犬も歩けば棒に当たるキャリア


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。


朝まで生テレビ」でご存知の政治学者と言えば、東大教授、姜尚中(カン・サンジュン)氏ですね。姜さんの長身痩躯のダンディなルックスとクールな語り口は、男の私が見ても「かっこいいなあ・・・」と思います。


さて、姜さんは、先日の『R25』のインタビューの中で、


「仕事とは偶然の産物だ」


と断言し、次のようにコメントしています。

「自分に合っていて、なければ3度の飯ものどを通らないような仕事に最初から出会えることはまずない。だから、つまずいたってしょうがない。仕事との出会いには偶然が作用するものなんです。そこに疑問を持って折り合いをつけていく。能力でも運命でもない。たえず、偶然が働くんだという意識を頭のどこかにおいておいた方がいい」


実は、キャリア形成において「偶然」が占める割合が大きいということは、キャリア研究で今、最も注目されているテーマでもあります。(このことについては、また別の機会にお話しますね)


姜さんも、自分自身のキャリアを振り返ってみると、「偶然」の出来事や人との出会いが、今の仕事へとつながってきていることを実感としてわかってらっしゃるわけです。


そもそも、キャリアを100%、完全に計画(デザイン)することはできません。なぜなら、まず本当に自分がやりたいこと(ゴール)がよく見えていないから。


あなたもそうじゃありませんか?


もし、あなたのやりたいこと(ゴール)が明確であったとしても、どうやったらそこに行けるのか、きちんとした道筋がうまく描けないという問題にぶち当たります。キャリアや人生には、不確定要素があまりにも多すぎるんですよね。


ですから、行動に移す前に完璧なキャリア計画を立てようと考えなくていいんです。おおざっぱな計画でいいから、ともかくも行動することを優先する。そして、日々の偶然の出来事や出会いを大切に、それらを積極的に受け入れていく。



私は、「自分が何をやりたいかわからない」という時ほど、偶然の出会いの機会を自分でどんどん作りだしていくことが必要だと思っています。「何がやりたいかわからないから」と、何もやらないでいると、いつまでたっても「やりたいこと」が見えてこないからです。


何がやりたいかは、実際やってみないとわからない。だから、あまり深く考えず、どんどん外に出ていろんなところに首を突っ込んでみる。そして、あえて、その状況に巻き込まれてみるんです。


こうして、偶然に現れたことに無我夢中で取り組んでいると、そのうち、


「そうか、これが私の進みたい方向なんだ、やりたかったことなんだ」


という気づきが少しずつ生まれてきます。



私は、このような偶然の行動からキャリアの気づきを深めていくことを


「犬も歩けば棒に当たるキャリア


と呼んできました。


例によって、私の「なんちゃってキャリア論」です。ただ、やはり、私自身の体験に基づいた自論ではあります。



私の20代は、面白そうと思ったイベントや集まりにはどんどん顔を出すようにしてきました。また読書についても、あえて無節操にあらゆるジャンルの本を手当たり次第に読むようなことをやっていました。資格の勉強なども、ちょっと興味を持ったらとにかくやってみることにしました。今でもこの軽率な行動はあまり変わりません・・・(笑)


もちろん、期待外れだったり、挫折したりと、徒労に終わることも多かったのですが、今につながる貴重な出会いがあったり、自分のキャリアの方向性を決める大きなヒントを拾うきっかけは、一見無目的で無駄に思える「犬も歩けば棒に当たる」的行動の中にありました。


毎日の自宅と会社を往復するだけの決まりきった行動の中には、なかなか偶然の出会いはありません。


ぜひ、たまにはふらふらと無目的に様々な場所に行き、いろんなことに首を突っ込み、あえて異質な人との出会いを求めてみませんか?


(キャリア・アドバイザー 松尾順)