2012-04-06
■[映画]『ドライブ』を見たゼ!
渋谷にて。天才的な運転技術を持つ男をライアン・ゴズリングが演じる、という以外にはほとんど前情報なく見に行きました。見終えてみて、おもしろかったのですが、同時にとてもふしぎなバランスの物語だと感じました。個人的には語りがややいびつに見えたのですが(決してスムーズにすべてを説明し切っている映画ではないと思います)、それが作品の魅力につながっているとも言える。そこがよかったです。
語りがいびつだと感じたのは、主人公の内面が見えにくい点です。というのも、この主人公は意志が強いのか弱いのかよくわからないところがあるんですね。たとえば冒頭のスリリングな運転シーンなど見ていると、どんな状況でも決してあわてず、冷静に切り抜ける常人離れした力があるように見える。意志のとても強いタフガイに見えるわけです。ところが、キャリー・マリガンの夫に対する行動など見ていると、どこか軽率だったりする。あの行動は何というか、あきらかに「思慮が浅いなあ」という感じで、後でキャリー・マリガンに事態が露呈し、びんたされてあわてている姿など、愛情が絡んでいるとはいえ冒頭の運転シーンとかなり大きなギャップがある。ちょっとだらしない感じすらします。彼の思いやりがあきらかに裏目に出ているシーンです。彼は決して完璧ではなくて、自分の行動がきっかけで親しい人を死なせてしまったりもする。そのアンビバレンツさがおもしろかったし、ライアン・ゴズリングとキャリー・ミリガンの関係性が、ちょっと手を握っただけというのも実にいい。観客は、この寡黙で行動の動機づけがよくわからない語り手に魅了されるのだと感じました。
作品は途中から急展開、すさまじい暴力が突発的に襲いかかることで一気にトップギアへ上がります。こうした急展開とカーチェイスの興奮が重ねられる物語中盤以降は、一気にスリリングなテンポでストーリーが進み、観客も同時に高揚していくしかけになっている。中盤の急展開から怒濤の後半へ、という流れはすばらしかった。想像しうる最悪の状態が起こってしまい、わけもわからず走り出す(しかない)主人公、という状況がエキサイティングです。ここで主人公は、みずからの置かれた状況に対して積極的に戦いを挑んでいくことになりますが、やはりここでも主人公をつき動かすのは無私、完全なる利他であって、何か自分の利益になることがあるわけではない。だからこそ映画としては恐怖感も生まれ、刺激的でおもしろくなるのであり、観客は主人公の心境を忖度するたびに、そのいびつなバランスに魅力されるのではないでしょうか。



