Hatena::ブログ(Diary)

ザウエリズム 【Zawerhythm】 このページをアンテナに追加 RSSフィード

  はじめての方へ
  本家サイト大野病院事件関連メールマガジン過去ログ
  Twitter(Twilog)・Tumblr
  日記才人(2487)とReadMe!テキスト庵(0009)に参加していました(登録順)。
  Amazon

2002-09-27-金

[]「ことばづかい」-0437- 「ことばづかい」-0437-を含むブックマーク 「ことばづかい」-0437-のブックマークコメント

 韓国には相対的な敬語の使い分けがないらしいです。父は決して申し上げず、お客様の前だろうと、お父様はおっしゃるのです。僕らは例えば自分の指導医が患者さんに話をするようなときに、「担当医が夕方伺いますので」とすんなり言えればいいのですが、「先生が」などと、その呼称自体が敬語のような呼び方で始めてしまうと「いらっしゃいます」なんて口走ってしまうことがあるんです。ある作家は、この英語にはない「敬語」を、コミュニケーションに障害になるものだと揶揄していましたが、個人的にはこうした言葉の文化は嫌いではないのです。

 テレビの普及は、標準語と呼ばれる東京弁の全国展開を可能にしたけれど、例えばそれはら抜き言葉も急速に広めるのです。受動態と尊敬語の区別には寧ろら抜きは分かりやすいという意見も多く、生き物たる言葉は、かつて発音しにくかったというだけで、「あらたしい」を「あたらしい」と読んだように、多数派の波を次世代に伝えるのでしょう。

 さて、入局当初の僕のプレゼンテーションにも多様されていたというので、学生を指導するようになってからも特に気をつけている変な言葉の文化があります。コンビニでもファミレスでも多用されているアイツは、レントゲン写真にも検査データにもくっついてくるのです。

 嚥下困難を訴え、赤十字病院のほう受診しまして、胃カメラにて門歯より30センチ腫瘍を認め、生検のほう施行し、食道癌の診断にて、当科紹介となりました。胸部レントゲンのほうでは、右下肺野に陰影を認めます。ラボデータのほうですが、貧血のほう認めません。

 お箸のほうお付けしますか、というコンビニ敬語は、どの辺が敬語なのか分からないのですが、確実に僕らを蝕み、緊張しながら使い慣れない言葉を使うときに、特に多く現れるようです。自分もちょっと前まで使っていた「ほう」が、急に耳障りになるもので、文章にすると誰の目にも目障りです。関係ないですが、昔、「消防署の方から(方向から)来ました」という消火器販売の詐欺がありましたね。

 そういえば僕らは、国語の時間に、作者に無断で勝手に登場人物の心中を探って模範解答を決めつけたりはしていたけれど、電話の応対も年輩者との会話も学ばなかったのです。もちろんそれは日常生活の中で学んで来るべきものだったのだけれど、医学部の選抜にそんなことは加味されていないのです。そして時にそれが、適切なふるいわけがされていないということのように攻撃されるのですが、それはまた見当違いな攻撃だとも思うのです。

 もちろんメスを握った医師がただ単に技術屋だったら、メスはとたんに治療の道具からただの凶器に変わることに間違いはありません。医師は科学者であり、文学者であり、哲学者であり、教育者であって始めて、普通の人が行ったら罪になるようなことを許されるのです。しかし、技術なく、単に人格者であるだけの人はやはり医師になり得ないのであって、それは必要条件であっても十分条件ではないことを肝に銘じなければならないでしょう。単に優しく患者の手を握って話を聞くだけの医師は、技術しかない医師の数倍たちが悪いとも思うのです。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/zaw/20020927

2002-09-20-金

[]「専門バカ」-0436- 「専門バカ」-0436-を含むブックマーク 「専門バカ」-0436-のブックマークコメント

 金曜日の僕は、半日の研究日をもらっているのです。大学の外にいる医者たちは、こうした「研究日」という勤務病院フリーの日を認められていることが多く、大学の外来に出ていたり、研究室に出入りしていたり、様々に使っているようです。僕も名目上、金曜日の午前中という時間を研究日として認められたのですが、下っ端の哀しさで、上の医者の都合でその時間はどうにでもなってしまいます。研究日として認められている日も、僕がやる検査が待っていることが多いので、実際は午前中のうちに病院へ出勤します。実際にその時間を使って大学に行くのは難しくて、日曜日などの空いた時間をついて大学にカルテを漁りにいったりすることはありますが、金曜の研究日は、いつもより数時間遅く家を出られるというくらいです。それでもじゅうぶん嬉しい時間ですが。

