カメラの知識(焦点距離と画角・被写界深度について)

  • 初めてデジタル一眼レフD40)を手にした時、18-55mmというキットレンズの焦点距離を見て、超広角レンズなのかもしれないな、なんて思っていた。
    • 初心者だけど、28mm=景色を広々撮れる広角レンズ、ぐらいの認識はあったのだ。(この認識も正確とは言えないのだが)
  • しかし実際には、D40などAPS-Cサイズの撮像素子においては、35mmフィルムサイズの画角に換算すると、27-82.5mmという扱い易い広角・中望遠ズームなのであった。
  • APS-Cサイズの撮像素子においては、焦点距離の1.5倍相当の画角になるのだ。(35mmは52.5mm、50mmは75mm相当の画角になる)
  • そうか200mmなら300mmのレンズだと思ってしまえばいいんだな、と思っていた時期もあったが、それもまた若干違う理解だった。
  • 確かに画角は300mm相当になるが、焦点距離はあくまでも200mmのまま。
  • よってボケ具合も200mmのまま。(レンズの焦点距離F値はボケ具合に影響する)
  • 撮像素子のサイズが違ってしまうと、画角を合わせただけでは厳密には全く同じ写真にはならないのであった。
  • APS-Cサイズと35mmサイズの差は1.5倍と小さいのでそれほど気にならないが、
  • コンパクトデジカメの1/1.8インチとか、1/2.5インチになると、その違いは顕著。


  • 一眼レフと同じ、背景をぼかした写真は、コンパクトデジカメではほとんど*1撮れない。
  • 逆に言えば、焦点距離の短いコンパクトデジカメでしか撮れない写真もあったりする。

被写界深度

理解したこと

  • 被写界深度は、以下の3要素で決定される。
    • 被写体までの距離。(近くの被写体ほど、その前後がボケ易い)
    • レンズの焦点距離。(焦点距離が長いほど、ボケ易い)
    • 絞りのF値。(F値が小さいほど、ボケ易い)

画角

歴史的経緯
  • およそ100年前にライカが35mm映画用フィルムを流用して、その後ケースにロール状に詰めたものをコダックが規格化した。
  • 以来、一般的にカメラと言えば、上記の35mmフィルムがディファクトスタンダードとなり、その状態が長らく続いた。
  • 写真の画角(上下左右方向の範囲)は、レンズの焦点距離とフィルムの撮像面の大きさに影響される。
  • フィルムと言えば35mmサイズ固定の時代が続いたので、人々は焦点距離を訊いて画角を想像するようになっていた。
  • ところが、デジタルカメラの時代になって撮像素子のサイズは35mmフィルムサイズとは限らなくなってしまった。
  • APS-Cサイズ、2/3インチ、1/1.8インチ、1/2.5インチ等、様々な大きさの撮像素子を持ったデジタルカメラがある。
  • 35mmフィルム時代は、焦点距離28mmと言えば広角、50mmなら標準、200mmなら望遠だろうと想像できたが、もはやそれが通用しなくなってしまった。
  • 撮像素子1/2.3インチで4.9〜52.5mmのズームレンズを持ったカメラ、と言われてもピンと来ない...。
  • 上記カメラの画角を35mmフィルムの焦点距離で考え直すと、28〜300mmのズームレンズを持ったカメラとなる。これならどんな画角なのか想像できる。
  • そのため、カメラメーカーの多くは、35mmフィルム相当の画角も表記するようになってしまった。(コンパクトデジカメの場合)
  • ところで、デジタル一眼レフは、そのままの焦点距離で表記されている。
  • 多くの一眼レフは、レンズを自由に交換できる。(マウント方式の互換性の範囲内で)
  • それはデジタル一眼になっても同じで、撮像素子の大きさが変わっても、35mmフィルム時代のレンズさえ利用できたのだ。
  • これは、レンズを取り付けるカメラ(撮像素子の大きさ)によって、写真の画角は変化してしまう可能性を意味する。
  • だからレンズには、そのままの焦点距離を書いておくしかなかったのだ。
  • ユーザーは自分のカメラの性能を理解して、もしAPS-Cサイズなら、自分で焦点距離を1.5倍して画角を想像するしかない。*2
35mmフルサイズとAPS-Cサイズの撮像の違いとか、仕組みとか。

