yyzz2;虫撮記【虫画像・他】

昨年までは虫撮りの記録および虫の話題です。

苫小牧から転勤して,現在は遠軽町で活動……していません。

HPはhttp://yyzz2.sakura.ne.jp/。Twitterは更新連絡と愚痴。https://twitter.com/yyzz22

現在,心ならずも完全不定期に陥っています。

17-02-05(日)

[]Costaconvexa属・Dysstroma属更新。Dysstroma のジェンダーについて。 Costaconvexa属・Dysstroma属更新。Dysstroma のジェンダーについて。を含むブックマーク Costaconvexa属・Dysstroma属更新。Dysstroma のジェンダーについて。のブックマークコメント

 HP更新

  • Dysstroma属
    • これが思いの外難物。学名関係者をいつも悩ませる「ラテン語の性」(さが,と読んではいけない。ジェンダーのこと)の問題である。最新の『標準図鑑』では,種小名の語尾はすべて女性形に統一された。つまり,「Dysstorma」のジェンダーを女性とみなしたということである。

 考え出すとこれは面倒くさい。『国際動物命名規約第4版』(日本語訳はhttp://www.ujssb.org/iczn/pdf/iczn4_jp_.pdf)ではこう。

(p. 30)

30.1.2

 属階級群名であって,ラテン文字への換字のみを施しそれ以外変更していないギリシア語の単語であるかまたはそれに終わるものは,標準的ギリシア語辞書のなかでその単語に与えられている性をとる。

 つまり,「ギリシア語まんまのものは,ギリシア語での性」ということ。「stroma」はギリシア語“στρωμα”そのまま。この語は「中性」である。だから厳密にやるなら,種小名語尾は中性形 -um になるべき。実際はそうなっていない。

    • サイト「Lepidoptera and some other life forms」(これは非常に便利なサイトである)の「Dysstroma」の項では,女性形と中性形が混在している。
    • みんなで作る日本産蛾類図鑑」では,「中性形」に統一されている。(これは英断だと思う)。
    • その他,「EOL」ではすべて「女性形」。
    • その他の研究者の記載文でも大抵は「女性形」。
    • 平嶋義宏,1983,やどりが 113, 114: 12 では,「中性」に直すことを主張している。

(…)Dysstromaという属名もある。前節のdys−(δυσ.)は不分離接頭辞で,“悪い”“不幸な”などをあらわす。本属は女性に扱われている。本属には8種の邦産種があるが,そのうちの7種の種名の語尾を訂正せねばならない。

 混乱しているのだが,それでも,規約を厳密に適用するなら,これはやっぱり「中性」である。ところが「EOL」に代表されるように,慣用的には Dysstroma は女性ジェンダーで扱われている。囲碁将棋用語でいうなら「味が悪い」状況である。

 さて,命名者のヒュブナーは Dysstroma の最初の蛾を「Dysstroma Russata」としていて,これは女性形である。規約では「何だか分からないものは命名者が性を指定する」となっていて,どうやら今回のケースは(すでに女性で定着しているということもあるだろうが)「命名した Hübner の意向を尊重して」という相場だと考えられる。

 

 というわけで色々大変なのである。こんな学名調べからでも「分類するとはそもそもどういうことか」とか「種とはそもそも何か」などの問に発展しかねない。分類学とはおそらく「歴史学」や「知識論哲学」のジャンルに属するに違いないと思うようになってきている。(そして,そういう問題を扱った論文がやたら難しい。困る)。

 

 おまけ。まるきりお遊戯会だね。何も考えずに見ましょう。

D

 谷山浩子は次世代あたりには忘れられる歌手なのだろうけども,もったいないなあという感想。

北の国から北の国から 2017/02/07 11:51 谷山浩子、大貫妙子などの独自の世界観、音楽性を有する創作者の評価は両極端なのでしょうね。家内はグレン・グールドの演奏を好み、初めて聴かされたときは前述のお二方の世界観に似たような、異空間に触れたようにも感じました。わたしは山下洋輔に心酔していますが。どのような楽曲、創作に対する評価も受け手がわの感性の違い(成熟とはニュアンスを異にする)なのでしょうね。

yyzz2yyzz2 2017/02/08 18:59 山下洋輔は日本ジャズの歴史に残るでしょうね。身も蓋もない表現ですが,わたし自身のの好みは別として,「(その分野での)歴史に位地を占めるのか,こぼれ落ちてしまうのか」が結局大切なのだろうと思っています。それはそうなのだけれども,それでも「世界は勝者のためだけにある」のではないわけで。我ながら屈折していますねえ。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yyzz2/20170205

