ミョウガ

ミョウガ
 現役時代に読んだ本で定年後は”今日用”があることと”今日行く”ところがあることが大事と述べていた。これを読んだ時にはなるほどと思ったが、いざ自分がその立場になると少し違う。今日はうだるような暑さで外へ出る気がしない。いつまでもエアコンの部屋で横になっていたいと思っていた。
 しかし、今日は金曜日で家人が休みである。こういう日は、例のスーパーで冷凍食品六割引き狙いでいっしょに行く。毎回買うのは、氷5袋である。一家族5点に限定されているのでやむを得ない。そして、何か所か用事を済ます。
 昼からは”今日用”もなく、”今日行く”ところもない。これが健康を保つ秘訣であると思うようになっていた。
 ところが、そうは問屋が卸さない。隣の駐車場にヤブガラシが数本巻き付いている。この雑草は隣の実家から伸びて行ったものだ。ご近所様の見えない抗議を感じる。「あそこの家が雑草だらけなんだから、こっちまで伸びて来ている。どういうつもりか!」「最近、虫が多いと思ったら、あの家の裏が雑草だらけが原因ではないのか。あそこの家のご主人は、毎日遊んでいるはずなのに、草の一本も抜く気がないのか!」
 そこで、熱中症覚悟で裏庭に出た。「おおっ!」足の踏み場もないくらいに雑草がすくすくと育っている。刈払機の方が早いのではないかと思う。家人は盛んに除草剤を使えと言うが、そうはさせない。雑草だけにピンポイントで効く薬品などあるはずはないではないか。がんの対応に抗がん剤を投与するようなものである。
 しかし、雑草の勢いを見るにつけ、その多さにやる気を失ってしまった。そして、ミョウガの根元を探り6個ほどミョウガを採っただけになった。
 このミョウガはさっそく素麺の薬味になった。
 今日もこのまま一日が終わってしまうのか、などとつまらないことを考えていたが、夕方近くなってショッピングセンター内のコーヒーショップで2時間ほど過ごす。こういう日があってもいい。
 内閣改造が行われたが、大臣の学歴を眺めていると”東大法学部”が少ないなあと思った。外国の大学を卒業されている方が目立つ。まあ、自分の生活に影響を及ぼす法律はチェックさせていただく。

■「身近な雑草の生物学」(根本正之+冨永 達編者、朝倉書店、2014年)を読む。
「私たちが何らかのかたちで利用あるいは管理している場所に、私たちの意図とは無関係に自然発生してくる一群の植物」を雑草と定義する。
「〜雑草を利用した環境の修復や保全に資する研究も行われている。」
「〜非常時への備えとして、食べられる雑草の知識をもっていることは必要かもしれない。」
「生物が日照時間(=光が当たる時間)の変化に反応する性質を、光周性と呼ぶ。」
アレロパシーの概念は、最も広義には、植物、微生物、動物等の生物が同一個体外に放出する化学物質が、同種の生物を含む他の生物個体における、発生、生育、行動、栄養状態、健康状態、繁殖力、個体数、あるいはこれらの要因になる生理・生化学的機構に対して何らかの作用や変化を引き起こす現象」
「米ヌカを田植え後一週間から10日後に、10aあたり100〜150kg、水田の全面に散布するか水口から流し込むことによって、ほぼ完璧に除草できる。」
「C−S−R戦略説では、植物の生活史特性の進化を支配している選択圧を競争(Competitive)、ストレス(Stress)および攪乱(Ruderal)であるとしている。」
「スズメノカタビラは、約2ヶ月間、0.1kg/c㎡の強度で毎日10回踏みつけられると、一度も踏みつけられなかった個体と比較して分げつ数や穂数が増加数する。」
「雌雄の配偶子の接合なしに種子が形成される場合がある、これをアポミクシスと呼ぶ。」
「一般に生態系の安定性は、変化に対する抵抗力の大きさと、動揺に対する復元力の2点から定義されている。」
「陣地強化型・・・オオブタクサ、ギシギシ類、ススキ、カモガヤ、オニウシノケグサ
 陣地拡大型・・・ミツバツチグリ、ヘビイチゴ
 使い分け型・・・メヒシバ、ツユクサ
 陣地強化―拡大型・・・チガヤ、セイダカアワダチソウ」
「チガヤ世界中の熱帯から温帯に分布し、世界の最重要害草10種のうちの1種に挙げられている。」
「除草剤が植物を枯れ死させる主な作用機構として、光合成阻害、光合成に関与する色素形成阻害、植物ホルモン作用攪乱、呼吸阻害、アミノ酸・タンパク質生合成阻害、脂質生合成阻害、細胞分裂阻害および過酸化物生成などが挙げられる。」