空中キャンプ

2009-12-30

2009年の映画をふりかえる/結果発表

こんにちは。ブログ「空中キャンプ」を書いている伊藤聡です。ついに今年もあと数日というところまでやってきました。みなさんにおかれましては、どんな一年だったでしょうか。むろん、悔いのない一年が望ましいのですが、マヤ文明によれば、2012年で世界は破滅するとのことですので、どれほどあがいても、われわれが生きていけるのはあと3年。どうせみんなそろって滅亡することはすっかり確定しているわけですから、それまでのあいだは、歌舞伎揚げを食べたり、横断歩道の白いところだけをぴょんぴょん飛んで渡ったりしながらすごすことにしましょう。

さて、先日みなさんに参加をおねがいした、「2009年の映画をふりかえる」の結果がでました。なかなか興味ぶかいランキングになりましたよ。その結果をここにお伝えしていきたいとおもいます。このような質問に答えていだたくアンケートでした。

  1. 名前(id、もしくはテキトーな名前)/性別
  2. 2009年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください
  3. 2で選んだ映画のなかで、印象に残っている場面をひとつ教えてください
  4. 今年いちばんよかったなと思う役者さんは誰ですか
  5. ひとことコメント

毎年、順調に参加者が増え、今年はこのような結果になりました。

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合計203人。男性56%、女性44%ということで、ほぼ半々になったのではないか、汗くさい部室みたいなことにはならずに済んだと安心しています。男だらけはほんとうにいやだよ。そして、参加してくださった方ありがとうございました。トラックバック、メールのふたつで募集しましたが、トラックバックに関しては、実は意外に不完全なところがあり、送っていただいたにもかかわらず、こちら側には届いていないものもありました。こうした不達トラックバックについては、集計もれがないように、複数の検索エンジンをつかって何度も調べましたので、ブログで参加してくれた方はすべて集計してあるとおもうのですが、もし万が一もれてしまっている方がいたらすいません! いないとはおもいますが…。

さて、今年の映画について考えてみると、なによりインフラ面の変化がかなり急激にやってきた、といえるとおもいます。シネコン化がどんどん進み、旧来の映画館は閉館が進んでいますよね。またそれと並行して、3Dもかなり本格的になってきており、対応作品の上映もかなり増えました。3Dというシステムそのものは、料金、視覚効果など不完全な部分はあるものの(3Dって人によって見え方に差があるんですよね。めがねをつけてもあんまり効果の実感できない人もいる)、今後のあたらしい方向性が見えてきたという印象があります。インフラはどんどんデジタルな方向に進んできています。劇場の席予約や残席状況の確認なども、ほとんどオンラインで済ませられるようになってきている。

とはいえ、今回の上位に選ばれた映画はどれも、ひたすら泥くさく、重く、情念たっぷりで、人の暗い部分や現実の理不尽さから目を逸らすことのない、きわめてアナログな作品ばかりになりました。インフラはデジタル化しているのに、作品そのものはどれもちょうアナログ、という差がおもしろく、ちょっと勇気づけられる結果でもありました。なんだかとても濃いラインアップになったとおもいます。ということでさっそく、上位10作品をひとつずつ見ていきます。

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『マイケルジャクソン THIS IS IT』
マイコー! このような投票企画を主催する以上、わたし自身それなりに映画館へは足を運んでいるつもりなのですが、今年は原稿書きの仕事があり、とくに後半あまり映画館へいけず、10本中、この作品だけは未見です。しかし、どこへいっても評判のいいこの映画、たくさんの方が「とてもよかった」とほめており、わたしも今後見てみようという気持ちになりました。ということで、『THIS IS IT』を教えてくださったみなさんありがとう。どんな映画かについては、参加者それぞれの回答をチェックして、なるほどと確認していただければとおもいます。ムーンウォーク練習してくる! そして9位。

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『愛のむきだし』
四時間超という上映時間からして規格外! 愛、嫉妬、信仰、嘘、欲望、すべてをひっくるめて疾走するドストエフスキー型むきだし映画が予想だにしない9位。マイケルより上にきたのにはびっくりですが、それだけいろいろな映画をチェックしている方の投票があったのだとおもいます。まず四時間の映画が上映できるという事実におどろいたし(劇場としては、1日に3回転が限度なので採算が取れにくい)、こんなに重厚で濃い映画を、これだけたくさんの人が見ているということもびっくり。とはいえ、四時間はあっという間だった、という意見も数多くあり、いずれにせよ10作品中いちばんの注目作はこれかも知れないです。未見の方はもうDVDがでています。そして8位。

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『空気人形』
ペ・ドゥナー! 人形を恋人に見立てて同居する孤独な男性、板尾さんと、いつしか心を持ってしまった人形、ペ・ドゥナのせつない物語。男性、女性ともに共感のポイントがあり、女性からの支持もあるバランスの取れたいい映画でした。東京でありながらまったく東京のようではない、架空の都市のようなフィルムの質感も含めて、撮影のよさも印象的な一本でした。なによりペ・ドゥナがキュートでとてもよかったですね。是枝監督は、毎年コンスタントに良質な作品を発表していてとてもすばらしいとおもいました。それとこのあいだ、監督を渋谷にある餃子の王将近くで見かけました(是枝さん知っ得情報)。そして次は同率で6位がふたつ。

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『レスラー』
ラムジャームさくれつー! ちょう身勝手なプロレス男と、彼に振りまわされる家族の心の傷。かつて栄華をきわめた男の転落と、それでもプロレスにしか生きる実感を見いだせない現在。今年、呑み屋で語ってしまう映画ナンバーワンであり、これを見た男はつい、自分と主人公ランディを重ねずにはいられない。「男ならたいてい、これに近い状況は経験する」という意見にも、なるほどそうかとうなずいてしまう。女性側の意見はさまざまですが、女性からの支持もけっこうある映画でした。試合の前には日サロにもいくし、わき毛だって剃る。そんなレスラーのプロ意識が見ることのできる、感動的な作品だったとおもいます。必見! そしてもうひとつの6位。

