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東京藝術大学大学美術館『金刀比羅宮 書院の美展』

6時起床。11時過ぎに出立。ipodで談志を聴きながら、千代田線を千駄木で降り、なにやら目立つ店構えの大島屋という蕎麦屋で三段重ねせいろ。汁は悪くない。量が多いのも悪くない。ほど良く落ち着いた店内も悪くない。蕎麦も、悪くはない。
坂道をテクテク歩き、谷中の霊園の入り口付近を通って、上野桜木。もう少し進んで、東京藝術大学へ。大学美術館の『金刀比羅宮 書院の美展』は今日から始まった展示で、讃岐の金毘羅さんの書院に描かれた「障壁画」を、丸ごともってきて展示してしまおう、という企画の由。1300円也支払って中へ。
3階の展示スペースに入ると、おお、これは凄い。襖を、それが元の部屋で配置されているとおりに配置して、さながら自分が書院の部屋にいるかのように見ることができる。円山応挙の襖絵は、とにかく位置通りに配置しました、という感じだが、奥に進んだところにある岸岱の襖絵などは、部屋の空間をそのまま再現しようと努力していることが伺える。
応挙の襖絵は、最初の間が鶴、そして次の間が虎なのだが、やはり虎の絵が素敵であり。江戸時代の人たちは、実物の虎が見られないため、虎の毛皮や猫を参考にして描くのだけれど。本当にもう、これは虎じゃなくて猫でしょー、というような実に愛らしい虎たちが応挙ワールドを作っており、にたにたやに下がりながら眺めることしばし。その奥の『七賢の間』は、人物、即ち竹林の七賢が描かれているのだけれど、人物の顔のところ、墨で黒く汚してから、頑張って綺麗にしました、という印象を受けるのだが…。後世の誰かが汚したのだろうか?
先に進むと、岸岱が描いた襖絵。襖絵に限らず、壁に描かれた絵もそのまま展示されていて、最初、凄いなあ、建物解体して持ってきたのか?と思いましたが…そんなはずはありませんね。襖絵以外は、canonの高性能プリンターによって印刷された複製だったのでした。なあんだ。部屋全体の雰囲気の中で観察するために、肝心の襖絵以外も再現している、というのはポイント高くはあるのだけれど、複製だとあまり認識せずに一所懸命複製のほうを観察している人もいたぞ。まあ、説明不足だ、ということじゃなくて、それだけ複製技術が凄い、という話なのだけれど。
さらに進んで、伊藤若冲が描いた「花丸図」の間。狭い空間の、壁と襖一面に、ぐるりと360°描かれた花、花、花。おお、濃い。眩暈がしそうだ。素敵。このほかにも、もっと最近に描かれた襖絵や、地下の別室では大きな絵馬なども展示されていた。詳しい解説は
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1067
を見ていただくとして(毎回、すばらしいレビューです)、ここでも言われている通り、讃岐の金毘羅さんを実際に尋ねて見てみたくなる展示だったのだ。これまで金毘羅さんには2回行っているけど、書院とか見たことなかったなあ。
同時開催の名所江戸百景も、芸大のコレクションにある、かなり状態の良い刷り物をまとめて全部見ることができるので、なかなかオススメの展示であります。