理解したこと

  • APS-Cサイズの一眼レフで撮影した写真 = 35mmフルサイズで撮影した写真の中央部分をAPS-Cサイズにトリミングして拡大したもの。
  • あくまでもレンズの性能は普遍で、50mmのレンズの画角は、どのカメラに取り付けても46.8度の範囲を映し出す性能は保証される。*3
  • 但し、そのカメラの撮像素子がAPS-Cサイズだと、レンズが映し出す範囲は撮像素子の周囲に溢れ、写真として記録できるのは中央部分の狭い範囲になってしまう。
  • APS-Cサイズのカメラで撮影した場合で調べてみると、そのトリミングされた画角は約32度となる。これは焦点距離50mmを1.5倍した75mmレンズの画角と同等になる。

つまり、中央部分を1.5倍にデジタルズームした写真をイメージすれば良いのだ。

  • 同じレンズを使っている限り...
    • その性能は普遍。だから、ボケ具合も同じ。
    • 画角を変えてデジタルズームするので、遠近感(遠くと近くの大小関係)は異なる。
  • 画角を合わせるためにレンズを変えると...
    • ボケ具合は異なる。
    • 画角は同じなので、遠近感(遠くと近くの大小関係)は同じ。
広角と望遠の違い

なるほど!

  • 今まで広角レンズは、雄大な景色をなるべく広い画角で撮影したい時に便利なレンズという認識があった。
  • その認識は間違いではないんだけど、実はもう一つ重要な特性が抜けていて、それは遠近感が強調されるという特性。
  • 遠近感とは、遠くのモノは小さく、近くのモノは大きく感じる感覚。
  • その感覚どおり、写真の中でも遠くのモノは小さく、近くのモノは大きく写っている。
  • その大小関係が、広角になるほど(焦点距離が短くなるほど)より強調されるのだ。(遠くのモノはより小さく、近くのモノはより大きく)
  • つまり、被写体に一歩近付いて、近くのモノを広角レンズで撮影すれば、被写体の特徴がより強調された表現になる可能性があるのだ。
    • 賃貸物件も広角で撮影すれば、小さな部屋も大きく見えるかもしれない。(見た目に騙されないようにしよう)
  • 遠くの景色ばかりを撮るのが広角レンズの役割ではない。
  • 日常的なスナップでもっと広角レンズを活用すれば、何気ない日常の小さな感動を、より大きな感動として表現できる可能性があるのだ。
  • 広角レンズをもっと使いたくなってきた。ズームに頼らず、一歩前に。レンズは動かさず、自ら動く癖を身に付けたい。

原理的なこと

謝辞

  • 上記本文中のすべてのリンク先の素晴らしいページに、深く深ーく感謝です!
  • 体系的、かつ詳細な解説で、カメラ・写真の原理を深く知ることができました。

*1:ズームを望遠にして接写する、限られた条件なら可能かもしれない。

*2:もし、APS-Cサイズの画角と焦点距離の関係をそのまま体感できるようになれば、1.5倍という変換なしで画角を想像できるようになるのかもしれない。

*3:APS-C専用設計のレンズを除く。最初からAPS-Cサイズに撮像することを目標に、周囲に溢れる写像性能を無視したAPS-C専用設計のレンズというのもある。焦点距離18mm以下だと高価な魚眼レンズになってしまう可能性があるが、周囲の写像を無視する設計にすることで、より安価なコストで製造できるらしい。もし、APS-C専用設計レンズを35mmフルサイズのカメラに取り付けると、周囲には本来切り捨てられるはずのレンズの縁とその外側が、写り込むことになるようだ。