17-02-01(水)

[]Carige属・Catarhoe属・Chloroclystis属更新。Emmet・平嶋批判。 Carige属・Catarhoe属・Chloroclystis属更新。Emmet・平嶋批判。を含むブックマーク Carige属・Catarhoe属・Chloroclystis属更新。Emmet・平嶋批判。のブックマークコメント

 それじゃあ「TECHNOPOLIS」から。そういう世代なのである。

D

 マニアになってくると,どのアレンジがいいとか悪いとかという議論になるらしいが,わたしはあまりこだわっていない。マニアではないのである。

 HP更新。ナミシャクはまだ始まったばかり。

  • Carige属
    • Moore の命名で案の定分からない。「Karige」という地名自体は南インド東岸にあるのだが,この蛾の採集地は北中国だという。2日間散々検索して分からないのであきらめた。アナグラムの可能性も考えたが疲れるばかりである。
  • Chloroclystis属
    • わたしがよく参照している,Emmet, 1991, The Scientific Name of British Lepidoptera, p. 175では,後節について

κλυζω(kluzô) の語根から,洗うこと,洗い流すこと。この属の種のあせやすい緑の色合いから。

 とある。たしかにあの緑はすぐに飛んでしまう。

 でも,1次資料が参照できるなら,それを確認せねばなるまい。というわけで,Hübner, Verzeichniss bekannter Schmettlinge(既知の蝶蛾目録), p. 323 へ。

 例によって,ドイツ語のヒゲ文字が出てくる(ああ嫌だ)。こうある。昔の人はこの程度の記述しかしていないのが普通である。

Die Schwingen, wie der Kopf, grünlich gefärbt, grau bandirt und schwarz gewässert.

 困った。ヒゲはともかく,綴りだか文法だかが今と違う。もともと現代独語でさえ強くない。あえて試訳(超訳に近いかも)。

翅は,頭部と共に,緑色をしていて,灰色な帯と黒い gewässert を持つ。

 独語部分は「水で洗われた」「水で濡らされた」という意味だと思われる。ドイツ語に堪能な方はぜひご教示をお願いしたい。

 だとすると,Emmet の解釈はおかしい。おそらく原記載を読んでいない疑いがある。(このようにして,わたしは原記載と辞典と自分自身以外をどんどん信じなくなっていくのである)。

 可能な解釈は,外横線の黒色部が「黒く塗られた」と表現されたことぐらいしかなさそうである。HPにはそのように記載した。(ちなみに近世では,ラテン語“clystére”が「浣腸」の意味で用いられている。単語的にはこちらの方が対応している。蛾の名前に「浣腸」を用いてもいいのだけれども,あまり気が進まないし,ヒュブナーの記述には適合していないと思う)。

 ついでに,平嶋, 2007, 『生物学名辞典』ではどうなっているかというと,“Chloroclystis”は3カ所に出てくる。しかも揺れている。

(p. 227-228)

Chloroclystis susiciosa テンスジアオナミシャク(蛾)。属名:(ギ)chlôros 淡緑色の + (ギ)klyzô 洗う,表面に(蝋を)塗る。翅の色模様から。

 

(p. 319-320)

Chloroclystis consueta クロフウスアオナミシャク(蛾)。属名:(ギ)chlôros 淡緑色の + (ギ)klyzô 洗う,洗い流す(Emmet)。翅の緑色の模様から。

 

(p. 893)

Chloroclystis susiciosa テンスジアオナミシャク(蛾)。属名:(ギ)chlôros 淡緑色の + (ギ)klysteon 洗い流すべき。翅の色模様から。

 同じテンスジで解釈が異なったりしている。それだけ昔に命名された学名の解釈は難しいということでもある。(ところで平嶋氏も原記載を見ていない? わたしの「2次資料」に対する警戒は一層強まっていく)。

 最後にヒュブナーによる図版。

f:id:yyzz2:20170201180037j:image

Geometra coronata。C. v-ata のシノニムである。 

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yyzz2/20170201

17-01-23(月)

[]生存報告および近況報告。「みちのく会」宣伝。 生存報告および近況報告。「みちのく会」宣伝。を含むブックマーク 生存報告および近況報告。「みちのく会」宣伝。のブックマークコメント

 時が流れる,お城が見える。1月後半から2月の時期はたいてい神経がおかしい。集中して何かすることはほとんどできない。本が読めないのでインプットもできない。職場では給金泥棒でしかない。

