今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ハロルドが笑う、その日まで


映画館としては最高だと思うYEBISU GARDEN CINEMA。ロビーも洒落てるし、カフェ風の売店(そんな言葉しか思いつかない…汗)もステキ。そして、何より、劇場内の椅子がマジ最高d('∀'*)


でも、最大の難点は我が家からめっちゃ遠いこと(;>_<;)


そして、ここでしか上映しない映画が意外と多い。そんな映画をどうしても観たいと思うとあの恵比寿駅から延びる動く歩道を小走りに歩く(笑)しかない。


今回の「ハロルド」もまさにそれ‼


でも、来た甲斐がありました。面白かったから。別にコメディ映画ではないし、かと言って人生の悲哀を語るほど重い映画でもない。


それでも、生きるって難しくて、可笑しくって、素晴らしいとじわじわと心に沁みてくる映画だった。


ノルウェーの田舎町。主人公のハロルドおじいちゃんは今ではあまり買い手もいない高級家具の職人さん。


腕によりをかけて長持ちする品質の高い家具を作り続けてきた。


しかし、時代はもうそんな長持ちする家具など必要としなくなっていた。見栄えが良くて、格安な組み立て家具こそが人々に必要とされる時代になってしまった。


そして、ハロルドおじいちゃんの家具屋の向かいに青と黄色の看板が‼


スウェーデンの家具屋IKEAが出店したのだ。目先の新しさにお客を奪われ、おじいちゃんは店じまいすることに。不幸は続くもので、介護施設に入所した日におばあちゃんを見送ることに。


自分が上手くいかないのはIKEAのせい。おじいちゃんは真面目だからこそ、思い悩む。そして、悩んだ挙句辛うじて走ってるおんぼろ自動車を転がして一路スウェーデンへ。


IKEAの創業者の誘拐を企てる。別に身代金を要求しようなどと考えたわけでなく、自分の苦境の腹いせに誘拐をしようと思い立ったのだ。


旅の途中で出会った、10代の若者のくせに、これまた人生に行き詰まり八方塞がりの女の子が加わっておじいちゃんの企てはあらぬ方向へ。


少女を家に送り届けた帰り道、雪道で車が動けなくなり助けを求めていた初老の男を乗せてやると、なんとそれがIKEAの創業者本人だった(笑)


ありえない出会いとありえない顛末。


事業に成功し、子供に恵まれながらも、けして幸せそうには見えない創業者。人生って難しい。


みんな、人生をこじらせちゃった人達ばかりが登場し、一生懸命あがいてる。その姿が、なんだかユーモラスで愛おしい。


真面目に生きてるからこそ笑えるおじいちゃんたちの珍道中。


一面凍りついた湖や薄らと凍った長い一本道の遠景は、北欧の寒さ、冷たさを感じさせ、登場する彼らの人生の厳しさも表現しているかのようだ。


難しい毎日に自暴自棄になりそうなところで、踏みとどまれるのは人の暖かさに触れたから。


人生って難しくて、可笑しくって、素晴らしい。


こういう映画が好きだ。


そうそう、おじいちゃんが乗るオンボロ自動車は「サーブ」。懐かしいなぁ。


IKEAの創業者の言葉を借りると、なかなかエンジンがかからない具合の悪いおじいちゃんのサーブは「こんなだから潰れるんだ」ということらしい。壊れやすいって言ってるのかなぁ。自分のとこの家具も…って思ったのは私だけ?