャチホコ」の和名は同書のp. 146に

(一五) タテスヂシャチホコ変種 Notodoncta rothschildi WILEM. et. S. var sachalinensis n. var

として出てきている。じゃあ(二三)が本当は何のつもりだったかかといえば,分からない。ちなみ,Notodoncta rothschildi は現「ウチキシャチホコ Notodonta dembowskii」である。さあて,ごちゃごちゃですよ。

 

 それで翌年(1921)の『新日本千蟲圖解』第四巻のp. 811

(848) たてすぢえぐりしゃちほこ Togepteryx velutina Oberth.

画像は,第五拾九圖

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これは現「タテスジシャチホコ」で間違いない。

 ところで旧「タテスヂシャチホコ(現ウチキシャチホコ)」は依然として1921年では「旧」のままである。画像は第五拾八圖

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モノクロだけどこれも「ウチキ」でOK。

 

 というわけで,和名「タテスジシャチホコ」がいつからどこからTogepteryx velutinaに用いられることに確定したのは不明である。新属Togepteryxの原記載段階で致命的に混乱しているのだから始末に悪い。

 本気で調べるつもりなら日本語の論文や図鑑をしらみつぶしに当たらねばならないのだが,荷が重い気が重い。だから標準和名は面倒なのである。和名の面倒までは見られないよ。

 

 もののついで。オーベルチュールの原記載(Drymonia velutina)からの画像。

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 Oberthür, 1880, Études d'entomologie 5: pl. 8

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