 

 虫のことは進めている。少しずつだけ。

 1月13日には北大に行って,『TINEA』や『大妻女子大家政学部紀要』の井上寛ナミシャク記載論文のバックナンバーコピーをとってきた。農学部はセキュリティがおおらかで,名前も住所も申告しないまま,書庫で本を探してコピーをとることができた。そしてコピーの半分を機械のところに置き忘れてきた。

 キャンパス内はセンター試験の受検生がうろうろしていた。35年前はわたしもその中の一人だった。もうほとんど何も憶えていない。

 

 「みちのく会」出席の葉書を出した。今年は岩手の盛岡である。でも身内が関西でホスピスに入ったりしているのでどうなるか分からない。特殊な蛾屋をやっているので,正しい蛾屋との交流の機会を逃したくないのが本音である。

 「みちのく会」の案内はまだ「日本蛾類学会」のトピックスには出ていない。2月25日(土)昼過ぎ〜26日(日)正午くらいまで。岩手盛岡「エスポワールいわて」で。

 HP下段のところのメールで参加希望を送ってもらえば,わたしが幹事に取り次ぎます。〆切りは今週。

 

[]Asthena属・Baptria属更新。 Asthena属・Baptria属更新。を含むブックマーク Asthena属・Baptria属更新。のブックマークコメント

 HPの更新。

  • Asthena属
    • いわゆる「シロナミシャク」の類。蛾は「茶地味」「縞地味」「灰地味」「白地味」といろいろと地味なのだけども,シロナミシャクは白地味。波線はあるのだけども色が淡い。眼視ではなんだか分からない。白っぽい薄茶色のものが壁に貼り付いているだけである。
  • Baptria属
    • ヒュブナーの命名。意図はよく分からない。原記載文には翅のことしか記述されていない。近い単語を調べると「潜水者」などと書いてある。要するにキリスト教の「バプテスマ」と同根の言葉である。
    • この蛾が「荒野のヨハネ」や「再洗礼派」と関係あるとは考えにくい。せいぜい洗礼式の「神父の服の色」程度のものである。でも洗礼式でなくとも彼らは黒服を着ていそうなものではある。
    • ギリシア語の『レキシコン』では,“Baptria”の語が出ていて「of Baptês」とある。それじゃあ“Baptês”とは何かというと,「潜水」および「Cottytoの祭儀の信者」とある。コチュトというのは,古代ギリシアのトラキアの地方神。アテネではディオニュソス信仰に似たスタイルの裏街道の宗教になっており,この祭儀の時に信者が沐浴を行ったことから「バプトリア」とよばれたらしい。「これが洗礼の起源である」というつもりは一つもない。もちろん,わたしが宗教ネタが好きだというだけで,蛾との関連があるのかないのかは不明である。
    • 単純に前翅の白帯を水に見立てただけかもしれない。分からない。
    • ところで,この蛾はフィンランドゆかりの蛾で(フィンランドでは“Nunnamittari 修道女のシャクガ”とよぶ。黒いからだろうね),フィンランド鱗翅学会のエンブレム(サイトの右上注目)および会報のタイトル『Baptria』に用いられている。「日本蛾類学会会報」が『TINEA』(イガ)だったりするようなものである。蛾屋さんのセンスは共通してこういうものらしい。

北の国から北の国から 2017/01/29 15:19 明かりが灯ると、蛾も人も寄ってきます、から。更新お疲れさまです。

yyzz2yyzz2 2017/01/30 19:26 >北の国さま
どうもありがとうございます。
「自らを灯明となせ,怠らず努めよ」ですね。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yyzz2/20170123

16-10-25(火)

[]『TINAE』の,シャチホコガ科の亜科分類の最新情報が来たよ。 『TINAE』の,シャチホコガ科の亜科分類の最新情報が来たよ。を含むブックマーク 『TINAE』の,シャチホコガ科の亜科分類の最新情報が来たよ。のブックマークコメント

 というわけで蛾類学会から『TINEA』の最新刊が届いた。冬の「みちのく会」で予告があった,シャチホコガ科の分子系統分析のまとめである。

 Hideki Kobayasi and Masaru Nonaka, 2016, TINEA 23, Supplement 1 。

 シャチホコガ科の324種の脚をもいでDNA分析したという。大変な世界である。わたしだったら,どれがどれの脚だか絶対に混ざってしまう。

 

