空中キャンプ

2008-04-29

[]「愛おしき隣人」を見たゼ!

恵比寿にて。スウェーデン映画。ロイ・アンダーソンという監督さんの作品です。これ、すごくおもしろかった。淡いタッチのコメディなのですが、アイデアも豊富だし、撮影のしかたとかも斬新で、見ながらびっくりしてしまいました。他の作品も見てみたいという気になった。

この映画のなにが斬新かというと、いっさいカメラを動かさないこと。すべてのシーンを、まったくカメラを動かさずに固定で撮っている。冒頭から10分くらい経っても、あらゆるシーンでまったくカメラが移動しないので、「まさかこれ、最後までずっとフィクス(固定)で撮るわけじゃないよね」とおもっていたのですが、ほんとうに最後までしぶとく固定で撮りつづけたのでちょっと感動しました。そのこだわり感に。言葉だけだと説明がつきにくいのでじっさいの画面を見てみると、たとえばこれはチューバを練習するシークエンスです。

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後ろに奥さんが見えます。アパートなのにこんな大きなチューバを吹いている。迷惑きわまりない。あんまりうるさいから奥さんが怒鳴りにきたわけです。画面ぜんたいはこういう構図です。右側にテーブルが半分くらい見えている。左画面のまん中には水槽が見える。おもしろいのは、このシークエンスは最初から最後までずっとこのままカメラを固定してあるということです。ここでたとえば、カメラが動いて、たとえば部屋の左右になにがあるかを写したりしない。カメラはこの位置でフィクスされていて、ずーっとこのまま。スクリーンは、この画像と同じようにいっさい動かない。もうひとつくらい例をあげると、次の場面はカーペット屋さんのくだり。

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この店員(左)は、朝でかけるときに奥さんとけんかしてしまって、そのことでくよくよしています。だから接客中につい「わーん」と声をあげて泣きだしてしまう。こまった店員である。左側にカーペットを収めた棚がありますね。右側は窓、そこに客の夫婦がいます。赤いカーペットはないの? とか訊いている。ここももちろんフィクスです。カメラはこのアングルから動かず、そこで起こるできごとをじっと撮りつづける。

ひとつひとつの画面が、まるで絵画みたいにきれいで完成されていて、色彩や調度品などもとても考えられている。だからカメラを固定にすると、まるで絵を見ているような気になってきて効果的なのである。これはおもしろい。いいアイデアだと感心しました。あと、この場面もすごくいい。道が渋滞していて、車がなかなか前に進めないというところ。

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ここもとうぜんカメラは固定ですが、画面内の青い車がゆっくりと前に進んでいく。車を運転しているおっさんがこちらを見ていますね。なぜかこのおっさんは、カメラ目線で「俺、昨日すごくへんな夢をみたんだ…」と観客に直接語りかけてきます。そこから「へんな夢」のシーンにうつっていく。ばかみたいな場面です。でもこの、ちょっと霧がかかったような画面とかすごくきれいなんですよ。見ているとすごくたのしい。

あらすじも説明がむずかしいのですが、コメディにしては淡白で、むりやり笑わせようとはしてないんだけど、そのさりげなさが逆にくだらなくて笑ってしまう、というとてもセンスのいい展開をする。あまり見たことのないタイプの映画ですが、ちょっとおすすめです。ちょうおしゃれだったし、たのしかった。