 上司たちが大学の手術へ出かけたり、学会などで病院を開ければ、金曜日の朝も、僕の仕事は、人間ドックの外科診察から始まります。乳腺、甲状腺、直腸診を行い、大学からパートで来ているひとつ下の後輩研修医と回診にまわり、指示出したり、ガーゼかえたり、点滴刺したり、バタバタしていればあっという間にお昼になってしまいます。僕の勤務する病院では、主治医制をとらず、4人の医師のグループ制をとっているので、外科の入院患者は全部が僕の受け持ちです。ちょっとひとまわりするといっても1時間や2時間はかかってしまうし、あとに詰まった検査や手術の予定によっては、ゆっくり話す時間がとれないこともあるのです。

 これは僕がこの病院に来てからずっと気にかかっていることです。グループ制というのは、医師の相互チェックが働くという利点が、責任が曖昧になるという欠点にも繋がってしまいます。上の3人の医師たちは、疾患のとらえ方、治療の考え方は、当然それぞれ違うわけですが、どうもこのバタバタした回診や検査の中では、意見の統一がはかれないことが多いようにも思えます。同じ患者さんに対して、僕からみれば全員が大先輩の3人の医師が、それぞれ違うことを要求することも多々あるわけで、きっと大学にいたときの僕なら、その矛盾を正面切って切り返していたのだと思うのです。

 指導医だって人間だし、同じことを報告するにしても、意見を伺うにしてもうまいアプローチがあるはずだと、大学時代、電話の前で憤慨する僕に向かって呟いた先輩医師がいたのです。ワビサビが大事なんだ、と。病棟をうまく動かすためには、明らかにおかしいようなことでも、飲み込んで処理しなくてはならないことも多いようです。下っ端が悪者になるのは、トラブルを終焉させる良い方法だ、とも言われたものでした。この辺は消化し切れていないのですが、日々、僕なりの筋を通しながら、頑張っているつもりです。

 午後は田圃の中を病院のワゴン車に揺られ、地域の乳腺・甲状腺検診へ出かけました。乳腺・甲状腺について、自分で気になるところはないかどうか問うても、咳が出るとか、手がしびれるとか、関係ないことを言い出す人も多いのですが、彼女らにしてみれば、田舎に医者がやってくる数少ない機会であり、目の前にいるのは紛れもなく医者なのだから、関係ないことはないのだろうとも思うのでした。

 夕方病院に戻ってから、今日は鼠径ヘルニア(俗に脱腸)の手術が一件。金曜日は麻酔科医はやってこないので、僕が自ら、半ば独学の腰椎麻酔を、もちろん先輩医師の監督のもと施し、教科書の絵を思い浮かべながら、僕が自ら、その手術の執刀を、もちろん先輩医師の監督のもと施すのです。

 腰椎麻酔下、仰臥位にて、右鼠径部におよそ5cmの皮切をおく。鋭的、鈍的に切離をすすめ、浅腹筋膜、外腹斜筋腱膜をそれぞれ切開す。なんかいろいろあって、手術を終了す。

 大きな手術で総動員の時には、場合によって並列手術を行い、胃癌の手術が先輩医師と二人っきりということもあるのです。冷や汗かきながら執刀医に対して前立ちと呼ばれる第一助手にして唯一の助手をつとめるのです。そんなときは最初から最後までいっぱいいっぱいですが、最近は、ヘルニアとか虫垂炎の手術を執刀させてもらった時には、なんとなく自分で何かをやったという気持ちになれるようになってきました。もちろん、まだまだ操り人形のように動いているのでしょうが。

 その後途中まで当直代行をすることになりました。この病院よりもさらに一時間くらい山のほうへ行った温泉地の診療所から、ヘルニア嵌頓の触れ込みで紹介されて来た患者さんは、どうやら精巣上体炎のような感じで、少なくともヘルニアは無い様子。バイク事故でやって来た男性は、レントゲン上骨折が疑われたのでした。カルテに「右手第5中手骨」とか書きながら、手の骨の名前が本当にあっているのかどうか気になって、あとでこっそり解剖の教科書で確かめておきました。あとはなんだか分からないけど救急車で来てしまった人もいました。どうも常習犯らしいのですが、先入観だけで疾患を見落としたら医療ミスになってしまうのが辛いところです。

 乳腺の診察中に喘息の相談されれば、それに対応すべきなのだと思うし、見当違いの紹介状だって人ごとだと笑えないし、骨の名前を間違って整形外科宛に紹介状を書けないし、道端で情報無く倒れている人だって診療しなくちゃいけないのです