 『標準図鑑』では次のような亜科分類がなされている。(List-MJ 日本産蛾類総目録 [version 2]から作成)

  • ツマアカシャチホコ亜科 Pygaerinae
  • ウチキシャチホコ亜科 Notodontinae
    • モクメシャチホコ族 Dicranurini
    • ウチキシャチホコ族 Notodontini
    • シャチホコガ族 Stauropini
    • フサオシャチホコ族 Dudusini
  • トビモンシャチホコ亜科 Heterocampinae
    • ツマキシャチホコ族 Phelerini
    • キシャチホコ族 Pydnini
    • トビモンシャチホコ族 Heterocampini
  • ハネブサシャチホコ亜科・Platychasmatinae

 4亜科である。(わたしが)日本のシャチホコを整理する分にはちょうどいいぐらいの感じ。

 

 もう論文が発表されたのだから,引用しても大丈夫かな。

 前掲『TINAE』論文では,シャチホコガは4亜科から,次のように(アフリカを除く)12亜科へ再編される。(p. 40)

 ハネブサシャチホコ亜科 Platychasmatinae

 トガリバシャチホコ亜科 (新称) Scranciinae

 ツマアカシャチホコ亜科 Pygaerinae

 フサオシャチホコ亜科 Dudusinae

 ギョウレツシャチホコ亜科 (新称) Thaumetopoeinae

 オオキシャチホコ亜科 (新称) Perigosinae

 ホソバシャチホコ亜科 (新称) Heterocampinae (Drymonia が Notodontinae に移ったため,Fentonia を新名称とした)

 ギンモンシャチホコ亜科 (新称) Spataliinae (ギンモンシャチホコ族 Spataliini,キシャチホコ族 Ceirini)

 ツマキシャチホコ亜科 Phalerinae

 ウチキシャチホコ亜科 Notodontinae (ネグロシャチホコ族 (新称) Neodrymoniaini,シャチホコガ族 Stauropini,モクメシャチホコ族 Dicranurini,ウチキシャチホコ族 Notodontini)

 マダラシャチホコ亜科 (新称) Dioptinae (新大陸に分布,昼飛性の美しい蛾を含む)

 ナガバシャチホコ亜科 (新称) Nystaleinae (南米に分布,北米にも少数)

 (詳しく読みたい人はバックナンバーを買ってね。それと日本蛾類学会にも入ってね)

 このうち,ハネブサ・トガリバ・ギョウレツ・ウチキのネグロ・マダラ・ナガバは北海道未産である。北海道はシャチホコ相が豊かとは言えないのはやっぱりそうなのである。

 

 この新分類が今度どのように普及するか分からないが,とりあえず(シャチホコが薄いこともあって),わたしのHPの71種はこのまま亜種区分なし(『大図鑑』分類)で行きます。ごめんなさい。

 

[][]Macaria 属の周辺とか。 Macaria 属の周辺とか。を含むブックマーク Macaria 属の周辺とか。のブックマークコメント

 HPにばかりかまけていて,せっかく送ってもらっている画像を紹介できずにいる。ナミシャクに入りたいのだが,エダシャクがまだ終わらないのである。ムーアもモフェットもとりあえず飛んでいる。

 

 以下エダシャク。画像追加分(細かな記述手直し・訂正は他にもちょこちょこ)。

  • Glacies属
  • Hypoxystis属
  • Heterolocha属
  • Luxiaria属
    • 下3属は原記載または図版を発見できず。だいたいが20世紀ものは原記載がオープンになっていないことが多いし,図版もない。基本的に Seitz 以降は頑張りようがないのが普通。
  • Macaria属
    • 重要なグループらしく,「Butterflies and Moths of the World」で検索(このサイトはとにかく便利)をかけると,Macaria 由来の属名は
      • Boarmacaria(Boarmia 属と合体させられた命名)
      • Dasymacaria(毛深いマカリア)
      • Epimacaria(マカリアの後に来るもの)
      • Eumacaria(可愛いマカリア)
      • Neomacaria(新しいマカリア)
      • Oxymacaria(尖っているマカリア)が出てくる。
      • さらに,“Amraica”と“Aracima”(これはアオシャク)とがアナグラム。

 

 今日はリストばっかりだがそういう日もあるのである。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yyzz2/20161025

16-10-20(木)