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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
新劇場版の二作目は、ついにオリジナルストーリーとしてのかたちを見せはじめ、その異様なまでの映像クオリティや、やけに男らしくつよくなったシンジ君の衝撃発言「綾波、来い!」など、あたらしい要素がいっぱい。なにしろ映像はとんでもないレベルに到達していて、これがあと二作見れるのかとおもうと、いまからどうにかなりそうです。がんばれ庵野監督。新キャラかわいかった。そして5位。

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『サマーウォーズ』
ジョン&ヨーコ! 話題の夏休みアニメ映画が5位。夏公開にうまくマッチした季節感と、デジタルとアナログがシームレスに交差していく展開にもぐっとくる。スピード感あふれる構成や、アクションシークエンスのかっこよさも見どころ。おばあちゃんかっこいい〜。みんなでごはんを食べるくだりのたのしさや、あさがおで表現される夏のイメージも新鮮でした。アニメが元気よかったと印象づけられるロングラン作品。そして3位が同率でふたつです。

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『ディア・ドクター』
「黄フォレスト・ウィテカー」こと鶴瓶氏主演の、きわめて濃密な人間ドラマ。西川美和監督の新作は、やけに生々しい「人間」がスクリーンからひとりでにこぼれ落ちてくるような、とてもおもしろい映画になっていたとおもいます。香川照之のユニークなたたずまいもあいかわらずで、西川×香川の相性のよさを再確認するとともに、余貴美子のすばらしさにも圧倒される。あの応急処置の場面のスリリングなこと! 「システムがうまく機能し、回転するとき、その中心には無がある」というテーマ性もすばらしく、ぜひ見てほしい作品。そしてもう1本の3位。

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『母なる証明』
そしてさらにへヴィーな情念がめらめらと燃え上がる、強烈すぎる韓国映画が3位。ポン・ジュノ監督の最新作は、ものすごいお母さんと、さらにものすごいエンディングに誰もが絶句! こんな終わり方の映画見たことない! とおもわずシャウトしてしまう、なんだかわけのわからない作品になっていました。「この映画はなんだ」と頭が混乱し、誰もがただちには理解できない展開にひたすら圧倒され、よろよろと映画館をでる。今年の濃密なランキングのなかでも、特濃の作品となっております。そして2位。

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『イングロリアス・バスターズ』
ビンゴ〜! タランティーノ新作は、ナチス対ナチ・バスターズの戦いを会話劇で見せるという、タラらしい構成が大ハマリし、ひたすらスリリングな仕上がりになっていました。会話がストーリーを重層的に成立させていく、というシークエンスの組み立て方もいいのですが、なにより、ランダ大佐と呼ばれるこのねちっこいおっさん! 彼があらわれるだけで誰もがイヤな気持ちになる、あまりの居心地のわるさには感動すら覚えました。「いつもアゴをつきだしている」という、よくわからないキャラクターでおもしろ度を増したブラッド・ピットも必見です! そして圧倒的に1位だったのはもちろんこれです!

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『グラン・トリノ』
ガルルルル〜。腹の立つことには、犬みたいなうなり声で怒りを表明するおじいちゃんことイーストウッドが、俳優としてのキャリアに終止符を打ったこの映画。むろん集計するまでもなく1位を独走しました。どれだけ若手の映画作家たちが束になってかかっていっても、79歳のおじいちゃんにまったくかなわないという現実もとてつもないですが、『グラン・トリノ』の、映画としてのクラシカルな風格すら漂わせる堂々とした作風には、イーストウッドすごいなと認めざるを得ないところです。イーストウッド個人の歴史と重ねあわせれば、感動もさらにひとしお。もちろん1位はとうぜん、誰も文句なしでしょう。DVDは千円で売っていますので、買って10回見るべし! いちばんよかった役者賞もあわせてイーストウッドでした。俳優業は終わりということでおつかれさまでした。

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そして、ふつうを推奨していく空中キャンプ賞ですが、今回は複数の方が該当しました。やーじりんさん、hilifeさん、龍の字さん。なんと龍の字さんは2年連覇です。この参加人数と確率をかねあわせて考えると、ちょっとしたミラクルかも知れません。こんなにふつうの人がこの世にいるでしょうか。きっと龍の字さんはトヨタカローラに乗り、ヒートテックを着て、スーパードライを飲みながら、これら3本の映画を選んだにちがいありません。そして今回ですが、賞品を用意するといいました。この3人に差し上げる賞品は、もちろんこれです!

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

見本できしだい、発売前に献本させていただきます! わたしが夜なべして書きましたので読んでください。よろしくおねがいします。『生きる技術は名作に学べ』(ソフトバンク新書から1/19発売)、ぜんぶいちから書き下ろしました。映画にかんしてもたくさん引用していろいろと書いてみました。イーストウッドにも献本する勢いです。本屋さんで見かけたら、ちょろっとでもいので立ち読みしてみてください。

来年の映画は、急速に進んだインフラの整備がどのように作品に影響してくるか、その方向性にも注目していきたいです。そしてここからは、それぞれの参加者の意見をひとつひとつまとめた詳細になります。たくさんの方がいろいろな作品を挙げてくださっています。こちらを見ながら、さらに気になる作品をチェックしていくのもいいのではないでしょうか。では来年も、できるだけ映画館に足を運んで映画をたのしみましょう。おわり。

かしこ
伊藤聡拝