空中キャンプ

2011-10-31

[]『ミッション:8ミニッツ』を見たゼ!

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新宿にて。初日。ダンカン・ジョーンズ*1新作。とてもよかったです! おもしろかった。前作『月に囚われた男』('09)同様にSFテイストの強い作品で、全く前情報を入れずに見に行ったせいもあってか、その世界観に圧倒されてしまいました。アイデアもいいし、見せ方もうまい。映画を見ながらつい、自分がこの状況に置かれたらどうするだろうと考えてしまう世界観や映画内ルール、観客を惹きつけるシークエンスの構築がすばらしい。できるだけ前情報を遮断して見てほしいタイプの映画なので、見る予定のある方は感想を読む前に、作品を見てほしいです。

【未見の方は以下注意。内容に触れています】

【未見の方へ注意をうながしつつ、自著の宣伝】

観客に「もしこの世界に自分が置かれたら、どう切り抜けるだろう」と考えさせる世界観を提示している映画はすぐれた映画である。本作が提示する、作品独自のルールにもとづく特殊な世界において、主人公が課せられたタスクを完了させるために取る行動は、観客に「もし自分ならどうやってこの問題を解決するか」を想像させる。劇中、トライ&エラーを繰りかえす主人公に対して、観客は「もっとこうすればいいのに」「なるほどそれは妙案だ」「時間がもったいない」「まずはあっちを探索すべき」などといったかたちで主人公の抱えるタスクを共有し、あたかも自分がそのミッションに参加しているような錯覚におちいる。こうした Participate(参加)の感覚が、この作品におけるいちばんの魅力だといえる。

前作『月に囚われた男』がそうであるように、本作もまた、SF的なモチーフを積み重ねながら最終的にはフィジカルな自己認識、身体性に立ち返っていく。こうしたテーマが大きくフォーカスされていく後半もまたスリリングである。「自分自身とは意識なのか、肉体なのか」「われわれはどのようなしかたで自己を認識しているのか」というテーマは、ダンカン・ジョーンズにとっての軸となる題材であり、SF的なガジェットやストーリー構成とあいまって見る者を揺さぶる。このモチーフもすばらしかった。前半のスリルにくわえて、彼らしい身体性と意識という題材が重なっていく後半はより物語が加速していき、エンディングへと進むのだが、こうした作品構成のバランスのよさには、圧倒されると同時に感心してしまいました。

作品のクライマックスにおいて観客は、「われわれの人生において真に美しい瞬間とは、あたかも絵画のように止揚した一瞬として記憶にとどまるのではないか」と感じることができる。時間とはただ平坦に流れていくのではなく、そこへ垂直に切り立つ永遠のような瞬間があるのではないか。そのような気持ちを抱くことができるエンディングには胸が熱くなり、とてもポジティブなメッセージを受け取ったような気持ちになった。ていねいに映画を作っていることが感じられるのもよかったですね。

【関連作品】ダンカン・ジョーンズのデビュー作『月に囚われた男』もまた、自己とは意識なのか、身体なのか、そもそもわれわれの自己を真に規定する基準とは何なのか、といった、なかなか答えのでない問いをSFのモチーフを使用しながら描いたユニークな作品です。おもしろいです。

*1:彼はデヴィッド・ボウイの息子であり、わたしと同学年である。ダンカン、お前どこ中?