2009-07-17
■TBSラジオ「文化系トークラジオLife」の収録に参加しました!
七月某日
TBSラジオの人気番組「文化系トークラジオLife」プロデューサー、黒幕はせがわ氏よりメール。ポッドキャストで村上春樹『1Q84』について語る座談会形式の収録をするので参加しませんか、との連絡。うれしくて数秒失神。いつもたのしく聴いているLifeの収録に自分が参加できるなんて…。すぐに返信し、参加意志を表明。
七月某日
仕事をしつつポッドキャストの準備。それにしても『1Q84』について語るというのはきわめてハードルが高い。とうぜん、すでに読了はしていたのだが、まずはしっかり再読、ということで、あらためてテキストを検証しなおす。気になったところに付箋を貼り、メモを取っていく。やっぱりこれはいい小説だ、としみじみおもう。二回目でおもいがけず発見することもある。牛河はいいキャラだ。
七月某日
収録日が近づくにつれて、ちゃんと話せるかどうか不安になってくる。なにしろ人前で話したことなどいっさいないのだ。ためしに書店へでかけてみると、文芸誌ではこぞって『1Q84』読解が特集されている。読むべきか迷うが、がまんして読まないことにする。二百万部売れているのだから、周囲にだって読んだ人くらいいるだろうし、そういった人たちに話を聞いた方が有意義なような気がする。黒幕氏からふたたび返信。収録の日時、参加メンバー等が決まる。
七月十日
収録日まであと二日。この小説について、どんなテーマで話せばいいのだろう。小説の魅力に言葉がついていかない。ひとりではこの難局は乗り切れないのでは…。そうおもったわたしは、『1Q84』を読了した友だちふたりに連絡。彼らを招集し、明日十一日の夜に『1Q84』会議を開くことに決定。再読も終わり、材料はあるていど揃った。あとは明日の会議にかけるのみ。
七月十一日
『1Q84』会議の当日。頭のなかは天吾や青豆、ふかえりのことでいっぱいだ。会議の前に、参加してくれるメンバーと、劇場で『エヴァ破』の二回目を見る(これはとくに意味はなく、ただ単にもう一度見たかっただけなのだが、この二回目の『エヴァ破』が、後で重要な意味を持つことになるのである──)。
みんなエヴァだいすき…。初号機を前にすると、つい反射的に写真を撮ってしまうものである。観賞後、呑み屋へ移動して『1Q84』会議の開始。すべての村上春樹小説の登場人物の名前や、細かい展開まできっちり覚えているような優良読者を呼んでおいたので、論点もみえやすく、ブレストもうまいぐあいに進む。「『壁と卵』はかならずでるぞ!」とのアドバイス。ほとんど受験だ。飲みながらもメモは取りつづけ、おもいのほか収穫の多い会議であった。明日、寝坊しないようにまっすぐ帰宅。睡眠。
七月十二日
当日。起きた瞬間からさっそく緊張してきたが、わたしは東京都民であるため、だいじな義務である投票をしなくてはならないのだった。まずは投票にいくのだ。さっそく近くの投票所へ向かう。小学校の体育館。バスケのリングが、よゆうでダンクできそうなくらいに低い。熟考のすえ一票を投じる。
住みよい東京になりますように…。そこから渋谷へと移動。見ておきたい映画がひとつあったので、午前中に劇場へ寄ってからいくことにした。渋谷シネクイントで『サンシャイン・クリーニング』。これは『リトル・ミス・サンシャイン』の製作スタッフが手がけた、いわばサンシャインシリーズ二作目である。おじいちゃんがアラン・アーキンってところも一緒だ。
とてもいい映画。クライマックスの静謐さがすばらしい。しばし、これからの収録のことも忘れて映画の世界にひたる。しかし、見終えてしまえば現実。これから大事な収録が待っているのだ。銀座線で赤坂見附へ移動。電車のなかでもノートに書いた要点を見直すが、あまり頭に入ってこない。電車は揺れる。
見附に到着。このあたりは最近あまり歩いていない。どんなふうに変わっているのだろうか。とりあえずTBSのある方向へ、よろよろと歩きだした。緊張…。
でた、赤坂サカス! はじめて見た。おもったよりずっときれいでおしゃれである。いぜんこのあたりを歩いたときの風景とはおおちがいだ。おもわず記念撮影してしまう。東京に十九年住んだ人間とはおもえない行動だ。そして赤坂サカスを曲がる。
ついに放送局へと足を踏み入れる瞬間がやってきた。とうぜんながら人生初。ずんずんと進んでいくと、世界陸上の看板と巨大な靴がお出迎え。もちろん司会は織田裕二しかいないだろう。スタンリー・キューブリックがリー・アーメイを必要としたように、世界陸上には織田裕二が必要なのだ。テレビがないから、見れないけど…。わたしはラジオ専門なのである。入口で、編集者K氏を待つ。
ややあって、K氏登場。スタッフの女性に導かれ、ふたりで局内に入る。さらに緊張…。ここがTBSラジオ。大沢悠里さんや荒川強啓さん、小島慶子さんなどが活躍することで知られるラジオ局なのだ。どきどきしながら歩く。
