中谷風の瀋陽日記

 大連2
 旧南満鉄本社から旧満鉄病院に回った時、懐かしい名前の胸像に出会った。ガイドが「あれは誰だかわかりますか」と聞いた時は一瞬見当もつかなかったのだが、その名前を聞いて思い至った。胸像はカナダ人ベチューンだった。ここに関係がありますか、と頓馬な質問をした私に、「中国人でカナダがどこにあるか知らない人はいても、ベチューンを知らない人はいない」と解説してくれた。毛沢東ベチューンを記念する文章を書いて、それが小学校の教科書に載っているのだ。全国のどこの病院にもこのベチューンの胸像はあるのだという。  

左からベチューン像(1890-1932)、旧満鉄病院(大連大学付属中山医院)

 東洋拓殖会社が作ったという「東拓ホーム」(満鉄の社員住宅)の幾分綺麗に保存されている一角に案内された。いわゆる日本人街だという。そこには、今の日本の戸建て住宅よりもしっかりした作りの瀟洒な住宅が並んでいた。現在は地の利からも高級住宅として売り出されているのだという。折りしも、新婚の記念写真撮影が数か所で行われていた。中國では、結婚式の前に記念写真を撮り、式や披露宴でそれを披露する習慣らしい。ここは恐らく、大連でも人気のスポットなのだろう。

  

 車は一路南に向かい、老虎灘公園を過ぎて、濱海東路・中路をゆっくり走った。というのも、折りしも連休であるから、日本の花見や紅葉狩りの観光地と同じような混み具合だ。車のナンバーも冀C(河北省3番目の都市)龍A(黒竜江省1番=ハルピン)京(北京)、魯E(山東省4番目の都市)といったナンバーがずらりと並び、中国が間もなく米国を抜き、No1の自動車国になるに違いないことを感じさせる。逆向きは遅々として進まず、いらだつ運転手がクラクションを鳴らしたりするが、概ね辛抱強く待っている。海に面した道を多くの人がハイキングスタイルで歩いて行く。ここは、「世界一長い海に面した游歩道」としてギネスに乗ったとガイドは言う。
 やっと着いた星海公園で「バンジージャンプ」を見て、一瞬呆然となった。高さ100mぐらい(?)の塔から飛び降りるのだが、100人近い人が順番を待っているように《遠目で》見えた。今回も、勿論挑戦する気はなかった。(歳を忘れてはいません)