Hatena::ブログ(Diary)

移転跡地

2006-08-03

[] 「ゲド戦記」感想リンク。

ゲド戦記・オリジナルサウンドトラック

約2時間、一回も笑わせもしないし、泣かせもしない。心が揺さぶられることは殆ど無く、1時間半程で時計をチラ見。

ヒネリや伏線が殆ど無いまま、前後の話をすっぱりカットした物語を淡々と描くだけ。世界観も分らず、ストーリーにも納得いかずに終了。

教訓めいた言葉や理屈っぽい台詞には、力と真実が篭っていなく、薄く空に浮くだけ。延々と道徳の絵本を見せられた気分で、見終わった後は心に何も残らない。

 原作を読まずに接したのだが、あまりのことにひどく驚いた。宮崎吾朗個人の鬱々とした呟きが全篇を覆う個人要素満載の実験アニメもどきが、全国のあの膨大な劇場で流れている。ジブリというブランド名と絵柄の宮崎駿色による信頼から観客が詰め掛けている。こんな歪な状態を招いている異常事態を是非劇場で体感すべきだ。

絵作りとかは、ホルスの大冒険みたいで、こんなものかなという感じでしたが。まあ覚えている範囲で感想を言うなら、移動シーンがやたら多いアニメだなあと。A地点からBにいって、それから次の町に行って、それで位置関係のよくわからない女の家でこうなって、という感じ。その中間を馬やら徒歩やらでたんたんとひたすら移動している記憶しかない。その道々でゲドが説教を言って、アランだかアレンはひたすら意味ありげな顔で黙っていると。

「おつかいRPG」って言葉がありますけど、それやってた感じ。

コンテ演出的には、予想通り粗が多く、いかにも素人仕事。

意味の無いカットが散見され、しかもそのためにカットが早く、わかりづらい。

ヨコイチのアングル多用で平面的。

身長差やキャラの向きなどカットあわせが出来ていないところも多く、甘く見てもリテイク対象に感じられるところも何箇所かあった。

とにかくメリハリが無く、尺の振り分け方も均等で盛り上がらない。

あからさまに宮崎駿的なカットは思わず笑ってしまう。

 それからもうひとつ。前半が淡々としているのも、サービスが少ないのも狙いなんだろうとは思う。面白いとは思わなかったけど理解はできたし、あれを楽しめる人もいるだろうとは思った。台詞でテーマを言ってしまったりするのも、わざとやっている可能性はある。上手くいっているかどうかは別だけど、監督には監督なりの計算はあったはず。何も知らないで、10年後とかにいきなり深夜にTVで観る事があったら、結構楽しめるかもしれない。

 アニメーションのスタイルについては、この作品なりの美意識が欲しかったところだけど、それを求めるのは酷でしょう。

 あちこち意味不明なシーンがありますが、なかなかよかったです。日本映画にありがちな、怒鳴る叫ぶ泣くになりそうなところを、すっと引いて静かに語るところは結構好み。

 昔の宮崎アニメみたいにウェルメイドな活劇ではなく、最近の宮崎アニメみたいに破綻してもなく、荒削りなところの残った、なかなか活きのいい映画だと思いました。むしろATGの『青春の殺人者』が近いかな? 連想が単純すぎますかね。

今回は、いろいろ雑音は入ってきていても、バリエーションの一つとして受け入れられる部分が必ずあるに違いない、それは自分の目で確かめなければならないという思いだった。

しかし、衝撃はあまりにも大きかった。

もう、感想を書くこと自体止めた方がいいと思った。

ネガティブキャンペーンに加担するのは嫌だったし、よかった点だけ触れてお茶を濁そうと思ったが、考えれば考えるほど絶望的になった。

いいたいことが沢山ある。大長編を纏めるための覚悟がない。人と龍の関係がわからない。ポスターにツーショットで扱っている意味がないぞ。ゲドの立ち位置が曖昧だ。アレンがなぜ父親を? いや、エンタメとして見ても、お待たせクライマックスがあれでは、構成がフラットに過ぎ欲求不満。などなどあって、せっかくの画調の良さが死んでいる。


