「犬身」松浦理英子

犬身

犬身

「それはわたしではなくてあなたの役割でしょう。可愛い犬にしかできないことを徹底的に実践してください」

「恋愛感情だか何だかわかりません。言えるのは、わたしにとって八束は異性同性を問わず、これまでの生涯で最も心を許し親密になれた人間だったということです。(略)これが男同士だったら、あるいは女同士だったら、いつかそれぞれ異性と結婚して自分の家族をいちばんたいせつにするようになるんでしょうけど、わたしと八束は幸いにも男と女なので、恋愛感情を抱き合っていようがいまいが、結婚してずっと一緒にいることができる。だからわたしは、われわれが男と女の組み合わせであったことを僥倖と思ってたんです。ところが、八束の方はわたしと結婚する気は全くなかったんですね。あいつは人間よりも犬に興味があったから」

「心配するな。ある種の肉と同じで、よく叩いた魂はうまいんだ」

私の感想