[][]vittaria をめぐる迷走。 vittaria をめぐる迷走。を含むブックマーク vittaria をめぐる迷走。のブックマークコメント

 twitterにあげた内容のまとめ直し。相変わらず学名のHPいじりである。もうほとんど実体としての蛾からは遠ざかって,記号と文献の世界に浸かりきっている。

 インド産の蝶の研究者Mooreについて,おそらく標本ばかりで,自分が扱っている蝶の生態なんて見たことがないだろうと以前書いたことがあるが,人を呪わばナントカカントカを地で行く結果になっている。どうやらこれは真理らしい。

 

 というわけで,

【和名】 コウノエダシャク

【学名】 Elophos vittaria

(えろふぉーす うぃとたーりあ)

【命名】 (Thunberg, 1788)

http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Elophos.html

である。

 ツーンベリというのはリンネの直弟子で,南アフリカやインドを回って日本でも1年過ごしてヘビトンボの記載をして,鎖国下で思うように活動できないのでインドネシアに行って,最後は母校のウプサラ大に戻って教授をやった人物である。ポスト・リンネアンというよりも,分類学史的には「リンネの同時代人」と位置づけるのがふさわしい。本職は植物屋である。

 というわけで,古い。古いのなら,ヒュブナーの美麗な図版があるかもしれない。いきなり,「Hübner's Geometra」で「vittaria」を探す。この時代は属名が確立していないので種小名だけで十分である。すぐに見つかる。

f:id:yyzz2:20161019212859j:image

 何か違う。こんなコウノエダシャクはおかしい。あれれと思って,「Lepindex」を引くと

Scientific Name of Taxon :  vittaria

Current Status :  Junior subjective synonym

Original Combination   ! ! Hübner, 1808/14

Current Valid Name :  CHRYSOCTENIS ramosaria de Villers, 1789

http://www.nhm.ac.uk/our-science/data/lepindex/search/detail.dsml?TaxonNo=212752.0&UserID=&UserName=&&listPageURL=list%2edsml%3fsort%3dSCIENTIFIC%255fNAME%255fon%255fcard%26SCIENTIFIC%5fNAME%5fon%5fcardqtype%3dstarts%2bwith%26SCIENTIFIC%5fNAME%5fon%5fcard%3dvittaria%26recLimit%3d30&searchPageURL=index%2edsml%3fSCIENTIFIC%5fNAME%5fon%5fcardqtype%3dstarts%2bwith%26sort%3dSCIENTIFIC%255fNAME%255fon%255fcard%26SCIENTIFIC%5fNAME%5fon%5fcard%3dvittaria%26recLimit%3d30

 はずれ。ヒュブナーが命名した別の蛾である。「Chrysoctenis ramosaria」はヒメシャク亜科。この属は,現在は Cleta属に編入されている。Cleta ramosaria を画像検索すると,なるほどヒュブナーの通りである。

 

 仕切り直し。『大図鑑』のシノニムリストへ。

 コウノエダシャクは,Yezognophos sordaria で記載されている。名称が全然違うのだけど,学名のお引っ越しは珍しいことではないので平気である。

 さて記載文にたどり着く。Thunberg, 1792, D.D. Dissertatio entomologia sistens insecta svecica,ウプサラ発行である。

f:id:yyzz2:20161019212900j:image

(p. 60, 第3巻にあたる)

翅は白地に埃状の散布。眼紋と帯があって,端に黒点。

http://www.biodiversitylibrary.org/item/43769#page/84/mode/1up

 

 ここまでをTwitterにあげてから気づいた。「記載年が違う」。まずい。vittaria の記載年は1788年で,上記の1792年ではない。ツーンベリが自分で誤同定をして,自分でシノニムを作っているに違いない。『大図鑑』はそこら辺をフォロー仕切れていないのだろうという見当。

 

 普通はここで袋小路なのだが,幸運だった。前掲書の2ページ前(p. 58)に「Phalaena vittaria」が載っていて,1792年の本当の原記載が記されていた。これは偶然である。『大図鑑』にも「Lepindx」にもこの原記載は出ていない。

 というわけでやり直し。Thunberg, 1788, Museum naturalium Academiae upsaliensis cujus partem primam 6: 74, pl. c.へ。

 種名ばかりが淡々と列記されているのだが,問題の vittaria には註がついている。

Phalaena vittaria 6)

---------------------------------------------

 6)埃をかぶったような翅。2つの黒い帯が波打ちながら末広がりになっている。

http://www.biodiversitylibrary.org/item/180822#page/88/mode/1up

f:id:yyzz2:20161019212901j:image

 これがHP用決定版。画像は(見つかれば)原記載に添えられたものを使うようにしている。何というか,とても地味である。蛾のプロトイメージはこんなもののような気がする。

