ふたつめの月/近藤史恵


ふたつめの月

ふたつめの月


うわわわわぁ。発売を知った時にPC前で狼狽しまくったのは私です。まさかな、とは思ったんですが表紙を見て確信。うん、そっかぁ。嬉しいけれどとてつもなく複雑な心境でした。この話はとある話の続編に当たるのですが……前作が大好きすぎて、読むのがとても怖かったです。



読むのなら前作からを推薦。いや、読まなくてもちゃんと分かるのですが前作から時間もちゃんと流れていて、主人公の「久里子」もファミレスのバイトから、社会人へと変貌を遂げています。だから前作を読んで悩んでいる主人公を知っていた方が、きっと面白い。それにしてもどうしてこの主人公はこんなにも私に感情移入をさせてくれるのだろう。だからこそ好きなのだけれども。話は三篇収録。ファミレスを飛び出して「久里子」自身にまつわる話が多い…かな。話ごとに雰囲気が変わってくれるのは嬉しい。

「たったひとつの後悔」は、正社員になった途端、クビになってしまった「久里子」。その理由は何なのか、ずっとモヤモヤしています。新しい仕事を探す気になれず、どんどん無気力で家を出るのを億劫がるように…。そんな折、会社の子から「課長が突然辞めたって怒っていた」との話を聞き、さらにもやもやを募らせていると、老人登場ー!探偵役の老人を犬の散歩に行って見つける、といったあたりがこのシリーズらしくて好きです。アンとトモも相変わらず可愛いよ。

謎の解決は、しっとり系。少し痛い。実際、こんな事があるかは置いておいて、一方的に怒ることをしない「久里子」は凄いな、と思います。きっと自分の言った事を棚に上げてしまう人も居るだろうに、私もそうするかもしれないしなぁ。切ないなぁ。我慢する「久里子」ですが、最後のほっとする落とし方で、少し暖色がさします。

「パレードがやってくる」は、良い感じだった男友達の「弓田」帰国の回。料理の修業で外国に行っているのです。とてつもなく喜ぶ「久里子」ですが、結局は友人でしかないんだ…、遠くに行っちゃった…、となんとも「弓田」とギクシャクしてしまう。そんな折「弓田」から従姉妹の「明日香」を紹介され、相談に乗ってほしいと頼まれる…。

この「明日香」のステレオタイプな喋り方と行動に驚きます。作りようがこっちにも伝わってきますよ。わざと和と雰囲気を乱しまくりつつ「久里子」の気持ちもぐしゃぐしゃにしていきます。…でもなぁ、最後まで読むと「明日香」が可愛く見えてくるんだ、これが。それに最後が暖色真っ盛りでどうしようかと思いました。いい意味で。幸せそうだ。良いなぁ、これ。二人の会話にちょっと笑えました。悩み深い彼女と彼は大変そう。好きです。

「ふたつめの月」は、前作とある意味では一緒。というか、そもそも構成的に前作と似ていますね。「切ない」「桃色」「老人」な感じで。

で、探偵役をしてくれている老人が事故に合ってしまう、というもの。老人はずっとずっと素敵だったので、心をかき乱されましたよ。そんなぁ。警察まででっぱてきます。でも、違うことは「久里子」が老人を信じることを決めていること。だからこそ、大丈夫だと思える。家族構成も何も知らなかったけれど、それでも信じるって思うことは出来るのです。話の落とし方は一瞬「?」を浮かべてしまいました。あれ、前作からの伏線なんかあったっけ、と。……今の所思い出せないので、近いうちに前作を読み直そう。でも、伏線があったとしてもなかったとしても、素敵な終わり方してます。もし無かったら、それこそ多くを語らないこの作品らしい、と思うし。幸せ一杯なわけでも、不幸のどん底にあるわけでもない。切ないながらも暖かい雰囲気に満ちています。語り過ぎない、でも、だからこそ作り上げられている雰囲気。続編、書いて欲しいけど、この雰囲気のままっ。でも「久里子」にも変化が見られているので、どうなるのでしょう。でも、この雰囲気があればいいな。

 ふたつめの月/近藤史恵


ふたつめの月

ふたつめの月


うわわわわぁ。発売を知った時にPC前で狼狽しまくったのは私です。まさかな、とは思ったんですが表紙を見て確信。うん、そっかぁ。嬉しいけれどとてつもなく複雑な心境でした。この話はとある話の続編に当たるのですが……前作が大好きすぎて、読むのがとても怖かったです。

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