空中キャンプ

2010-01-20

『生きる技術は名作に学べ』発売だよー!

こんにちは、伊藤聡です。わたしの初めての本『生きる技術は名作に学べ』が、ソフトバンク新書より昨日発売になりました。書店によっては数日早く店頭に並び、すでに購入された方もいらっしゃるようですが、1月19日が発売日です。ここ数日のわたしは、書店に並んでいる自分の本が気になり、仕事帰りの書店パトロールが欠かせません。がんばれ僕の本。

これはどういう本かといいますと、過去の海外名作小説を十作セレクトし、それらについてコント風に語りながら、役立つエキスを抽出しようというテーマで作られた一冊です。名前だけは知っているけれども、じっさいに読んだことはない、有名小説の正体を見きわめていこう、というわけです。では、これらの十作のセレクションと、それぞれの本をどのような視点から描いていったかを、かんたんに説明していきたいとおもいます。

ママンってなんだ──カミュ『異邦人』
まず一章は、有名かつわりあいに読者も多い、『異邦人』にしました。この小説の主人公は、自分の母親をママンと呼ぶことで有名ですが、だいたいママンってなんだ。この「ママン問題」に、かなりのページを費やしました。いい歳をした男が、母親をママンなどと呼ぶのはすごくへんだとおもう。そのわけのわからなさについておもいのたけを述べました。

もっと上手に甘えなさい──ヘッセ『車輪の下で』
人に甘えるのがへたな人、うまい人。会社でも、友だち関係でも、人にうまく甘えられるかどうかはとても重要。極端に甘えるのがへたな主人公ハンス君の人生をふりかえりながら、自分ひとりでがんばりすぎない人生について考えてみました。宮本さんの直球すぎるイラストも必見です。

さよなら、父さん──トゥルゲーネフ『初恋』
誰にとっても、父親の存在はややこしいもの。すごく怖かったり、妙にものわかりがよかったり、とらえどころのなかったりする父親について書きました。父親を乗りこえるむずかしさだけではなく、一九世紀ロシア貴族のよくわからない生態についても研究してみました。

かわいそうだけじゃかわいそう──『アンネの日記』
名作と呼ばれるこの少女の日記を読んでびっくり。アンネは性に関心ありすぎ! 朝から晩までいやらしいことばかり考えている妄想少女アンネの日々があけすけに綴られるこのテキストから、素顔の彼女がのぞけるかも? そんなあけっぴろげなアンネを知ることが、他者を知ることであり、歴史を知ることにつながっていくのではないかしら、とわたしはおもっています。ふふふ。扉のイラストがかわいらしくてすてきです。

男らしさはつらいよ──ヘミングウェイ『老人と海』
マッチョな小説家といわれるヘミングウェイ。しかし、彼の書いた生前最後の小説には、「男らしさ」にまつわる最後の決着があった…。なんで84日間も釣れないまま漁をしていたのか。アメリカ文学における「男性性」をめぐって、いろいろなテーマをもり込んでみました。男らしさってどういうことなのだ。アメリカ文学はわたしがいちばんすきなジャンルなので、がんばって書いたのだ。

でた、悪人──モーム『月と六ペンス』
人は、あきらかに不幸になるとあらかじめわかっている選択を、ついしてしまうものである。幸福になれる道があるにもかかわらず、あえて不幸を選んでしまうその理不尽を、この小説の主人公ストリックランドという芸術家を通して考えてみました。ストリックランドって悪人なんだよ。そして、悪と美のふしぎな関係についても迫ってみましたので、ぜひ読んでみてください。

ミシシッピー川でつかまえて──マーク・トウェイン『ハックルベリイ・フィンの冒険』
トム・ソーヤーの冒険』の続編として書かれた、『ハック・フィン』。トムとハックという、ふたりのあまりにも真逆な性格の持ち主について書いてみました。男の子が青年に、大人になるための通過地点で誰もが感じるさみしさや、寄る辺なさ。そして、いつでも要領よくすいすいと人生を渡っていける人と、なぜか不器用に転んでばかりいる人。トムとハックというふたりの人物について考えることで、いろいろなことが見えてきたようにおもいます。ここは自分でもけっこう気に入っている章です。

欲しいものが、欲しいわ──スタンダール『赤と黒』
青春時代ってこっ恥ずかしいけど元気だけはあり余ってる。おもいだすだけで顔がぽっと赤くなるような、情けないできごとの数々。そんな、若さゆえの熱量の多さと、そこでありがちなたくさんの失敗を、コントっぽく書いてみました。フランス人だってけっこうださいことしてるのだ。だから安心してほしいとわたしはいいたい。

世界が終わる日──ジョージ・オーウェル『一九八四年』
この章は記憶をテーマにして書きました。なにを覚えているか、なにを忘れているか。脳内の記憶は無意識のうちに書きかえられ、ストーリーは自分に都合のいいように修正されていく。そんな記憶のわけのわからなさについて書きました。そして、村上春樹1Q84』との比較論もおもいきって展開! 「ディストピア小説としての『一九八四年』と『1Q84』」というテーマで比較をしながら、その興味ぶかい共通点をさぐってみました。春樹ファンも読んでくださいねー。

二一世紀の読者たちへ──トーマス・マン魔の山
長い! 読むのたいへん! そんな難攻不落のテキスト『魔の山』を、この2010年に読む人ってどういうあれなのか。読書論、テキスト論、情報論としても読める章をめざしました。情報、時間、生活サイクル、すべてのスピードが上がっていくいまの時代の読書とはどういう行為なのか、がんばって考えてみたのです。

くわえて、4つのコラムもはさんでみました。こちらはリラックスしてのびのび書くことができたとおもいます。コラムと各章のバランスで、読みやすさがでたのではないでしょうか。コラムでは、小説だけではなく、映画のことなんかも入れて書くことができました。文章は、できるだけ読みやすく、気持ちよいリズムでたのしんでいただきつつ、いったん読み終えても、もう一度読みたい、繰りかえし読みたい、という気持ちになってもらえるようなものにしたいとおもいながら書きました。本屋さんにいけば(たぶん)売っているとおもいますので、新書売り場へと足を運び、ぜひ手に取ってみてください。宮本彩子さんのかわいらしいイラストもたのしいですよ。読み終えたら、ぜひわたしに感想をおしえてください。たのしみにしています。

かしこ
伊藤聡拝

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)