 

 こんなことに時間とエネルギーを取られているのだから,そりゃあ生きた蛾の撮影活動なんぞは,とうていわたしには無理なのである。

 その他。現在,グーグルランク・クロール乞食の状態。

  • Amraica属の説明修正。
    • 不詳としていたが,おそらく Macaria のアナグラム。根拠はないけれども,見るからにそう。
  • Erannis属のオオチャバネフユエダシャクの画像追加。
    • 著作権的にはアウトの恐れ大。
    • チャバネフユエダシャクの“golda”は記載がとうとう見つからなかった。「gold」じゃないかとにらんでいるのだけどねえ。
  • Ennomos属(ヒメキリバエダシャク)・Exangerona属(オイワケキエダシャク)画像とりあえずギブアップ。
    • だめ。全然見つからない。
トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yyzz2/20161020

16-10-10(月)

[]エダシャク亜科の修正中。属名と種小名との性の一致について,Biston属確認。 エダシャク亜科の修正中。属名と種小名との性の一致について,Biston属確認。を含むブックマーク エダシャク亜科の修正中。属名と種小名との性の一致について,Biston属確認。のブックマークコメント

 HPの学名ごっこ。次はナミシャクで,リストはもう完成している。現在の北海道のナミシャクは76属214種が決定版だと思う。その前にエダシャクの修正を終わらせないと,ということで連休に作業中。

 

  • Alcis属の画像追加。
    • 蛾4種の抜け画像をすべて Seitz で補完。プライヤーについての小西正泰氏のサイトが消滅しているので,こちらも削除。
  • Amblychia属の画像追加。
    • バトラーの原記載からの画像。属名の由来は未だよく分からない。
  • Angerona属
    • Hübner による画像を貼っておく。ヒュブナー(Jacob Hübner)はリンネとちょうど入れ違いの世代の画家兼鱗翅学者。121は Crocota tinctaria(日本未産種)。122,123がスモモエダシャクである。f:id:yyzz2:20161010114219j:image
  • Apochima属
    • クワトゲエダシャクの画像入れ。クワトゲエダシャクは北海道にいるかどうか疑問が大きく,『北海道の蝶と蛾』からははずされている。
  • Apocleora属
    • 命名者バトラーの画像見つからず。ザイツで代用。
  • Aporhoptrina属
    • 原記載文を読み返す。HPにあるように,前の方の線が半円であるらしく読み取れるので採用。自信があまりない。
  • Arbognophos属
    • スタウディンガーの“Dt. ent. Z.”は図版がモノクロでつまらないのだが,原記載ということで。
  • Arichanna属
    • ヒョウモンエダシャクの画像がついに見つからない。近年になってから亜種から昇格した種なものだからどうしようもない。
  • Ascotis属
    • 亜種の人名を検索。「飯島一雄」? 日本語の雑誌をほとんど所持していないのでこういうのが最も苦手。「蝶と蛾」以外はCiNiiにほとんどないのである。
  • Auaxa属
    • 画像入れ。属名・種小名の原記載読み直し。属名の方はやっぱり分からない。
  • Biston属
    • ザイツから画像入れ。このころやっと気づいたのだが,あちこちで蛾の種小名が女性形に変更されている。命名規約では属名の接尾辞が男性扱いされるとになっているものまで女性扱いされている。要するに,そういう判断がどこかであったということなのだろう。
    • 普通に考えれば Biston はギリシアの男性名である。さて,1815年にビストン属を立てた当の Leach がどう考えていたかというと,自分で命名したビストンの新種には女性形語尾をあてがっているから,リーチ自身は“Biston”のジェンダーを女性だと見なしているらしい。
    • 一方,リーチは,1897, On Lepidoptera Heterocera from China, Japan and Corea. Annals and Magazine of Natural History (6) 19: 297-349, 414-463 では,バトラーが1879年に命名した“Biston robstrum”(これって中性語尾である!)をそのままの性で採用している(p.322)。すでに付けられている種小名の語尾をかえるべきではないと考えたのかもしれない。まだ国際基準ができていない時期である。
  • Bizia属
    • やっぱりウォーカーの命名は分からない。
  • Bupalus属
    • スタウディンガーのモノクロ画像入れ。

 

 一度に更新してしまうのはもったいないので,休日のうちに少し書きためておくことにする。めざせ小まめな更新でSEO。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yyzz2/20161010