きつねのライネケ/ゲーテ


きつねのライネケ (岩波少年文庫)

きつねのライネケ (岩波少年文庫)


「風の妖精たち」と何となく気になって一緒に借りてきた本。後で著者名を見てちょっと驚きました。元は動物叙事詩らしいので、完全なる創作ではないそうですが…。




話は超絶的に悪賢いきつね「ライネケ」が何度も罪に問われながらも、何度も逃れる話。王様が「みんな仲良くしなさい」という命令を「ライネケ」は聞けません。王国の端っこあたりで暮らしながらも、度々「城へ出頭しろ!」と伝令が来ると、その伝令係をこてんぱにしてしまう。でもですね、この「ライネケ」ものすんごくかっこいんですっ。
いや、確かにお前やりすぎだっ、と言いたくなることもします。何もそこまでや理由も何もないじゃないか、とも思います。痛いし、童話的に言うのならば絶対に天罰が下るタイプです。でもやっぱりカッコイイ。ニヒルですよ。言葉でたくみに相手をだまくらかして(騙される奴らもどうかと思いますが…)生き抜く姿がかっこいい。…時々、本当にやり過ぎてて、一体どこのホラー小説だ、といった感じになる箇所がありますが、ひどいなぁ、と思いつつもそれも「ライネケ」らしいと思ってしまう。
それに「ライネケ」が言っている事はそんなに間違ったことじゃない。動物たちを集めて「みんな仲良く」なんていうのがおかしいんですよ。確かにずるいところもあるけれど、捕食のためなのですから。だから嫌な奴だけど間違っちゃ居ないってところでまた惹かれてしまいます。まぁ…こいつらが本来肉を食べないってことになると、困ったことになるのですが。
また「ライネケ」はお城に親戚たちが働いています。詳しく語られはしませんが、他の動物たちとの派閥争いが活発そうな感じです。この奇妙に政治臭いのがこの童話的世界のスパイスになっていて「ライネケ」の言っている事がまっとうに思えてくるのかもしれません。
んー、懲悪勧善、ではないです。だからこそ素敵である、ある意味での悪徳小説、なのかもしれません。
「ライネケ」素敵っ!