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/zaw/20020920

2002-09-08-日

[]「帝王切開とか」-0435- 「帝王切開とか」-0435-を含むブックマーク 「帝王切開とか」-0435-のブックマークコメント

 実は僕、恥ずかしながら出産をみたことがなかったんですよ。学生時代から通算7年半も医学・医療の世界に過ごしながら、死にゆく人々は何人となく見つめてきながら、生命の誕生の瞬間を知らなかった僕。3年前に産婦人科のポリクリ(臨床実習)中、分娩をみるチャンスが無かったのが残念だ、とか言う僕らに「入局すれば嫌と言うほどみせてあげる」というお決まりの台詞をもらって以来、僕と産婦人科との関わりは、直腸癌の卵巣や子宮なんかへの浸潤の程度をコンサルトしたり、急性腹症の女性の、クラミジア感染を調べてもらったりとか、その程度だったんですよ。

 昨日産婦人科からコンサルトされた右下腹部痛の患者さんは、妊娠38週で、カイザー(帝王切開)の既往あり。エコーを当ててみても、大きく膨らんだお腹の中を調べるのは困難で、CTといった診断方法も、被曝のことを考えると積極的には行えません。まあ、いろいろあって、まずは、今回もカイザーにて出産し、まずは圧迫解除、その後虫垂も確認して、虫垂炎があればそれも切ろうということになったのでした。そんなわけで、僕もその手術に立ち会いました。

 ところで、どこらへんが帝王なんでしょうか。よく、この語源ローマ帝王、ジュリアス・シーザーがこの方法で産まれたからとかいわれていますが、実はこれは誤解らしいです。確かにこの帝王切開という方法は、古代ローマ時代から行われていたようです。これは母体を救うものではなく、難産の為に死んでしまった母親から、新生児を助け出す手段として発達し、後には生きた母親にも施行されるようになったと言います。当時、麻酔も消毒もなく、縫合もしなかったそうです。自然、母親が助かる事はほとんどなかったといいます。この手技が、後のドイツで、ラテン語の「切る(caesarea)」を「シーザーカエサル)」と勘違いして、ドイツ語で「帝王(Kaiser=カイザー)」という語を当てたことによるのだそうです。

 とりあえず、無事、男児を出産し、虫垂炎も否定され、母児共に健康

 夕方帰宅し、日付がかわるころ、当直中の副院長からコール、右下腹部痛の女性を診て欲しいとのことでした。なんかここのところ緊急手術が多く、これから診察、診断して手術すると、始まるのは午前2時頃だなと、ぼんやり考えながら病院へ駆けつけ、いろいろ診たところによると、それほどひどいものでは無さそうで、数ヶ月前に出産したばかりだというその女性は、まずは手術をしないで様子をみることとなり、朝の時点で炎症は進まず、腹痛も軽減、保存的治療で退院。日本では虫垂炎をやたらと切りまくっているという話もあるが、このありふれた病気、実は診断も手術も侮れないものなのです。僕の生まれた頃にはすでに医者をやっていたような年齢の内科医から、外科コンサルトを依頼され、僕の意見が外科の意見になる時、もてる力を全て出し切って、いつもドキドキしながら患者に臨んでいるのです。

 僕らも好き好んで、自分の体調の優れない時や、真夜中に診察なんてしたくないけれど、病気は待ってくれないし、全てが客観的データで診断基準がそろうわけでもなく、誤診の恐怖に怯えながら、診察室に向かうのです。日本では、すぐに「刑法」が飛び出してくるし、昨今の過熱した医療訴訟報道など、若い医者の単独診療なんて怖くて出来ない時代です。刑事罰を受ける可能性を抱えた診療なんてみんなしたくないわけで、この状況が進めば、ちょっとでも難しそうな患者がはらい回しにされてしまう恐れもあると思います。もちろん医の責任はあるのだけれど、僕らはいつもヘトヘトです。

 この2週間くらいはやたらと忙しくて、休み無く働き、ちょっとした行き違いから凄く嫌な思いをしたり、いつもにも増してヘトヘトだったのですけれど、今日という日は、日曜日が終わっていく寂しさを感じる必要が無いのでした。

 明日から、少し遅い夏休みをもらったので、ちょっと欲張って、スペインまで出かけて来ます。アスタラビスタ!

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/zaw/20020908

1998 | 09 | 10 | 11 | 12 |
1999 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 |
2000 | 01 | 02 | 03 |
2001 | 01 | 02 | 03 | 04 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 |
2002 | 01 | 02 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2003 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2004 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2005 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2007 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2008 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2010 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 07 | 10 |
2012 | 02 | 08 | 10 |
2013 | 01 | 03 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2014 | 01 | 03 | 06 | 08 | 09 | 10 | 12 |
2015 | 03 | 04 | 05 | 10 |
2016 | 03 | 05 | 09 |
2017 | 06 | 07 | 10 | 11 |
2018 | 04 |
Connection: close