[] 「N・H・Kにようこそ!」 #4「新世界にようこそ」

N・H・Kにようこそ! ネガティブパック<オリジナル無修正版> 第1巻

 聖地巡礼の巻。メイド喫茶に同人誌ショップ、等身大フィギュアにファンディスクと、細部までよく作りこんであったものの、「世間一般に流通しつつある秋葉原像」を忠実になぞっているだけというよそよそしさを感じた。どこかの深夜番組のアキバ特集を見てしまったかのような違和感は、まあ狙って出してるんだろう。後半、同人ゲームの企画を練るくだりは、これまでの「自虐的にリアル」という微妙なアプローチから、明快なドタバタにシフトして、普通に馬鹿馬鹿しかったな。あと、全体的にシンプルな描線だったのが印象的だったけど、これは劇中劇のアニメ、ゲームとの差別化を図るためだったのだろう。ヒロインが出てくると使えない手だとは思いますが。

[] 「イノセント・ヴィーナス」 #2「凶気」

 人質を取って立てこもり、投獄された同士の開放を要求するテロリスト。なんだか懐かしいパターンですね。首尾よく行ったとして、どこへ逃げるつもりだったのかな。そんな事態の推移をラジオのニュースで聴く主人公たち。軍事独裁政権だったら、当然、報道管制くらい敷いていると思うんだけど。廃墟の町にころがっている人形なんて描写も含めて、前に誰かが作ったあれこれから、気に入った個所をコラージュするだけでは、ろくな物が出来るはずもないだろう。ラスト、唐突に登場した海賊船は、これまでの「軍事マニアのシミュレーションごっこ」以外のものを見せてくれそうな感じではありましたが。

[] 「黒沢清の映画術」

黒沢清の映画術

 黒沢清は、撮る映画も相当に面白いが、書く文章も劣らず刺激的だ。「ユリイカ」に載ったクリント・イーストウッド論とか、朝日新聞に載ったスティーヴン・スピルバーグ論など、今でもよく覚えている。ひとことで言ってしまえば、独特の視点を持っている人なんですが、単に目先の変わった意見を並べているというわけでもなく、あくまで自分なりの正論を述べているはずのに、結果的にユニークな見解が出てくるというのがポイントだ。たとえば、「現代思想」のインタヴューで、ハリウッドに招かれたらどうするかと尋ねられて、「まず、予算を削る交渉をする」と答えるのも、別に奇をてらっているわけではなくて、きわめて真っ当な戦略――製作規模が大きければ、それだけプロデューサーの介入する余地が増えてしまう――があってのことなのである。(殊能将之氏も似たような指摘をしてましたね)

 本書は、アマチュア時代から現在までの道のりを時系列順にたどったロングインタヴューで、8个亮主制作をはじめた高校時代、蓮實重彦の薫陶を受けた大学時代、長谷川和彦相米慎二についた助監督時代、ピンク映画でのデビューと、カルト的な支持、伊丹十三との確執、Vシネマの量産時代、『CURE』以降の国際的な評価から、9.11テロ以降のスタンスの変化に至るまでの道のりが、ユーモアを交えつつも、淡々と誠実に語られていく。この間、30年にわたる日本映画界の変化の様相も、そこから浮かび上がってくるし、とにかく読み応えのあった一冊。

[] 「マリア様がみてる―イラストコレクション」

マリア様がみてる―イラストコレクション

 ファン向けのアイテム。ファンなら当然買っておくべきだし、そうでない人にはまるで縁のないであろう本。いえ、ここからファンになっても構わないのですが。これまでの単行本・雑誌の表紙絵すべてに、挿絵の傑作選、同人誌やウェブサイトでひそかに発表したイラストまで収録。「コバルト」に発表された掌編マンガも採録されている。書き下ろし短編小説のおまけつき。