かっこいい! ほんとにラジオ局だ。その本格的なスタジオの仕様に見とれていると、しばらくして黒幕氏が登場。あいさつする。「よろしくおねがいします」「いえいえこちらこそ」。出演者の方々や関係者もやってくる。今日の収録参加者は、仲俣さん、森山さん、斎藤さん、速水さん、そしてわたしだ。チャーリーさんは東京にいないので、電話での出演ということになりお会いできず、残念でした。わたしはLifeリスナーなので、もちろんみなさんの名前と声はわかっているのですが、まさかそこに自分が参加できるなんてとおもうと、とても光栄でした。せっかく呼んでいただいたのだ。ここはがんばって黒幕氏の期待に応えたい。
収録スタジオに入り着席。「はじめまして」と新人の気持ちであいさつをしてみて気がついた。仲俣さん以外はみな歳下なのである。みなさん出版などの世界でたしかな実績をあげている人ばかりだが、年齢はおもいのほか若いのだ。わたしは、ちょっとフレッシュな新人みたいな気分になってたけど、あきらかに年長者なのである。こんなことではいけない。わたしにだって村上春樹という小説家を愛する気持ちはすごくある。いうべきこともあるのだ。お茶を飲んで気持ちをリラックスさせようとするが、緊張はしだいに高まっていく。このままでは声がふるえてしまうのではないか。
不安をおさえきれぬまま収録開始。発言に「あれ」「それ」「これ」等の指示語が多く、それがなにを指しているのかわかりにくい、鼻をすんすんしてうざい、などの失敗が感じられるいまひとつなスタートとなった。仲俣さんが、相槌やうなずきなどでわたしの発言をひとつひとつ受けてくださったので実にありがたかったです。森山さんや斎藤さん、速水さんもフォローしてくれて、どうにか前半を乗りきる。かんたんな休憩を入れてから後半の収録。
後半、しだいに緊張が解けてきた。話が進むなか、昨日の『1Q84』会議の成果がすこしづつでてくる。やはり「壁と卵」は話題になった。後半はわりとなめらかに意見がいえたような気がする。内容はとても充実したものになり、なにより一冊の本についてみんなで意見を述べあう、ということがとてもたのしかった。一時間がほんの一瞬みたいに感じられました。ラジオおもしろい!
『1Q84』収録終了後、広めのスタジオへ移動。ここで『エヴァ破』の収録をするのだ。わたしはもう収録そのものは終わっているので見学である。スタジオに移動してみておどろく。これは…
「ウィークエンドシャッフル」のスタジオだ! 宇多丸さんもここで収録しているのだ。ここからいろいろな番組が発信されているという実感がわいてくる。たのしい気持ちになりつつ座って待っていると、次回放送「バンドやろうぜ!」の予告編収録がはじまった。こちらの収録には参加予定はなかったが、黒幕氏から「予告編もやりますか?」と声をかけてもらって、高校時代のバンド経験などについて話しました。
予告編収録中に、稲葉さんが到着。『エヴァ破』トークは、稲葉さんにくわえて、チャーリーさん、斎藤さん、速水さん、鳥山ディレクターである。わたしはほんらい見学の予定だったのだが、黒幕氏から「エヴァもいきますか?」といっていただき、エヴァ番外編にも参加することになった。エヴァもまたハードルは高いが語りたいことはある。うれしさとプレッシャー。しかし昨日、二度目の破を見ておいてよかった。見ていなかったら会話についていけなかったはずである。
エヴァを語るのはとてもむずかしい。テーマは多岐にわたり複雑だ。今回の主役である、稲葉さんとチャーリーさんの話を中心に進行していく。稲葉さんの考えるエヴァの構図、議論の展開がすばらしい。なるほどとおもう。その構図に乗っかるかたちで、わたしもどうにか意見をいうことができた。エヴァがすきな人はもちろん必聴の内容です。
そしてわたしがこっそり設定したもうひとつの裏テーマ、それは「チャーリーさんへの呼びかけ」である。これはどうしてもやりたかった。関西にいて電話で声しか聴けないチャーリーさんに、わたしがいきなり呼びかけるのだ。わたしの考えるラジオは、なんといっても呼びかけだ。「あのー、チャーリーさーん、僕もチャーリーさんと同じ意見なんですけどもね…」というやつを、ぜひ一度やってみたかったのである。この裏テーマへの挑戦がうまくいったかどうかは、Part2を聴いてみてください。収録はPart3まで続きました。
エヴァについてもいろいろと語り、たのしかった収録がすべて終了。『1Q84』と『エヴァ破』という大ネタを一日でふたつ語るという試みでしたが、このまま永遠に収録していたいとおもうくらいにたのしい一日でした。ひとつのテーマを決めて、参加者がみな準備をしてきて、真剣に語りあう、というのはほんとうに胸躍ることで、このジャズセッションのような即興性とか、うまくいったときの刺激みたいなものも含めて、今までまったく経験したことのないものでした。いったんこのたのしさを経験してしまうと、止められなくなってしまうような気がします。やっぱりラジオおもしろい。いちラジオリスナーのわたしがこんな経験をさせてもらって、ほんとうにうれしかったです。放送もぜひたのしんで聴いてください。
打ち上げで緑茶ハイ飲みました。〈了〉
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